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番外 05 偃月長蛇

思春「思春とー」(棒読み)
はわわ「はわっ……朱里のー」
2人『歴史つるぺたコラムー』
思春「……いま、何か凄まじいものが挟まったような気がするが」
はわわ「胸を抉られる響きがありました……ていうか、はわわはやめてください」
秋蘭「挟んだり抉られたりできる胸がおありだったか?」
 たたたたたたたたたた……
思春「戻ってこい、夏候淵! はわわと一緒にするな!」
朱里「そのトシでわたしと同レベルのお胸なんですから、むしろわたしが一緒にされたくありません……。ともあれ、今回はわたしと甘寧さんで歴史コラムをお送りします」
思春「暴言は聞き流すが、孫策さまはどうされた?」
朱里「書いてる雪男さんが『そういえば、どっちが"上"なんだろう』とバカなことを悩みだしまして。いま周瑜さんとエロエロされてます」
思春「はわわ、よだれ」
朱里「はぅあっ!? し、失礼しました……。とりあえず孫×周、周×孫に処女かどうかを組みあわせて、8通りの艶事を書き終わるまで手が離せないとか」
思春「はわわ、鼻血。……まぁ、蓮華さまが呼ばれなかっただけよしとするが。で、今回は何をするのだ?」
朱里「ですから、はわわ呼ばわりはやめてください……。えーっと、昨日付けで五虎将の皆さんについて『私釈』しましたけど、紙幅の都合で省かれたオハナシです」
思春「雪男の暴論に従って考えるなら、我が孫呉だと四竜将か。えらくカッコよく聞こえるな」
朱里「さりげなく仕返ししますけど、呉で武力90以上の方を四人あげてみてください」
思春「……話の腰を折って悪かった。続けてくれ」
朱里「はいっ♪ 省かれたというか『神刀蒲元』に回すつもりだったけど、そっちはそっちであふれそうなので今のうちにやってしまおう、だそうです。お題は、関羽さんと張飛ちゃんの獲物の、青龍偃月刀と蛇矛についてです」
思春「あの雪男、武器にも滅法詳しいからな……知識としてだけじゃなく、使い方まで」
朱里「あ、といっても実際の使い方、つまりヒトの殺し方ではなくて、面白エピソードです」
思春「なんだ、つまらん」
朱里「はぅ……。まず青龍偃月刀ですが、ご存知の通り長柄の大薙刀といった風貌です。重さは八二斤とありますから……えーっと、18キロくらいですね」
思春「一斤は222.73グラムだ」
朱里「偃月というのは半月のことでして、刃が半月状になっていることからそう呼ばれています。また、漢土で刀というと青龍刀や朴刀を指し、長刀というと薙刀のような長柄の獲物を指します。横山三国志の序盤で関羽さんが青龍刀を振り回していたのは、その辺りを勘違いしていたかららしいですね」
思春「いつか『私釈』で触れた通り、横山は武器に詳しくないからな」
朱里「です。さて、関羽さんの青龍偃月刀ですが、鍛えたのは湯親方とされています」
思春「蒲元ではなかったのか? 流れでそうなのかと思っていたが」
朱里「仲康さんはわたしより年下ですよ? 当時、技術者は社会的に低い身分にありました(件の『反三国志』にも、わたしが鉱山労働者を気遣うシーンがあります)から、湯親方の名は伝わってません。そんな親方は、関羽さんのために上質の鋼八二斤を用意して大長刀をこさえました」
思春「柄までその鋼で鍛えたならまだしも、刃だけで18キロなどという獲物を振り回せるものか?」
朱里「わたしじゃぜったい無理です……。でも、関羽さんはきちんとできあがった大長刀を振り回してみせました。ところが、振り下ろした途端に刃がぐにゃっ」
思春「自重に負けたか」
朱里「湯親方は恥じ入って、鉄鉱から選び直して丹念に錬成し、改めて大長刀を鍛え直しました。ところが、関羽さんが振り下ろすとまたしても刃がぐにゃっと潰れてしまいます」
思春「……真面目にやってるか? その親方」
朱里「そーなんですよね。関羽さんも呆れてしまい、親方がまじめにやっているのか鍛冶場まで監視に来ちゃいました。これには親方震えあがって、斎戒沐浴して虚心坦懐に鉄を鍛えること三日三晩。ついに炉から刃を抜き出そうとしたとき、にわかに空が曇ったと思うと一頭の青龍が舞い降りてきて、炉の中に飛び込んだのです」
思春「ほほぅ……」
朱里「慌ててふたりで刃を引き出してみると、青龍が大長刀に絡みついていました。手になじむ長刀をひと振りふた振りするだけで、空から雲が吹き飛んでしまいます。それでは大岩に振り下ろしてみたら真っ双つ!」
思春「どこまでの斬れ味だ?」
朱里「ホクホクしながら関羽さんがお帰りになると、ややあって張飛ちゃんが駆け込んできました。ガラにもなく関羽さんが偃月刀を見せびらかしたモンですから、張飛ちゃんも獲物をほしがった次第でして」

