ルリシジミ

瑠璃蜆蝶 (シジミチョウ科)


2003/04/13 10:30 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のシジミチョウ。県内に棲息する空色のシジミチョウのなかで、地上すれすれを飛ぶヤマトシジミやツバメシジミと違い、高い梢の上などをちらちらと飛ぶことが多い。また、どちらかというと野原のような開けた環境より、雑木林のような比較的暗い環境の中の陽だまりを好む点も異なる。最近は基本食草のクララに近縁のエンジュが街路樹としてよく植えられているので、街中でもやや多く見かけるようになった。英語圏では"Holly Blue"もしくは"Azure Blue"、"Hill Hedge Blue"などと様々な名前で呼ばれている。
 写真は、千葉市緑区で4月中旬の午前中、カントウタンポポで吸蜜する春型の♀である。性差は明瞭に斑紋に表れ、翅表の青い部分の広さが異なるので、表さえ見ることができれば一目瞭然だが、翅を開いてとまることはあまり多くないようだ。夏型は一般に春型より裏面の地色が白いが、個体差も大きいのではっきりしないことがある。
 県内では4月上旬には姿を現し、10月下旬頃まで見ることができるが夏季に一時数が減る。飛翔は比較的緩やかで、一旦飛び立つとなかなかとまらずに飛び続ける。訪花性は強く、オオイヌノフグリ、タンポポ類、ウツギ、イボタノキ、クリ、シオン類など色々な花に集まるが、基本的に黄色や白い花を好むようである。このほか♂は湿地で吸水したり、犬の糞などに集まって吸汁する。翅を閉じてとまるときや蜜を吸っている間、たえず後翅を上下にすり合わせるように動かすことが多い。



ルリシジミ 原名亜種 (シジミチョウ科 ヒメシジミ亜科 ヒメシジミ族)
Celastrina argiolus argiolus (de l'Orza, 1869)
分布 国内: 本土全域と主な周辺離島、吐喝喇列島以北の南西諸島全域。日本産はかつて別亜種(ssp. ladonides de l'Orza)とされたが、現在は原名亜種に含められている。
県内: 市街地を含めほぼ全域に棲息する。
国外: ユーラシア大陸北部~中部、アフリカ北部、北米大陸西海岸~中米山岳地帯に分布する 。原名亜種はユーラシア大陸~日本までの広い範囲のものをさ し、標式産地は「イギリス」。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていない。
季節: やや不明瞭。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: 異型。♀は翅表の黒色部が♂より広い。
生態 環境: 樹林や田畑周辺、草原などさまざまな環境で見られるが、比較的林縁に多い。
発生: 多化性通常年4回6回。暖地では3月下旬、寒冷地でも4月には出現する。暖地では8月ごろ一時姿を消すことが多い。
越冬: 。幼虫は秋に気温が下がると食草を下り、地上の落ち葉の隙間や石の下などで蛹化して越冬する。
行動: 昼行性。飛翔は比較的緩やかだが、一旦飛び立つとなかなかとまらずに飛び続ける。夏型の♂は占有性を示すことがある。産卵は食草の葉裏などに1個ずつ行われる。
食性 幼虫: 食植性/若果。基本食草はマメ科クララ。典型的な広食性の種で、他のマメ科、ミズキ科、バラ科、ブナ科、タデ科、ヒルガオ科、ミカン科などきわめて多岐にわたるが、季節や場所によってほぼ一定しており、ある地域、ある季節において種をまたがって食べることは少ない。主に花や蕾を食べるが、食草によっては葉も食べることがある。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タンポポ類、シオン類、ウツギ、イボタノキ、クリ、イタドリ、オカトラノオ、キク類などいろいろな花に集まる。♂はとくに吸水性が強く、しばしば湿地で吸水集団を作ることがある。また、獣糞などの汚物にもよく集まる。
類似種: スギタニルリシジミと酷似するが、県内には分布しない。
保 護: 指定されていない。
その他: 普通種で個体数も多い。
天敵 捕獲: 虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: ヤドリバエ科のサンセイハリバエ(Aplomyia confinis (Fallen))、アワハリバエ(Cadurciella tritaeniata (Rondani))、ヒメバチ科チビアメバチ亜科のツバメシジミチビアメバチ(Melalophacharops everese (Uchida, 1957))、Barichneumon tanakai Kusigemati, 1989、ヒラタヒメバチ亜科のチビキアシヒラタヒメバチ(Pimpla nipponica Uchida, 1928)が知られる。

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