かみ【神】[名]
@宗教的、民族信仰の対象
A神話上の人格神
B天皇または天皇の祖先
C死後に神社などに祭られた霊
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―――――――032:神―――――――
「あ゛〜〜〜!!!駄目だ!!!絶対明日の小テスト呼び出される〜〜〜!!!」
「うるさいよ武巳。」
ある平日の放課後、聖創学園文芸部の部室には近藤武巳の絶叫が響いていた。
悲壮感が漂うというよりは、周囲の苦笑を買うような響きが感じられるのは武巳ならでは。
は雰囲気に逆らわず苦笑を漏らすと、手元の本から顔を上げる。
「そんなに慌てるなら、最初から授業起きとけよ。」
「無理だって。俺、今は窓側の席だもん。」
「場所のせいにしない。」
「うう〜〜〜」
半泣きになりかけつつ、参考書を広げている。
小テストなのだから、ノートを復習するとか、教科書の問題を解くとかすればいいのだろうが、ここ連日睡眠学習ばかりしていたため、何処を授業でやっているのかも分からないらしい。
だったら、ノートを借りようと思うが、これは担当教官が『ノート回覧禁止令』を出した為に不可能。
つまり、授業中あんまりにも爆睡していた武巳を狙ったテストである。
「〜助けてくれ〜」
「いや、俺も普通の小テストなら助けてあげるんだけどね。
今回は俺ら巻き込まれている形だからなぁ〜」
「・・・・ごめん。」
「ま、大丈夫だよ武巳。」
「・・・・・・・・・」
「精々、こってり絞られて、今後目を付けられるだけだろうから。」
「それが嫌なんだよ!」
アッハッハと気楽に笑うに食いつくが、すぐに力尽きる。
「くそー神様仏様ー」
斜め上を見ながら『どうか俺にお力を〜』と祈る武巳にそれまで沈黙を保っていた空目が声をかけた。
「近藤。」
「何陛下!?助けてくれるの!?」
「いや、そうではない。
近藤は何に祈っているんだ?」
「え?何って・・・・・・神様?」
首をかしげながら自分の言った事を反芻する。
「それはどの神だ?」
「どのって・・・・・・あれだよ、文学の神様?
よく受験でお参りしたりするじゃん。」
「そうか。ところで近藤、お前はその神が日本における本来的な神ではないことは知っているのか?」
「ええ!?どういうこと?いっぱい居る神様の一人じゃないの?」
純粋に驚いている武巳に空目は淡々と説明する。
翌日の授業後、は道具を片付け、次の教室への移動の準備をしていると、武巳が駆け寄ってきた。
その顔は昨日の様子と打って変わって、万遍の笑みだ。
「!サンキュウ!!
昨日の講義って、このテスト対策だったんだな!!!」
はピシッっと凍りつく。
だが、武巳は気付かず『マジでサンキュウ!あれが無かったら、俺絶対無理だったよ!』と騒ぐ訳で。
勿論、騒ぐとなれば相応の声な訳で。
ガラ。
「ほう?近藤、君には親切な友人が居るようだな?」
当然、廊下側最後尾―――つまり、後ろのドアに一番近いの席で騒げば、廊下に居る担当教官にも届くわけで。
「う・・・ぁ・・・・せ、先生・・・・・」
「、お前も随分と友人には優しいようだな?」
「あ〜いや〜何て言うんでしょうかね〜その〜」
は目を泳がせつつ、援軍を求めるが、黒尽くめの御方は既に消えうせていた。
担当教官は二人の方をガシッっと鷲づかみにすると、薄っすらと笑みを浮かべる。
「お前等2人とも、放課後職員室に来い!!!」
「ぎゃぁぁぁ!!」
「何で俺まで!!」
「問答無用だ!」
その後、担当教官が居なくなると、は取り付かれたように、『今此処に神が居た!絶対居た!!!』と騒いで周囲に心配されたらしい。
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F人為を超えて人間に害を及ぼす恐ろしいもの
G他人の費用で妓楼に上り遊興するもの。とりまき。
H六をいう青物市場の符丁
――――――小学館『日本国語大辞典 第三巻』
武巳の性格が掴めない今日この頃。
陛下の講義の内容に興味がございましたら、本文の『説明する。』からどうぞ。
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