■活動記Vol.3

6月11日・・・雨・・・。
栃木県・日光サーキットは天気予報に反し、完全な雨模様。
みんなの思いが交錯する、チームとして始めてのレース。

前日、ローダーを借りてきて保管場所から工場へと車を搬入し、これから仕上げの作業を始めるべく、準備を開始しました。随所に色々な工夫を凝らし、手間隙掛けてここまで仕上げてきた大切なマシンです。
リアウィングを装着し、アクリルウィンドウの補強ステーを取り付け、タイヤを走行用のタイヤに交換。ダッシュボードにフラッグの意味を記載した一覧を貼り付け、走行時にフラッグの意味を間違えないように万全の準備をします。
皆が作業しているなか、私とチーム員の一人の方と一緒に、この方の奥様がデザインしてくれた手作りのカッティングシートをフロントウィンドウに貼り付けます。これがまた位置決めが難しくて、なかなか旨く決まらず、全体的には旨くできたのですが、”部”だけが少しだけ斜めになってしまいましたが、そこはご愛嬌ということで・・・(^^;)
みんなの思いが込められた名前が一際輝いて見えます♪
全てが終了し、明日に控えたレースを待ちわびる我らが【トレノKOS3】。たまらないですねぇ。張り出したタイヤに適度なキャンバー、ピカピカに磨き上げられたボディー。こいつがこれから私達の夢を乗せて走るマシンです。
とりあえず全ての作業が完了し、一息入れてから翌日の打ち合わせを始めます。ドライバー交換・燃料補給など燃費を計算し大まかなシュミレーションをします。
ここまでくると明日の事がよりリアルにイメージされてきますので、おのずと気持ちも高揚してきます。
全てが終了しローダーへ積載、この頃になると、みんな口数も減り今までの事を振り返るかのようにマシンを眺めていました。いよいよです!もう明日です。リップが当たらないようにスロープを置いて注意深く乗せてゆきます。乗車している方が作ってきたカーボン調のカッティングシートのNo.1が良いですね♪白いボディーにくっきりと栄えます。

準備を終えたマシンは、ここで明日のレースまで短な眠りにつきます。閉じてゆくシャッターを眺めながら、この愛機の奏でるEXノートが頭の中に響いてきます。
・・・今夜、ちゃんと眠れるかな(^^;)
私達が知合って早数年、やっとチームとしての初レースを向かえることになりました。
それぞれの人生を生きてきて、偶然にも出会った・・・。
そんな私達が迎える初レース、期待と不安が入り乱れるなか、今まで自分が歩んできた道のりを振り返り、走れる喜びを噛み締めていました。
寝床に入った私は、思いのほかすぐに眠りにつくことができました。自分でも気付かないうちに疲労が溜まっていたのだと思います。
明日、事故の無い最高の一日になりますように。

