分布 |
国内: |
北海道、本州、四国、九州。島嶼では佐渡、対馬。北海道では平地~低山地、本州では低山地に普遍的で、南関東の平地に分布する唯一のFavonius属。 |
県内: |
市街地と安房地域を除くほぼ全域に棲息するが、やや局地的な傾向を示す。 |
国外: |
朝鮮半島、南千島、沿海州、中国東北部に分布する。本亜種は日本固有。 |
変異 |
形態: |
若干の地理的変異が知られるが、国内での亜種区分は認められていない。♀には遺伝的多型が知られ、斑紋によってOA型、OB型、AB型などに分けられるが、やや不明瞭で、ほとんどがOA型である。 |
季節: |
- |
性差: |
異型。♂は翅表が金緑色、♀は黒褐色。 |
生態 |
環境: |
落葉広葉樹林、人家周辺の二次林(里山)に多く棲息する。 |
発生: |
年1回。クリの開花とほぼ同時、平地や低山地では5月下旬~6月上旬、山地や寒冷地では7月上旬に姿を現す。稀に関東地方などはで9月上旬に生き残りの♀を見かけることがあるが、産卵は終了しているようである。 |
越冬: |
卵。ただし、卵内では年内には幼虫体が形成されている。 |
行動: |
昼行性。主に午前中に活動し、10時~11時頃がピークとなる。♂は強い占有性を示し、テリトリーに入った他の♂を激しく追飛したり、 「卍ともえ飛翔」したりする。♀は一般的に不活発で、食樹周辺に静止していることが多い。♂と♀は生活領域が異なる。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/新芽・若葉。平地や低山地では主にコナラ。他にはクヌギ、ミズナラ 、カシワ、ナラガシワ、アベマキなどのブナ科落葉樹(ナラ類)を好むが、地域によってはアカガシ、アラカシ、シラカシ、ウラジロガシ、ツクバネガシなどのブナ科常緑樹(カシ類)からも卵が見つかることがある。
若齢幼虫は新芽や花穂に食い入り、中齢以降は葉を葉縁から食べる。 県内ではほとんどの地域でコナラが利用されている。 |
成虫: |
食植性/花蜜。高等なミドリシジミ族の中では訪花性は比較的強く、クリ、シシウドなど白色系の花で吸蜜する。♂は早朝に湿地で吸水したり、葉上に残った夜露を吸うことがある。 |
類似種: |
クロミドリシジミを除くFavonius属各種は互いに酷似するが、他の種は県内には分布しない。ミドリシジミに似るが、裏面の地色が異なる。 |
保 護: |
千葉県:C、千葉市:C、東京都:A(区部)、埼玉県:NT1(荒川以西・大宮台地/CR+EN)、栃木:C。 |
その他: |
普遍的に分布するが、県内での個体数はさほど多くない。卵はかなり多く見かけるが、成虫を見かけることは少ない。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。 |
寄生: |
ヤドリバエ科のノコギリハリバエ(Compsilura concinnata (Meigen))、カイコノクロウジバエ(Pales pavida (Meigen))、Phryxe nemea (Meigen)、ヒメバチ科ヒメバチ亜科のアカエグリヒメバチ(Ulesta agitata (Matsumura et Uchida, 1926))などが知られる。 |