クロアゲハ

黒揚羽蝶　(アゲハチョウ科)

卵

孵化直前
ユズ(ミカン科)
概要 食樹の新芽や若葉の葉表に１卵ずつ産付されるが､葉裏の場合もある｡一般に半日陰の暗い環境で､根際付近から出たひこばえに産卵が集中する｡
形質 直径約1.7㎜､高さ1.5㎜程度｡ナガサキアゲハよりやや小さく､モンキアゲハより若干大きい｡概形は底面の平らな球形｡表面は平滑で､目立った突起や斑紋を欠く｡色調は黄白色､時間が経過すると褐色味を帯び､孵化直前には灰褐色になり､幼虫体が透視できる｡このような経過が観察されないものはすべて無精卵である｡なお､ウィルスに冒されると黒変する｡

幼虫
４齢 終齢 前蛹
イヌザンショウ(ミカン科) サンショウ(ミカン科) サンショウ(ミカン科)
概要 終齢は５齢｡孵化した幼虫は､接着面を除き卵殻を食べるが､その摂食量には個体差がある｡初齢幼虫は孵化後､葉裏にとどまるものと葉表にでるものがある｡２齢以降では全期間を通じて､適当な葉の中央表面に吐糸して座を作り､そこに静止していることが多い｡飼育の際は産卵植物以外の各種サンショウ類でも充分に生育する｡
形質 概形は胸部がもっとも太いイモムシ形｡臭角は紅色｡初齢時のみ各節に棘状突起や毛を有するが､２齢以降では体表のすべての毛を欠き､棘状突起は著しく小型化するが､頭部のものはやや大きい｡色調は２齢までは黒褐色｡体の中央付近に白色帯を有するが､初齢ではやや暗色｡３齢～４齢の色調は暗褐色～黒褐色で､体の中央付近に背面から見てV字形に見える白色帯を有する｡各節は黒褐色で､ エナメル状の強い光沢を有する｡腹部前半節には背面からV字状に見える幅広の白色帯をもち､腹端は白色で内部に黒褐色斑を有する｡終齢は黄緑色で､体側は淡緑色｡中胸側縁に眼状紋を有し､その間が淡色 で､この部分と胸部後縁に網目状の褐色斑を持つ｡腹部第３～４腹節と第５腹節には黒色帯を有するが後者は背面で途切れ､1対の黒褐色斑となる｡ なお､老熟するとこの部分はやや赤みを帯びる｡モンキアゲハやオナガアゲハと似るが､本種は黒色帯が背面で途切れず､内部に網目状の白色斑紋を持つ｡

蛹

休眠蛹
蛹化直後 緑色型 褐色型
概要 食樹の茎などで蛹化するほか､食樹から離れた場所で蛹化することも珍しくない｡一般に越冬蛹は食樹からかなり移動し､人工構造物などに蛹化することも多い｡その際には直射日光や雨のあたらない場所が選ばれ､食樹であれば下部､その他の場合は下面や北面が選ばれる｡
形質 帯蛹｡概形は紡錘形｡頭部に１対､および胸部背面にやや大型の角錐状突起を持つほかは目立った突起などはない｡頭部の突起はやや長い｡色調は淡緑褐色で腹部背面が黄緑色の型と褐色の型があり､周囲の環境により決定されるが発現要因ははっきりしていない｡ただ､非休眠蛹では緑色型が多く､越冬蛹はほとんどが褐色型となる｡褐色型の休眠蛹を除き､羽化直前には成虫体が透けて黒色となる｡
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