始めは他愛のない悪戯
次にはこれからに対する期待
そして
最後に襲ってきたのは・・・・・・・・・・・・
――――――Let's Work!――――――
「それでは、ビクトールさんビシバシ働いてくださいね♪」
はそう言うと、早速ビクトールの前にドンッと書類の束を置き『今日中に終わらせろ』と言うと、
自分は窓辺にイスとサイドテーブル、更には紅茶のセットを持ってきて、優雅にティータイムを楽しみだす。
これには流石のビクトールも異議を訴える。
「おいおい!流石にこの量を俺一人でやれってのか?
それに何でお前は悠長に紅茶なんて啜ってんだよ?」
「それは俺が此処に来る前から溜まっていた書類です。ペース配分を考えて上で、俺が一日にこなしている量そのままです。
俺が此処で紅茶を飲んでいるのは、分からなかったところがあったら、すぐに聞けるようにとの配慮です。
何か他に質問は?」
「・・・・・・・・・・フリックは?」
「ビクトールさんの代わりに兵士の事を頼みました。
他には?」
「・・・・・・・・・・・ナニモゴザイマセン」
ビクトールは大人しく書類に手を付け始め・・・・・・・・・・・
「。此処なんだが、何で予算の別枠請求になるんだ?」
「・・・・・・・・・・先日誰かさんが食費の追加注文をしてくださったようで、この予算が残り僅かですので。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
のっけから質問をしてくる。
は嫌味を込めて説明すると、黙って仕事にも戻る。
その様子を見ると、今度から後先を考えて行動してくれるのではないかと淡い期待を抱き、
ミューズのアナベルから送ってもらった魔道の専門書を開き没頭する。
が。
「此処はどこの経費に入るんだ?」
「それは武器購入の予算ですね。」
「、去年の決算はどこにあるんだ?」
「・・・・・・・あの棚の二段目。」
「この間の遠出の経費が合わないんだが・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・単なる計算間違いです。」
「この入荷量なんだが増やせないのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理です。」
「此処は・・・・・・・・」
「いい加減にしてください。(怒)
いいですか?質問は自分で考えてから調べて、分からないものだけまとめて持ってくるようにしてください!効率悪すぎです!!」
「お、おう。」
次々と質問を待ってくるビクトールには切れると、資料の場所を図にして渡し、質問の仕方を決める。
ちゃんと分かったのか、ごそごそ動きながら自分で調べていくビクトール。
その後三十分に一回の割合で質問をまとめて持ってくるようにもなった。
おかげで少しはゆっくりと本に集中できる。
(はじめのほうに苦手そうな会計書類を持ってきたから、そこが過ぎれば日頃の書類の簡単さが分かって手伝う様になるかな・・・・・・・・?)
そんな事を期待しつつ、二時間が経ち・・・・・・・・・・・・
スパーン!!という軽快な音がしたのが二時間半後。
は今し方叩いた男の顔を覗き込むと笑顔で話しかける。
「ビクトールさん?」
「は、はい・・・・・・・・・」
「今し方寝くさっておられやがりましたでしょう?(笑顔)」
「えっと・・・・」
「今し方寝くさっておられやがりましたよね?(激笑顔)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」
はキュピーンと目を光らせ、その周りを黒い影にして薄笑いをしながら、腰の剣に手をかける。
ビクトールは慌てふためいて何度も『ごめんなさい!!ごめんなさい!!』と平謝りをする。
もある程度予測していたので、手を下ろすとにこやかに『次にやったら・・・・・・・・わかってますよね?』と言うと
また窓際に戻る。
ビクトールは溜息をすると、今度は寝ないようにと気を付けながら書類整理に戻る。
そして15分後・・・・・・・・・・・・・
「ビクトールさん!!」
ドガッ!!
