ナガサキアゲハ

Papilio memnon thunbergii



概要

食餌 主食:ウンシュウミカンナツミカンキンカンレモンユズなどミカン科ミカン亜科に限られる。
代替:ミカン亜科(ほとんどが栽培種)すべてが利用可能。どれも嗜好性に差はない。サンショウ類やキハダ、コクサギなどは与えても食べないか、食べてもせいぜい中齢までしか成長しない。
増殖:ミカン類実生挿し木取り木(高取)、根伏せが可能。実生は完熟した果実の種子を用いる。果肉を取り除き、乾燥に注意して冷暗所に保管し、翌春に蒔く。発芽率はあまりよくないが、多くの種子をまとめて植えたり、粗砂を入れたビンなどに入れてよく振るい、表皮に傷をつけてやると発芽率が向上する。挿し木、取り木、根伏せは一般的な常緑樹の方法に準じる。基本的に水揚げの良い植物なので比較的容易に根付く。増殖ではないが、ホームセンターや植木店などで苗木を購入する方法もある。発芽後3年程度経過したものが使用しやすい。ただ、終齢幼虫はきわめて大量の葉を食べるので、苗木1本に1頭〜2頭程度が限界。
採集 ステージ:夏型は幼虫。春型は幼虫(休眠)。卵は、庭先や果樹畑などのミカン類の葉裏に産付されるので見つけるのは簡単。食樹の大きさに嗜好性はないようだが、日当たりの良い葉を選ぶ傾向がある。幼虫は、全期間を通じて食樹の葉表で静止する性質があるので、採集は難しくない。休眠蛹は食樹を離れる傾向が強く、ほとんどが褐色型なので探すのは結構難しい。
適期:卵、幼虫共に5月〜11月頃まで断続的。9月以降に見つかる幼虫は蛹で休眠することが多い。休眠蛹は10月〜翌4月上旬頃。
難度 幼虫:比較的容易。食樹さえ切らさなければ、ほとんど手がかからないくらいカンタン。
成虫:困難。飛翔力と移動性が強く、樹液などには集まらない種なので、屋内での飼育は難しい。
採卵:♀は羽化直後には交尾が可能なので、比較的容易といわれる。その際には羽化から2日〜3日後の元気な♂を使用すると成績が良いそうだ。葉よりもミカンの皮のほうが簡単に多く産卵するらしい。 ただ、累代飼育を重ねていると、病死する個体の比率が高くなるという。
飼育法  夏季に密閉容器などで飼育した場合、過湿と高温によりウィルス病で融けて死ぬことがあるので、ネットがけの上、開放飼育にしたほうが良い。特に終齢幼虫は蛹化などの際にかなり長距離を歩行するので、 屋内外を問わずネットがけを施したほうがよい。ミカン類は水揚げが比較的良いので、花瓶等に挿して開放飼育でも十分に可能。その際には、葉の残留農薬に注意し、こまめ(長くとも2日〜3日に1回)に枝を交換すること。中齢以降になると若葉より成葉を好む傾向が強い。越冬蛹は休眠が浅いので、暖かい屋内に置いておくと、厳冬期でも羽化してしまうことがある。
備考  卵は産付直後のものを除き、タマゴヤドリバエの寄生リスクがある。また黒色に変色したものはウィルスに侵されていることが多い。5月〜7月に採集した幼虫には、蛹から脱出するアゲハヒメバチ類が寄生していることがあるが、幼虫の外見では判別できない。蛹化後、体の一部が黄色くなったりして変色したものは、ほぼ間違いなく寄生されている。

記録

採集 記録 蛹型 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2004年 第1化(春型)
1 3 2003/9/17  館山市南条 ? ? 9/24 10/10 10/12 2/13 褐色 ウンシュウミカン ユズ 温室状態 
2 3 2003/9/17 館山市南条 ? ? 9/24 10/10 10/12 3/17 褐色 ウンシュウミカン ユズ 温室状態
3 3 2003/9/17 館山市南条 ? ? 6/26 10/19 10/21 3/27 緑色 ウンシュウミカン ユズ 温室状態
15 3 2003/9/17 館山市南条 ? ? 9/27 10/22 10/23 3/30 褐色 ウンシュウミカン ユズ  
※*採集総数10個体、死亡個体6(うち4齢(2)・終齢(4))。死因はすべて感染症。羽化個体4。

ページトップ メイン