―――――――044:歴史―――――――
暗い部屋の中、たった一つのランプだけを持って書斎に入る。
中にはずらりと並んだ本。
それは一種の威圧感を持つほどに高く積み上げられている。
「・・・・・・・・・・・・」
何度も足を運んだ場所。自分の書斎なのだから当然なのだけれども。
それでも夜の書斎は異界のように感じられる。
他者を排する場所。
真の孤独を与える場所。
誰かがそのような事を言っていた気がするが、誰の言葉だったのか思い出せない。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
自然と溜息が出てしまう。
そういえば、溜息を吐くと幸せが逃げると言ったのはこの間まで一緒にいた仲間だっただろうか?
それとも、もっと昔の知人だったか・・・・・・
いや、そもそもこの世界の人間だっただろうか?
―――分らない。
書斎の奥まで来ると、埃を被った分厚い本を数冊選び出す。
そのまま抱えて床に座り込む。
元をたどれば机や椅子がきちんと用意されてはいるが、そこまでいきたいとは思わない。
そのまま本棚を背に表紙を捲る。
歴史を捲る。
タイトルは『国の歴史』。
そのタイトルを眺め、一枚目を捲る。
その次に目に入ったのは文字の羅列。
単なる無機質な出来事の羅列。
一ページ目を読んで、それ以上読む気が失せた。
ここに書かれているのは歴史。
揺るぎ無い、人々が知る歴史。
それは確かに歴史だろう。
そう考えると、ぐるりと周囲を見上げる。
立っていた時よりもずっと高くなった本棚。
その本棚の本はどれも“歴史書”。
歴史に囲まれている。
だが、そこに求めている事は何も書かれていない。
言葉の主は誰?
歴史の意味は何?
人々の思いは何処?
今度は傍らの取り出したり歴史書を見る。
そこには今まで渡り歩いてきた沢山の国の名前。
滅んでしまった国や、忘れ去られてしまった国もある。
それを見るとまた溜息が出る。
そして また 疑問を繰り返す。
言葉の主は誰?
歴史の意味は何?
人々の思いは何処?
そのまま目を瞑って繰り返しても答えは何処にもない。。。
  
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