また居眠りしてしまったビクトールにの剣が振り下ろされた。
の殺気で瞬間目が覚めたビクトールは、反射的に飛びのいて難を逃れる。
「・・・・・・・ちっ」
「“ちっ”って、当たったら危ないだろうが!!」
「危ないように狙ったんですよ。避けないでください。」
「いくらなんでも無理だ!!」
ビクトールは半壊したイスを見ると、ゾッと青ざめる。
イスの背もたれの半分ほどで剣が止まっている。
もしこの剣を受けていたら脳天を割られていただろう。
「っていうか、予告ぐらいしろよ!!」
「しましたよ。ちゃんと“ビクトールさん”って声かけたでしょう?」
「・・・・・・・・・・声と剣が同じだった気がするが?」
「安心してください。次は気配を消して声をかけずにヤります。」
「安心できるか!!」
「む。お昼ですね。食堂に向かいましょう。」
「人の話を聞け!!」
は五月蝿いビクトールの襟を掴むと、ビクトールを食堂へと 連行 連れていく。
食堂は混んでいるが、フリックがどうやら席を取っといてくれたようだ。
大きめのテーブルにやジョウイ、ナナミが一緒に座っている。
だが、席の空け方に問題があった。
何故かフリックの横と、とジョウイの間にそれぞれ空席がある。
「何でだ・・・・・・・・?」
ビクトールは泣きたい気持ちになるが、他は満席だ。ほかに行くところがない。
仕方なくいつもの様にフリックの横に腰を下ろす。
とジョウイの間に座るよりも安全だと思う。
しかし、ビクトールはと向かいに座って食事を取るが、何故か生きた心地がしない。
さっきの事もある。それに、何故かとジョウイの笑顔が心臓と胃に悪い。
「ご馳走様・・・・・・・・」
「あれもういいの?ビクトールさん?」
ビクトールは空腹だったが、どうしても喉を通らず、二人前で席を立つ。
それを心配してナナミが声をかける。
ビクトールはそれに『朝食いすぎた』と誤魔化すと、会議室に戻ろうとする。
しかし、その時悪魔の囁きが・・・・・・・・・・
「え?ビクトールさん朝食べてないでしょう?()」
「寝坊して慌てて会議室に直行したんじゃぁなかったでしたっけ?(ジョウイ)」
「(お前ら・・・・・!!!)いやっ!それは・・・・・・!!」
とジョウイの腹黒幼馴染がそんなことを言う。
慌てて訂正しようにも、中々言い訳が浮かばず、あたふたしてしまう。
そうしている間にも、天然なの姉ナナミが猛然と言う。
「そうなの!?駄目じゃないビクトールさん!元気の源はご飯なんだよ!!
ちゃんとご飯食べないと力でないってゲンカクジィちゃんが言ってたもん!!」
「えっと・・・・・・・・・・それは・・・・・・・(助けろフリック!!)」
「隊長さんがそんなんじゃぁ駄目でしょうぅ!?」
「えっと、ナナミ。ビクトールは・・・・・・・・・・・・(俺にどうしろと!?)」
「ビクトールさんだけ特別扱いはダメ!!」
おねぇちゃん的な発言をしながらナナミは猛然と砦の隊長と副隊長を叱り飛ばす。
二人も突然の事で、言い返せない。
そんな状況にビクトールは泣きそうになるが、思はぬところから助け舟が来る。
「ナナミ。ビクトールさんはちゃんと二人前食べてるじゃないか。十分だろう?」
「そうそう。ちゃんと食べたって。(サンキュー!!)」
「でも、ビクトールさんだよ?」
((((それって失礼なんじゃぁ?))))
ビクトールはの救いに感謝しながら、ナナミの言葉に内心突っ込む。
同じようにやジョウイ、フリックも突っ込む。
というか、かなり失礼な発言なんだが、ナナミは気が付いていない。
はその言葉を笑いながら聴くと、こう返した。
「ビクトールさんだからだよ。ナナミ。」
「「「「「?」」」」」
皆が疑問符を浮かべるなか、はサラリと笑顔で言う。
「クマさんは人間になりたいんだよ。」
「をい!!」
流石にビクトールが即突っ込む。
は不機嫌そうにむくれると、『冗談なのに』という。
(嘘だ。半分は本気だった!!)
とフリックは思うが、我が身が可愛くて何もいえない。
は笑って、信じかけているナナミに『今のは嘘だよ。』と言う。
「ホントはね、ビクトールさんはダイエット中なんだ。」
「ダイエット?」
「そ。女の子のナナミなら気持ちが分かるだろう?」
「そっか。うん。分かるよ。
がんばってね!!ビクトールさん!私も応援するから!!」
「お、おう。サンキュウ・・・・・・・・・(助かったのか?)」
そう言うと、また会議室へとと消えていった。