マテバシイ

馬刀葉椎、全刀葉椎

(ブナ科 マテバシイ属)


 雌雄同株常緑小高木高木。高さ15mになる。和名は葉が馬刀に似るため。サツマジイ(薩摩椎)、マタジイなどとも呼ばれる。果実は日本産のドングリでは最大で、かつ生食可能なため、飢饉の際の救荒食物として各地に植栽された。葉の数が非常に多いため林床が非常に暗く、純林ともなるとほとんど下層の植物が生育しない。


分布:古くから緑化樹として人気があり盛んに植栽されたため、本来の分布ははっきりしないが日本特産種。現在は本州、四国、九州、南西諸島に成育し、北限は宮城~石川。沿海地域の山野に多い。県内では房総丘陵南部の山腹に植栽された個体群が半自然的に自生して純林を形成するほか、全域で社寺林や公園、工業地帯、生垣などに利用されている。鴨川市の縄文時代遺跡から出土したことから自生種とする意見もあるが、基本的には植栽起源で、県内では江戸末期に君津市内で最初に植栽されたとされている。

樹幹:灰白色。樹皮にはやや細かい縦皺がよるが滑らかで、大きく裂けることはない。幹は直立する。
枝葉単葉。葉柄は明瞭で葉は互生する。長さ16㎝程度の倒卵状楕円形、基部は楔形で先端は丸みを帯びる。顕著な羽状脈をもち、側脈は葉縁に達せず葉縁付近で弓状となり8対程度。葉縁はやや内側に巻き全縁。厚い革質で表面には顕著な光沢を有し、裏面は淡緑色。
単性虫媒花。花期は5月下旬~6月上旬で萌芽より遅い。雄花序は長さ5㎝~8㎝、雌花序は6㎝~9㎝の尾状花序で、本年枝の下部から共に上向きに出る。
果実堅果。長さ3㎝程度の砲弾形で、クリを除く本土産のドングリとしては最大。殻斗は椀形で総苞片が瓦状となり殻斗に密着する。春に受粉し翌年の秋に成熟する2年成。生食できるが、わずかにアクがある。動物散布型
増殖法実生挿し木取り木(高取)が可能。実生の場合、種子の保存性がほとんどないので、秋に採取した種子はすぐに植えつける。
保護:指定されていない。
その他:防火や防風のため屋敷林として植栽されるほか、公園や道路の緑化樹、建築材などとして利用される。房総半島南部内房沿いの純林は、かつて海苔養殖の用材として利用するために江戸時代から植林されたものである。

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