分布 |
国内: |
本土全域。島嶼は屋久島以北のほぼ全域。垂直分布は海岸付近から標高2,300m付近までに及び、モンシロチョウ、モンキチョウなどと共に日本産のチョウ類で最も幅広い。 |
県内: |
都市部を含め、全域に棲息する。 |
国外: |
全北区の北部~中部冷温帯域に汎く分布する。原名亜種は欧州~西アジア産をさす。 |
変異 |
形態: |
国内での地理的変異は知られていない。県内では稀に黄色部が周辺まで発達し、外縁の黒色帯と藍色斑が消失する遺伝的な黄化異常型(ab.eviata)が出現することがある。 |
季節: |
比較的明瞭。斑紋が若干相違し、著しく大きさが異なる。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られるが、晩秋には春型のような個体が出現することがある。 |
性差: |
夏型は異型。♀は♂より大型で、翅表基部の黒色部が発達する。春型は同型。外見で判断できず、腹端の精査が必要。 |
生態 |
環境: |
日当りのよい開けた環境を好む。典型的な草原性の種。人家周辺にも出没するが、もっとも多く見られるのは山地の草原や開けた湿地である。 |
発生: |
多化性。通常年3回~4回で4月下旬~10月頃。暖地では 3月~11月にかけて4回~5回、寒冷地では1回~2回。高標高地では年1回、7~8月に春型のみが出現する。 |
越冬: |
蛹。食草の茎にもつくが、食草を離れる傾向が強く、その付近の樹木の幹などに付着している。 |
行動: |
昼行性。飛翔は敏速だが、比較的低い位置を飛ぶことが多い。♂は山頂などを占有する傾向が強い。飛翔力は強く、食草のまったく存在しない地域にも姿を現すことがある。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/葉・茎・若果・花蕾。セリ科のセリ、ミツバ、シシウド、ボウフウ、ノダケ。他にニンジン、セロリ、パセリなどの栽培種。稀にミカン科の栽培ミカン類やキハダ、コスモスなどで卵や幼虫が見つかることがある。 |
成虫: |
食植性/花蜜。訪花性が強く、主に晴天時にアブラナ、ダイコン、アザミ類、ツツジ類、ユリ類、ヤブガラシ、ムクゲ、ネムノキ、クサギなどさまざまな花で吸蜜するが、特に赤色系の花を好む。夏型の♂は湿地で吸水することもあるが黒色系のアゲハとは異なって、盛夏の個体に限られ、頻度も少ない。 |
類似種: |
ナミアゲハと似るが、翅の地色と翅表基部付近の斑紋が相違する。 |
保 護: |
指定されていない。 |
その他: |
飼育は比較的容易。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類やスズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類。成虫は大型ヤンマ類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類。造網性クモ類など。 |
寄生: |
幼虫に寄生するヒメバチ科ヒメバチ亜科のムラサキアゲハヒメバチ(Trogus lapidator lapidator (Fabricius, 1787))、ヒメキアシフシオナガヒメバチ、アゲハヒメバチ(Holcojoppa mactator (Tosquinet, 1889))、クロハラヒメバチ(Psilomastax pyramidalis Tischbein, 1868)、ヒラタヒメバチ亜科のヒメキアシヒラタヒメバチ(Pimpla disparis Viereck, 1911)、前蛹期に産卵するアオムシコバチなどのコバチ類が知られ、いずれも蛹から脱出する。他にはヤドリコバチ類、ヤドリバエ科のBuquetia intermedia (Baranov)、Senometopia prima (Baranov)が知られる。 |