キアゲハ

Papilio machaon hippocrates


夏型♀(表) 夏型♀(裏)
千葉市緑区産 千葉市緑区産

概要

食餌 主食:セリ科各種。県内ではセリミツバニンジンなど。
代替:ヤマウド、セロリなどセリ科の大部分の植物が利用可能だが、シシウドとドクゼリは試していない。 また、コスモスやミカン科栽培種でも卵や幼虫が発見されることがあるが、これまで飼育したものの中ではこれらを食べる個体は見出されていない。
増殖:セリミツバ:いずれも実生根伏せ株分け挿し木が可能で、セリについては取り木(圧条法)も可能。根伏せ、株分け、挿し木のいずれも一年中いつでも可能で、きわめて容易。特にセリは水漬けの状態で、時々水を交換してやると非常に成績が良い。実生は盛夏に熟した果実を採取してそのまま播種すると発芽率はきわめて高い。土質は特に選ばないようだ。セリの圧条法は、夏季に花が終わったあと匍匐する茎を利用すると簡単に発根する。他に、休耕田 や山野に自生している株を 、そのまま山取りしても容易に増殖する。初夏にかけてはミツバはやや葉数が少ないので、セリのほうが飼育には楽だが、盛夏以降は セリは葉数を減らして匍匐枝を伸ばすようになるので、逆にミツバのほうが葉数が多い。他にはスーパーなどで「人間」の食用として販売されているものも利用できるが、残留農薬の危険性があるのであまりお勧めできない 。実際に試したら多数の個体が蛹化できずに死んでしまったことがある。同様の理由で、市販のニンジンに付いている葉も使用しないほうが無難。
採集 ステージ:夏型は幼虫。春型は幼虫(休眠)。卵、幼虫共に谷津田の休耕田や林縁の湿地などに集中する傾向がある。卵は食草の新芽や葉裏に1個ずつ産付されるので、発見は比較的容易。幼虫も全期間を通じて食草の葉表や茎などに静止する習性を持つので採集は簡単である。休眠蛹は食樹を離れる傾向が強く、ほとんどが褐色型なので探すのは結構難しい。
適期:発生にはっきりした周期を示さない種なので、卵は4月下旬〜9月下旬、幼虫は5月〜10月下旬ごろまで断続的に採集できる。なお、9月以降に採集した卵と幼虫は、越冬蛹になる可能性が高い。
難度 幼虫:容易。食草さえ切らさなければ、ほとんど手がかからないくらいカンタンだが、高温と過湿にはやや弱い。
成虫:可能。飛翔力と移動性が強く、樹液などには集まらない種だが、吸蜜植物(赤色系の大形の花)と産卵植物を用意し、過湿と高温に気をつければ不可能ではない。 吸蜜植物はアザミ類、ツツジ類、タチアオイ、ムクゲ、フヨウなどが水揚げも良く、利用しやすい。
採卵:交配も採卵も容易。♀は羽化直後には交尾が可能であり、吹流し法で対応できる。その際には羽化から2日〜3日後の元気な♂を使用すると成績が良いらしい。 ♀は交尾後2日目ごろから開始する。交尾済みの♀を食草と一緒にやや大きめの容器に入れておくと、狂ったように産卵する。1頭の♀は200個程度の卵を産むようだ。
飼育法  夏季に密閉容器などで飼育すると、卵の孵化率が極端に落ち、幼虫も感染症などで融けて死ぬ個体が多い。セリ科植物は一般に水揚げが非常によいので、花瓶に挿したり鉢植えにしたりして開放飼育を行ったほうが無難。特に終齢幼虫は蛹化などの際に食草を離れる傾向が非常に強く、長距離を歩行するので、ネットがけが必須になる。 夏型となる個体はかなり大型のイモムシであり、摂食量もハンパでないので、食草は十分に用意しておきたい。セリ科各種であれば併用も可能である。
備考  卵は産付直後のものを除き、タマゴヤドリバエの寄生リスクがある。また黒色に変色したものはウィルス等に侵されていることが多い。5月〜7月に採集した幼虫には、蛹から脱出するアゲハヒメバチ類が寄生していることがあるが、幼虫の外見では判別できない。蛹化後、体の一部が黄色くなったりして変色したものは、ほぼ間違いなく寄生されている。

記録

採集 記録 蛹型 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2005年 第1化(春型)
1 1 2004/8/18 千葉市緑区 ? ? 8/29 9/2 9/3 × 褐色 パセリ ミツバ、セリ  
2 1 2004/8/18 千葉市緑区 ? ? 8/29 9/2 9/3 × 褐色 パセリ ミツバ、セリ  
3 1 2004/8/18 千葉市緑区 ? ? 8/29 9/3 9/4 × 褐色 パセリ ミツバ、セリ  
4 1 2004/8/21 千葉市緑区 ? ? 9/2 9/5 9/6 × 褐色 パセリ ミツバ、セリ  
※採集総数8個体、死亡個体8(L[3]:1、LP:2、P:5)、死因は幼虫と前蛹が感染症。蛹は不明。
2004年 第4化(夏型):人工交配
1 E 2004/7/28 千葉市緑区 7/28 8/1 8/13 8/17 8/18 8/27 黄緑 ミツバ ミツバ、セリ  
2 E 2004/7/28 千葉市緑区 7/28 8/1 8/14 8/20 8/21 8/28 黄緑 ミツバ ミツバ、セリ  
3 E 2004/7/28 千葉市緑区 7/28 8/1 8/14 8/21 8/22 9/1 黄緑 ミツバ ミツバ、セリ  
※採集総数187個体、死亡個体184(E:77)、L[1]:11、L[2]:10、L[3]:14、L[4]:36、L[5]:21、LP:9、P:6)、死因は、幼虫はすべて感染症、前蛹・蛹は脱皮失敗。羽化個体3。
2003年 第3化(夏型)
1 5 2003/7/20 千葉市緑区 ? ? ? 7/24 7/25 8/4 黄緑 ミツバ ミツバ  
2 4 2003/7/20 千葉市緑区 ? ? 7/21 4/29 7/30 8/8 黄緑 ミツバ ミツバ  
3 4 2003/7/20 千葉市緑区 ? ? 7/23 7/29 7/30 8/9 黄緑 ミツバ ミツバ  
4 4 2003/7/20 千葉市緑区 ? ? 7/26 8/2 8/3 8/11 黄緑 ミツバ ミツバ  
※採集総数6個体、死亡個体2(L[5]:1、LP:1)、死因は幼虫が感染症、前蛹は脱皮失敗。羽化個体4。

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