鈴々「愛紗ばっかりずるいのだ! 鈴々にも、カッコいい獲物を作ってほしいのだ!」

思春「……なんか、眼に浮かぶようだが」
朱里「わたしにも、はっきり見えました……。えーっと、しかし、また竜が降りてくるとは思えない湯親方は『じゃぁ見本を持ってきな』と云って、その場は張飛ちゃんを帰します。どんな武器が自分にあうだろうとお酒を呑みながら考えていた張飛ちゃんですが、屋根裏から蛇がにょろっと出てきたのを見て『これなのだー!』をひらめきました」
思春「蛇のようにうねうねと曲がった刃を持つ矛、だな」
朱里「そんなものを作ってくれと頼まれても湯親方は『できるわけねーだろ!』と突っぱねます。怒った張飛ちゃんは、用意してあった鉄棒を先の大岩の割れめに差し込んで、右へ左へ揺すって暴れだしました。家も木も地面も揺れて、親方は立っていられません」
思春「どこまで頑丈な鉄棒だ」
朱里「ところが、ふと我に返ってみると、鉄棒の先端は平たくなっただけでなく、蛇のように曲がりくねってしまいました。それを見た親方が『すげーよ、アンタ! そんな獲物見たことねェぜ!』と大絶賛するものですから、張飛ちゃんはすっかりいい気分で、出来上がった蛇矛をもってホクホク帰りましたとさ」
思春「めでたしめでたし、か」
朱里「書いてる雪男さんに云わせると、蛇矛は武器としては最高ランクとのことですね。大秦(ヨーロッパ)のフランベルジュや月氏(インド)のクリスといった刃の波打った剣がありますが、これらで斬られると皮から肉からズタズタになってしまい、強烈な痛みを与えることができるとか。また、長柄の獲物は身長の約三倍を理想とするので、一丈八尺(4.14メートル)という長さはまさしく理想だそうです」
思春「考えて設計されているわけか」
朱里「趙雲さんの、鉄を泥のように斬り捨てる『青ス』の剣に関しては、それこそ『神刀蒲元』でやるということですので、そちらをお待ちくださいね。……では、オチに行きます」
思春「蛇矛はともかく青龍偃月刀は唐代の獲物だ、というオチか?」
朱里「わたしを誰とお思いですか、甘寧さん? その程度のありふれたオチで、はわわ軍師を名乗っているとでも?」
思春「自分でも認めていたのか」
朱里「はうっ! ……えーっと、それはさておき、梁山泊の武器製造責任者たる、地孤星の湯隆さんは、先祖代々鍛冶屋だったそうです」
思春「……羅貫中は、どこまで水滸伝に関わっているのだ?」
朱里「どうでしょう……? あ、でも、今回のエピソードは演義ではなく民間伝承ですよ」
思春「それを羅貫中が水滸伝に活かしたのか? まったく、あの御仁の文章能力には恐れ入る」
朱里「そーですね。では、歴史つるぺたコラム、今回はこれくらいで……はわわー!?」
思春「夏候淵! 貴様という奴は!」
秋蘭「ふふふ……」

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