ツマキチョウ

端黄蝶 (シロチョウ科)


2002/04/15 10:45 千葉市緑区 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 やや小型のシロチョウで、モンシロチョウより一回り小さい。年1回、春にのみ出現する。ギフチョウ、ヒメギフチョウ、コツバメ、ミヤマセセリなどと共にSpring Ephemeral(春の儚い命)と呼ばれ、春の使者のような存在である。田に水を引く頃姿を現し、田植えが始まる頃には姿を消す。発生地での個体数は決して少なくはないのだが、ほんの2週間ほどしか姿を見せないうえ、 風の穏やかな晴天か明るい曇天の日にしか活動しないので、ぼやぼやしていると翌年の春までお預けになってしまう。
 写真は、千葉市緑区で3月末の正午過ぎ、カントウタンポポで吸蜜する♂である。♀は前翅端が黄色くならないので区別は簡単だが、稀に♂のように前翅端が黄色くなる個体がいるという。外形はシロチョウの仲間では特異で、翅の先端がかぎ状に尖り、後翅の裏面は大理石のような凝った模様となる。県内には分布しないが、色彩はクモマツマキチョウに似る。
ぱたぱたと細かくはばたきながら直線的に飛び、一旦飛び立つとなかなかとまらない。とまるときは翅を半開きにすることが多い。訪花性は強く、ハルジオンやタンポポ類、キツネノ ボタン、レンゲソウ、ケマンソウなど様々な花で吸蜜する。幼虫はイヌガラシやタネツケバナ、ハタザオ類などのアブラナ科野生種の花や蕾、若い果実などの栄養豊富な部分を食べてぐんぐん成長し、遅くとも6月上旬には蛹化する。そして初夏から発生時期までのおよそ10ヶ月あまりを蛹ですごすのである。



ツマキチョウ (シロチョウ科 シロチョウ亜科)
Anthocharis scolymus Butler, 1866
分布 国内: 日本本土全域。島嶼では佐渡、隠岐、対馬、壱岐、五島列島、種子島、屋久島。垂直分布は比較的広く、平地~標高1,600m前後の山地まで分布し、山地性の近縁種、クモマツマキチョウと混生することもある。
県内: 市街地を除きほぼ全域に棲息するが、やや局地的な傾向を示す。
国外: 朝鮮半島、中国大陸(北部~中部)。日本産は分布の東限にあたる。
変異 形態: 比較的顕著な地理的変異が知られるが、亜種区分は認められていない。
季節:
性差: 異型。一般に♀は前翅頂に橙色部をもたず白色。稀に♀で♂のような斑紋をもつ個体(橙色型)が出現することがある。
生態 環境: 食草の自生する樹林周辺。日当たりのよい林縁的環境を好む。
発生: 年1回。3月下旬~4月上旬に姿を現すが、その年の気候により若干前後する。出現期間は長くても2週間~3週間程度で、県内では5月上旬には姿を消す。
越冬: 。食草付近のさまざまなものに付着している。
行動: 昼行性。飛翔は比較的緩やかだが、地上1m~2m程度の高さを細かくはばたいて直線的に飛 び、一旦飛び立つとなかなかとまらない。飛び方は同じ亜科のモンシロチョウなどよりはモンキチョウに似ている。とまるときは翅を半開するか閉じる。♂には谷筋や山道などで蝶道をつくる習性がある。活動は晴天時に限られ、曇天時や雨天時には活動しない。また、晴天時でも日がかげると活動を停止することがある。卵は食草の蕾や花梗に産付されるが、食草1株につき1個が普通で、複数産付されることは稀である。
食性 幼虫: 食植性/若果アブラナ科ハタザオイヌガラシタネツケバナコンロンソウナズナなど野生種が主。他にはダイコンやカラシナ、アブラナなどの栽培種。葉を食べることは少ない。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タネツケバナ、タンポポ類、スミレ類、 ムラサキケマン、オオイヌノフグリ、ダイコン類などさまざまな花で吸蜜するが、黄色系の花を好む。吸水性はほとんどない。
類似種: クモマツマキチョウに似るが、県内には分布していない。
保 護: 指定されていない。
その他: ギフチョウ、ヒメギフチョウ、コツバメやミヤマセセリなどと共にSpring Ephemeralと呼ばれる春の使者的存在。発生地での個体数は少なくはない。
天敵 捕獲: 幼虫はサシガメ類、クチブトカメムシ類など。成虫は造網性クモ類など。
寄生: 幼虫に寄生し蛹から脱出するヒメバチ科コンボウアメバチ亜科のエゾコンボウアメバチ(Gravenhorstia (Erigorgus) yezonis (Uchida, 1928))が知られる。

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