オオシオカラトンボ

大塩辛蜻蛉 (トンボ科)


2003/6/5 木更津市伊豆島 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4 /Kodak Kodachrome PKR64

 比較的大型でがっしりした体つきのトンボ。平地~丘陵にかけての樹林に囲まれた湿地や水田、池、水路や小河川など様々な環境で生育し、市街地を除く県内全域に棲息するが、シオカラトンボよりは若干局地的な傾向を示す。流水・止水を問わず棲息するが、一般に陽性のシオカラトンボよりは薄暗く小さな水域を好むようである。
 写真は、木更津市伊豆島で6月上旬の正午過ぎ、樹林に囲まれた休耕田の縁の枯れ草にとまって縄張りを確保する成熟♂。未成熟の♂は♀とほぼ同型だが、♂成熟すると写真のように翅胸部から腹端にかけて全身のほか、翅の基部にも 青白粉を吹く。一方♀は黄色と黒の縞模様で 成熟してもあまり変化はない。♂♀共にシオカラトンボにそっくりだが、♂♀共にこれより一回り大きく、♂は青みと黒みがはるかに強いので、よくみればそれほど区別は難しくない。また、♀はシオカラトンボよりはるかにごつい感じがする。
 これも普通種ではあるが、個体数は比較的少なく、街中で見かけることはほとんどない。未成熟の個体は水域を離れて近くの樹林など比較的暗い場所で栄養飛翔を行う。成熟すると水域に戻り、♂はなわばりを確保し、他の♂と縄張りをめぐって激しく争う。♀が通りかかると素早くつかまえて、付近の林縁などで交尾する。♀は単独で連続打水産卵し、♂はそのすぐ上でホバリングして♀を警護する。



オオシオカラトンボ 極東亜種 (トンボ科 トンボ亜科)
Orthetrum trianglare melania (Selys, 1883)
分布 国内: 本土全域。島嶼では佐渡、伊豆諸島、隠岐、対馬、五島列島、南西諸島全域。
県内: 市街地を除き全域に棲息する。わずかに局地的な傾向を示すが、産地での個体数は多い。
国外: 中国大陸中南部~ヒマラヤ、ジャワに分布し、いくつかの亜種に分けられている。本亜種は日本~中国大陸中南部産を指す。原名亜種は台湾、インドシナ以南~ヒマラヤ産。
変異 形態: 奄美大島以南では♀の斑紋が異なるが、亜種区分は認められていない。
季節: 知られていない。
性差: 未成熟個体は同型。成熟個体は異型。♂は成熟すると全身が黒化し、 翅胸部と腹部が青白粉で覆われる。
生態 環境: 止水性。平地~丘陵地。水辺に抽水植物の多い池沼。底質は砂泥、水質はやや濁ったあるいは濁った陸水。樹林に囲まれたやや薄暗い環境を好む。
発生: 年1回。5月中旬~9月中旬に見られる。発生期に幅があるため、様々な成熟段階のものが混生する。
越冬: 幼虫(齢数不定)。
行動: 昼行性。静止時は翅を開いて平らにとまる。飛翔は敏速。羽化直後の未熟な個体は♂♀共に水辺を離れ、付近の雑木林の林縁などやや薄暗い場所で栄養飛翔を行う。成熟した♂は水辺に戻り、その周辺の杭や植物茎上に枝先つかみでとまり、縄張りを確保し、♀がその周辺に現れるのを待つ。♀は基本的に水域周辺の樹林内などでじっとしているが、午後になると水域上を飛ぶようになる。♂は♀を見つけると激しくアタックし、直ちに交尾する。交尾時間はやや長く、館山市(県立館山野鳥の森)での7月上旬の観察では10分~20分程度であった。交尾が終了すると水辺に戻って連結を解き、♂は♀の周りを飛んだり♀をつついたりして産卵を促す。♀は単独で連続打水産卵するが、♂はその際上空でホバリングし、♀を警護する。
食性 幼虫: 捕食性。若齢幼虫はミジンコ類、中齢以降はユスリカ類やハナアブ類 、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類などの幼虫、両生類幼生(オタマジャクシ)、小型魚類(メダカ、クチボソなど)。
成虫: 捕食性。小型~中型の鱗翅目、ハエ、ユスリカ、アブ、小型のトンボ類などの飛翔性昆虫のほか、カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類など。
類似種: シオカラトンボに似るが、大きさと斑紋が異なる。
保 護: 指定されていない。
その他: 普通種ではあるが、シオカラトンボより個体数は少ない。
天敵 捕獲: ヤンマ類や大型のサナエトンボ類、ハエトリグモ類、造網性クモ類。
寄生: 卵はタマゴコバチ科のHydrophylita aquivolans が知られる。

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