モンキチョウ

紋黄蝶 (シロチョウ科)


2002/05/26 12:10 袖ケ浦市吉野田 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型のシロチョウでモンシロチョウとほぼ同じ大きさ。細く薄紅色で縁取られたクリーム色の翅を細かくはばたかせて直線的に飛ぶ。後翅の裏面には白い斑紋がひとつあるが、これが和名の由来である。前翅表の端部には2条の黒色帯があるが、稀に幅広の1条に見える個体がいる。英語圏では翅の色調から"Pale Clouded Yellow"と呼ばれている。
 写真は、袖ケ浦市吉野田で5月下旬の午前中、ムシトリナデシコで吸蜜する夏型の♂である。春型は小型で、前翅端の黒色部が淡い。♂は黄色いものだけだが、♀は地色が黄色いものと白いものがいて、どちらかというと白色型のほうが多いようである。白色型は簡単に区別できるが、基本(黄色)型の♀は♂との区別が難しい。
 飛翔は比較的敏速で、細かくはばたきながら直線的に飛ぶ。一旦飛び立つとなかなかとまらずに飛び続ける。訪花性は強く、ハルジオン、ヒメジョオン、タンポポ類、オカトラノオ、ノゲシ類、センダングサ類など様々な花で吸蜜するが、どちらかというと生息環境から草原性の草本の花を好むようだ。地上で吸水したり汚物に集まることはない。斑紋、色調、飛び方のどれをとってもかわいらしいチョウであるが、顔を正面から見ると、毛むくじゃらで結構怖い顔つきをしている。幼虫は主にシロツメクサ(クローバー)を食べ、飼育も結構簡単なので、四葉のクローバーを探すついでに本種の幼虫を探してみるのもいいんじゃないでしょうか。



モンキチョウ 日本周辺亜種 (シロチョウ科 モンキチョウ亜科)
Colias erate poliographus Motschulsky, 1860
分布 国内: 日本全土。ほとんどの島嶼からも知られる。垂直分布は日本産のチョウの中で、キアゲハなどと共に最も広い。
県内: 市街地を含めほぼ全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島、沿海州、樺太、台湾、中国大陸、ヒマラヤ、インド、中央アジア~欧州(東部)に汎く分布する。原名亜種は欧州~中央アジア産をさし、標式産地はロシア南部の「サレプタ」。本亜種は日本産の他に中国大陸産と樺太産を含む。
変異 形態: 若干の地域差が知られるが、国内での亜種区分は認められていない。また地域的に前翅表の黒色部に白色部を欠く個体が見られ、クツカケモンキチョウと呼ばれている。
季節: 比較的明瞭。大きさと地色、斑紋が相違する。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。
性差: 異型またはほぼ同型。♀は♂より翅形が若干横長で丸みを帯びる。♀は遺伝的多型で、♂と同色の型のほか地色が白色の型が知られ、こちらが優性。
生態 環境: 耕作地や草原、牧場、堤防など、日当たりのよい開けた草原的環境を好む。
発生: 多化性通常年3回4回。 4月下旬頃に姿を現す。本州南部以南では5回~6回、九州では5回~7回程度。南西諸島では周年発生している。
越冬: 通常は幼虫(3齢)。九州南部では成虫や卵でも冬を越す。
行動: 昼行性。飛翔は敏速で、比較的低い位置を直線的に飛ぶ。移動性は非常に強い。とまるときに翅を開くことはない。♀は多型だが、実験では♂は白色翅型の♀に強く誘引されるという。産卵は食草の葉表に1卵ずつ行われることが多いが、2個~3個の場合もある。
食性 幼虫: 食植性/マメ科シロツメクサが主。他にはミヤコグサ、クララ、コマツナギ、クサフジ、ダイズ、ゲンゲ、ハリエンジュ、シナガワハギなどがあるが、季節的に変化する。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タンポポ類、アザミ類、レンゲソウ、シオン類、ノイバラ、ハナショウブ 、ユリ類、シロツメクサ、ツルボ、ハギ類、キク類、センダングサ類など非常にさまざまな花で吸蜜するが、草原性の草本の花を好む。♂は湿地でよく吸水し、稀に♀も吸水することがある。
類似種: ミヤマモンキチョウに酷似するが、県内には分布しない。
保 護: 指定されていない。
その他:
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ 、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: 幼虫に寄生し亜終齢もしくは終齢幼虫から脱出するモンキサムライコマユバチなどのコマユバチ類、クロコヤドリバエ、モンキヤドリバエ、Bactromyia aurulenta (Meigen)、サンセイハリバエ(Aplomyia confinis (Fallen))、エゾシロヤドリバエ(Phryxe vulgaris (Fallen))などのヤドリバエ類。ほかには蛹から脱出するヒメバエ類が知られるが未同定。

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