分布 |
国内: |
北海道(南西部)、本州、四国、九州。島嶼では伊豆大島、対馬、壱岐、五島列島、種子島、屋久島、奄美大島、沖縄本島、八重山諸島で、食樹の自生する地域に限られる。東北地方北部以北と八重山諸島では稀。 |
県内: |
一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。 |
国外: |
朝鮮半島南部、台湾、中国(中部~西部)、ミャンマー~ヒマラヤ、インド(北部・南端)、中央アジア~欧州(南部)、アフリカ北部に汎く分布する。原名亜種は欧州産。 |
変異 |
形態: |
顕著な地理的変異が認められる。本亜種のほか、奄美諸島以南産が別亜種(ssp. amamiana Shirozu, 1956)とされ、台湾亜種(ssp. formosana Fruhstorfer, 1908)が迷蝶として石垣島で記録されている。 |
季節: |
- |
性差: |
ほぼ同型。♀は♂より橙色斑紋が発達する傾向があるが、個体差も大きく不明瞭 。♀の裏面の地色は♂より濃色。 |
生態 |
環境: |
食樹の自生する樹林で落葉広葉樹林を主とする。林縁や渓流沿い、路傍などさまざまな環境に現れるが、ある程度のオープンスペースがあると理想的な環境となる。都市部に棲息する場合は樹林の豊富な社寺境内や公園などに限られる。 |
発生: |
通常年1回。5月~7月に姿を現し、夏季に一時休眠すると考えられている。休眠後秋に短期間活動し、そのまま越冬するという周年経過が一般的。気候と食樹の状況によっては第1化の成虫が羽化後直ちに交尾産卵し、8月頃に第2化が発生することがある。ただ、第1化成虫が長期にわたって産卵を続けている可能性もあり、発生状況はかなり複雑である。 |
越冬: |
成虫。休眠中はほぼ完全に活動を停止する。ただ、越冬状態ははっきりしていない。 |
行動: |
昼行性。飛翔は敏速で、跳ねるように飛ぶ。とまるときは基本的には翅を閉じるが、越冬前後には地上や下草上などで翅を開いて日光浴すること も多い。羽化後の個体はしばらく群集して活動し、じきに離散し休眠する。夏季の休眠状態は不明である。ただ、県内では盛夏にも花で吸蜜する個体を見かけることがあり、蜜源植物を求めて移動している可能性もある。また、羽化直後や越冬直後の♂は、林縁の梢上や林間空隙地の中心などで占有行動を示すことがある。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/葉。エノキ、エゾエノキ、リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)などのニレ科エノキ属各種。 |
成虫: |
食植性/花蜜・腐果・汚物。訪花性は強く、ウメ、キブシ、オオイヌノフグリ、タネツケバナ、タンポポ類、ウツギ、イボタノキ、クリ、イタドリ、セイタカアワダチソウ、キク類 、ニガナ類などさまざまな花で吸蜜する。腐果や汚物にも集まる。♂は湿地で吸水することも多い。 |
類似種: |
- |
保 護: |
東京都:A(区部) |
その他: |
分布を北に広げつつある種。県内での記録は1980年代以降に限られるという。1990年代以降は県内全域で観察されるようになった。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。 |
寄生: |
幼虫に寄生し蛹から脱出するヒメバチ科ヒラタヒメバチ亜科のコキアシヒラタヒメバチ(Apechthis capulifera (Kriechbaumer, 1887))が知られる。 このほかにヤドリバエ科のノコギリハリバエ(Compsilura concinnata (Meigen))、サンセイハリバエ(Aplomyia confinis (Fallen))、Paradrino longicornis Shimaが知られる。 |