SURRENDER
柔らかな唇が、触れるか触れないかの密やかな愛撫を繰り返す。 布地越しの背中から脇の下を通って、敏感な胸の突起へ。衣服ごと咥えられた其処に、はっとするほど熱い息吹を感じて、ムウは思わず声を漏らす。押し殺しきれなかったそれは自分でも茫然とするくらい甘くて、火のような羞恥に顔を背けた。 しのびやかに、彼を愛する獣は笑う。今聞いた声の甘さも、その後で朱に染まった貌も愛しくてたまらないと言うように、深い双眸がムウを見つめた。しなやかな動きで身体を起こして、滑らかな肌の首筋に、シオンはそっと舌を這わせる。 ぞくり。体の真芯をまつわり伝わって行くような痺れは、先刻から数えてもう何度目だろうか。緊張にも似た硬さで閉じた両脚の間は、熱と液とで既に痙攣さえ始めている。なのにシオンは、決して触れようとはしない。その場所からははるか遠い部分だけを、繰り返し繰り返し焦らすように愛す。 ――ああ、お願いだから。 哀願するような碧の眼が、拭い去れない羞恥の色をまとったまま、シオンの方を見やった。 からかうように悠然と、口の端でわずかに笑って、シオンはムウの手にそっと触れる。まるで快楽に耐えてでもいるかのように、その手はきつく敷布を握り締めている。戸惑っているムウに少しだけ顔をしかめて見せて、シオンは愛弟子の指の間に自分の指を滑り込ませる。了解したムウは決まり悪そうに微笑んで、握り返す手に力を込める。そしてどちらからともなく、深い口付けを交わした。 しっとりと汗ばんだ身体に押し付けるように預けられたシオンの重みが、泣きたいくらいに嬉しくて。ムウは溜息のような、細く甘い喘ぎ声を漏らす。緩やかな動きで身を沈め、シオンはその喉元に口付ける。ゆっくりと首筋を辿り、鎖骨の形を確かめるようになぞり、そうしてすっかり硬くなった胸の突起を、再び布地ごと優しく口に含む。敏感なその場所を包み込んだ熱があまりに熱くて、ムウの身体は激しく悶える。頭の奥が焼き切れるほどの、強い快感。獣のように強くしなやかなシオンの両腕が、壊れものを扱うかのようにそっと、両胸を背中を腰を、衣服の上から愛撫する。暖かい舌は薄い布地を濡らしながら、硬い乳首を弄ぶように転がし続けて。 「シオン、――」 乱れた呼吸の間から言いさしたまま、唇を噛む。シオンはちらりとムウの顔を見やる。重ねた二つの身体と身体は、もはや蕩けるほどに熱い。燃えるような手の平が、衣服の下に滑り込む。必死で殺し続けていた嬌声が、とうとう耐え切れなくなったムウの唇からほとばしった。優しい動きで素肌を撫でるシオンの手の平が、気が遠くなるほど温かくて。……これ以上、押しとどめられそうにも無い。あなたを待ち侘びている此処は熱くて熱くて、あふれたものでこんなにも濡れているというのに。 早くこの隙間を、埋めて欲しくて。もどかしささえ感じながら両腕を伸ばし、シオンの身体にすがりついた。自分でも思っても見なかったような、艶めいた声が出た。 そのいつになく強い哀願の言葉に瞳を細め、暗闇の中でシオンがゆっくりと笑った。 《END》
***************** ヤケクソ。(私が) いやしかしこの師匠、どう見ても「あなたが欲しい」と言わせるためだけのプレイですな…… ……アー、せっかくだからヤケクソついでに、噴飯モノのおまけとか付けてみます。 この話を最初に書いた当時(2年前)、勢いで発展した妄想をメモしただけの昔の遺物ですが。 (今を逃せば恐らく一生公開する気にはならぬであろう…) (本編以上に反吐が出ますので、ご覧になるならそのつもりでどうぞ。) →おまけ |
Written by T'ika /2003.9.12 (Rewritten in May, 2005)