分布 |
国内: |
北海道(南西部)、本州、四国、九州。 島嶼では奥尻、佐渡、伊豆大島、隠岐、対馬、壱岐、五島列島。典型的な平地性の種で、東北山地~中部山岳には分布しない。 |
県内: |
市街地を含めほぼ全域に棲息する。 |
国外: |
朝鮮半島、沿海州(ウスリー)、台湾、中国大陸(中部)~ベトナムに分布する 。原名亜種はインドシナ~日本産。 |
変異 |
形態: |
国内での地理的変異は知られていない。 |
季節: |
明瞭。翅形と斑紋が相違する。夏型(第1化~第3(4)化)と秋型(第4(5)化)が知られる。 |
性差: |
ほぼ同型。斑紋に差はない。夏型では♀は♂より翅形がやや幅広く、翅表の地色は淡い。秋型♀は裏面の地色の赤みが強く、♂は黄褐色で波状紋が目立つ。ただ、個体差や例外も多いので、
正確な判定には前脚と腹端の精査が必要。 |
生態 |
環境: |
食草の多く自生する日当りのよい林縁的環境を好む。食草の性質から樹林のそばの草原的環境にも多い。 |
発生: |
通常年4回~5回。新成虫は5月中旬に出現する。寒冷地で年3回~4回、暖地では5回~6回 。寒冷地では8月下旬、暖地では9月中旬以降に羽化するものが秋型となるようである。 |
越冬: |
成虫(秋型)。さまざまなものの隙間で単独で越冬し、家屋内に入ることもある。 |
行動: |
昼行性。飛翔は敏速で、はばたきと滑空を繰り返して比較的低い空間を直線的に飛ぶが、あまり長く飛び続けることはなく、付近の地面や草上などにとまる。人の気配には敏感。♂は♀を見かけるとその近傍にとまって盛んに求愛するが、成功率はあまり高くないようである。秋型の♀は晩秋と初春の2回にわたって交尾することが知られている。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/葉・花穂。ほとんどの場合はクワ科のカナムグラ。県外では他にはカラハナソウ(ホップ)が知られる。主に葉を食べるが、夏季には花穂も食べる。 |
成虫: |
食植性/花蜜・樹液・腐果。夏型は訪花性はやや弱いがシオン類、ウツギ、イボタノキ、クリ、イタドリなどで吸蜜し、主にクヌギ、コナラなどのナラ類、ヤナギ類などの樹液に集まる。秋型はタンポポ類、セイタカアワダチソウ、ソバ、キク類など多くの花で吸蜜するほか、カキやイチジクなどの腐果などにも集まる。 |
類似種: |
シータテハに酷似するが、県内には分布しない。 |
保 護: |
指定されていない。 |
その他: |
タテハチョウ科での最普通種。市街地を含め県内のほぼ全域に分布し、個体数も多い。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。 |
寄生: |
幼虫に寄生し終齢幼虫から脱出するタテハサムライコマユバチ、蛹から脱出するヒメバチ類が知られるが、寄生率はルリタテハやゴマダラチョウより低い。
他にはヤドリバエ科のDrino (Palexorista) inconspicuoides (Baranov)、Blepharipa angustifrons (Mesnil)が知られる。 |