ツバメシジミ

燕蜆蝶 (シジミチョウ科)


2002/4/10 11:25 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 小型のシジミチョウ。翅を開くと澄み切った秋の空のような深い空色が目に飛び込んでくる。後翅にはかわいらしいしっぽ(尾状突起)がちょこんとついていて、私の最も好きなチョウのひとつ。ヤマトシジミやルリシジミに似るが、後翅にしっぽを持ち、裏面の外周には赤い縁取りの青い斑紋列を持つので簡単に見分けられる。英語圏では"Short-taild Blue"と呼ばれている 。
 写真は、千葉市緑区で4月上旬の午前中、路傍で翅を開いて日光浴する春型の♂である。春型は夏型より裏の黒斑の色が薄く、♀は表に青色鱗が発達する。性差は明瞭に斑紋に表れ、♂は翅表が澄んだ空色だが♀は黒褐色の地味な色なので、翅表さえ見ることができれば区別は簡単である。♀はクロツバメシジミに酷似するが、県内には分布しないので見間違えることはない。
 日当りのよい開けた場所を緩やかに飛び回るが、長く飛び続けることはない。夏は♂が湿地で吸水する姿もよく見かける。翅を閉じてとまるときや歩行するときは、後翅をすり合わせるように動かす。このとき、尾状突起があたかも触角のようにみえるのだが、これは鳥などの捕食者の目を欺くためと考えられている 。春の陽だまりの中、散策の途中で野原や土手に座り、このチョウが花から花へちらちらと舞う姿を見ていると心が和みますよ。あなたもやってみてはいかがでしょう。



ツバメシジミ 極東亜種 (シジミチョウ科 ヒメシジミ亜科 ヒメシジミ族)
Everes lacturunus kawaii Matsumura, 1926
分布 国内: 本土全域と屋久島以北の周辺離島のほぼ全域。平地~山地に普通。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: ユーラシア大陸北部や台湾、樺太、千島のほか北米大陸に汎く分布する。 原名亜種の標式産地は「ソ連南部」。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: 比較的明瞭。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: 異型。♀は翅表の黒褐色部が♂より広い。
生態 環境: 田畑の周辺や人家近く、野原の周縁などの比較的開けた環境を好む。
発生: 多化性。本州以南では通常年4回5回 。北海道などの寒冷地で2回~3回、暖地では5回~6回発生する。
越冬: 幼虫(終齢)。食草の葉に厚く吐糸して、その中に潜んで休眠する。越冬後の幼虫は摂食せずそのまま蛹化する。
行動: 昼行性。飛翔は比較的緩やかで長く飛び続けることはなく、すぐに草上や地上に翅を開いてとまる。産卵は食草の花や莢、若葉の裏、葉腋などに1個ずつ行われる。
食性 幼虫: 食植性/若果新芽マメ科カラスノエンドウシロツメクサコマツナギが主。他にもアカツメクサ、レンゲソウ、ナンテンハギ、ヤマハギなど多くのマメ科植物が知られる。なお若齢から終齢まで、花を食べる個体は蕾に頭から入り込んでこれを食べ、葉を食べる個体は表から葉肉のみを食べて葉脈や葉裏の表皮組織を残す。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タンポポ類、レンゲソウ、ハルジオン、ヒメジョオン、シロツメクサ、オカトラノオ、ハギ類、キク類など多くの花で吸蜜するが、特に食草であるマメ科植物を好む。夏型の♂は湿地でよく吸水 し、汚物で吸汁することも多い。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: 秋季の幼虫は食草の部位(花・蕾/葉)によって羽化するか越冬するかが決まるらしい。
天敵 捕獲: 虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: ヤドリバエ科のサンセイハリバエ(Aplomyia confinis (Fallen))、アワハリバエ(Cadurciella tritaeniata (Rondani))、ヒメバチ科チビアメバチ亜科のツバメシジミチビアメバチ(Melalophacharops everese (Uchida, 1957))、ヒメバチ亜科のツバメシジミセアカヒメバチ(Neotypus nobilitator iwatensis Uchida, 1930)が知られる。

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