いきなり走行中の絵でもうしわけありません。なにぶん今回はクローズドとはいえ、10年近く振りのレースということもあり、写真を撮ることよりも走ることしか頭のなかになかったもので・・・(^^;)
朝起きて7:00ごろに一度工場へ全員集合し、ローダーとトランスポーターにまとまってサーキットへ向かいます。ゲートの前には既に幾つかのチームが集まっており、自分達の乗ってきた車を見せ合ったり、レースの戦略を話したり、レインコンディションに合わせて現地でタイヤ交換をしたりと・・・サーキットの大小に関係なく、この独特の雰囲気はやっぱり良いものですね。
まずゲートイン後には各チーム最終点検をすませ、車検を受けるために入念に確認します。そして確認を済ませると検査官がきて車の各部をチェックします。それを終えると今度はドライバーズミーティングとブリーフィングをします。そして早くも雨の為に進行が遅れていたので早々にフリー走行へ。
しかしコースはご覧の通りのヘビーウェット状態、皆言うことを聞かないマシンを確かめながら順調に消化して行きます。
これが私達の大切なマシンです。隣に立つ紫と白のツナギを着ているのが私です。このツナギ、実は私が始めてレースを始めた時に初めて購入したツナギです。もちろんFIA公認の公式レースにも使える物です。今は車検を切らして置いてあるトランスポーターで長年の時を経て再びレースの世界へと戻ってきました。フリー走行を終えて皆がマシンチェックをして決勝にそなえて準備中です。
最初はヘビーウェットでしたが、フリー終盤から決勝前にかけてコンディションが改善されてきたので、各チームドライタイヤのままで決勝への準備を進めています。かくいう私達もドライタイヤのまま決勝へと駒を進めます。この写真でハチロクの奥に立っている方がメカニックの方、赤いツナギの方が色々な部品の加工などをしている方で、マシンに乗り込んでいるファーストドライバーの方はこの方達と昔からの友人の方です。私達のマシンの出来栄えは良く、回りの方々も終始こちらのマシンを気にしていたのが嬉しいですね。さぁ、いよいよ決勝の時が刻一刻と近づいてきます。
他のチームの方々がやっていた事を見よう見まねで車をジャッキアップして斜めに傾けて、口一杯まで燃料を搭載します。
時はきて、決勝グリッドへとマシンを運びます。最初からエンジンをかけてグリッドに付くマシンもいますが、僅かではありますが私達は燃費のことを考えてグリッドまでマシンを押して運びます。このほうが雰囲気も有って良いでしょ?
そしてあと御一方、パソコンを使ってレースシュミレーションをして下さった方が、マシン後部を押している黒いツナギの方です。この方も皆と昔からの友人です。
ここまでくると、緊張と喜びが混在していて何ともいえない雰囲気です♪
ポールポジションにマシンを着けてドライバーに語りかけます。お互いがフリー走行で得たインプレッション、コース状況、ドリンクがキチンと機能しているかどうか?、メンタル的なアドバイス・・・。ファーストドライバーを務めるこの方の緊張は大きかったと思います。数年に渡り夢を見続けてきた事が、今現実となって動き始めたのですから。マシンにこもった熱を逃がし、これからの長丁場に備えてドライバーのコンディションを確認します。写真にはカーNo.【1】と、ポディウムの頂点が写っています。果たして私達はこのまま先頭でゴールすることが出来るのでしょうか!?
一番後ろ右側にいるEP82のスターレットは私達にローダーを貸して下さった方々のチームです。左側のロードスターは、何とこの雨の中オープンで走行してます。凄いですね(笑)
参加台数は確か10台だったかな?台数はそれほどでもないですが、あまり多すぎても走りにくいですからね。
いよいよ時間も押し迫り、各自最終調整を終えてマシンから離れて行きます。スタートはローリングスタート、一番心配なのはやはりスタート。最初の混乱が一番危険です。
ペースカーを先頭にゆっくりと周回して隊列を整えて行きます。やはり雨の日はFFの車は強いです。ポールポジションとはいえ、すぐ後ろに多数のFF車が控えているので、よりプレッシャーが掛かります。コースコンディションは徐々に良くなってきているので、このままドライへと変わってくれることを祈ります。
このマシン、ガッチガチに固めたボディーとドライ用のタイヤとセッティングなので、朝のフリー走行を例えるなら、正に氷の上を走るような感じなんです。
どうか、雨が強くなりませんように・・・。
しかしまぁ、願いも虚しく、スタートしてしばらくするとご覧の通り再び完全なウェットへ・・・。最初こそスタートの混乱時にコンディションが良かったのは幸いでしたが、これでは私達のマシンも歯が立ちません。後ろから見る見るFF勢が水を得た魚のように激しい勢いでまくし立ててきます。バトルになるような状態ではないので、無理にブロックすることもせず、あくまでもクリーンに最後のドライバーまで繋ぐために、必死にマシンをコース上に留める事に専念してドライビングします。行きたくて仕方が無い気持ちが解るだけに、何とかならないものかと考えますが、天気ばかりはどうしようもありません。
このマシンは前回の耐久で、上位に食い込んだ方々のようですが、さすがに雨のなかでは苦しいようです。しかしコンディションが悪化してくるのを見て、ドライバー交換時になにやらタイヤ交換をしていました。その後タイムが2〜3秒一気に縮まり、良い感じにペースを上げて行きます。恐らくウェット用タイヤにでも交換したのでしょうね。
しかし私達には交換するタイヤはないので、中古のドライ用Sタイヤで走り続けなければなりません。案の定、ペースアップしたシルビアが後ろから迫ってきますが、なす術無く料理されて行きます。
・・・??写真のシルビア、よく見ると右フロントが潰れてるけど、どうやらロードスターとのバトルで軽く接触したみたいですね。ロードスターの左サイドがベッコリと凹んでました。
ん〜、タイトコーナーの立ち上がりもキツイですねぇ。ここの立ち上がりでは特に酷く、全くスロットルを開けることが出来ません。ただただ抜かれて行くのを見ていることしか出来ないのがとても痛いです。
そうこうしているうちにも時間は流れ、数十分を経過。いよいよドライバーチェンジです。ピットウォールからサインを出しドライバーチェンジの為にピットインです。、写真はセカンドドライバーからサードドライバーへのチェンジです。皆自分の番で決してリタイアすることが無いように、決して夢を止めないために・・・真剣です。
ドアを開け、ドライバーチェンジをサポートするために、マシンに乗り込みます。シート位置の変更、ドリンクのチェンジ、ベルトの着脱、一つ一つを確実に、しかし素早く手順どおりにこなして行きます。次は赤いツナギのドライバーです。
緊張をほぐそうとするドライバーの緊張感が伝わってきます。
レースもここまでの長丁場になると、随所でご覧の通りのバトルが繰り広げられます。辛いです、かな〜り辛いです。各車タイヤチェンジを済ませているので、ラップタイムにすると、どの車も少なくとも1周で2〜3秒は違います。
とにかくスロットルを開けることができません。
この写真は私とこん太氏のツーショット。目の前を通り過ぎるマシンを眺めつつ、レースについて語り合っている絵です。
ちなみに左下に有る2本の矢印ですが、サインボードです。この矢印は常に上を指してドライバーをあおります(笑)
このボードは 後ろにもサインがいれてあります。
ところどころ一時的にコンディションが良くなる時間帯もありましたが、マシンのメリットを発揮できるだけのコンディションまでに回復することはなく、とにかく我慢のレースが続きます。
ここで4番目のドライバーへチェンジですが、ともに燃料補給です。あまりにも雨が酷いために、急遽傘持ち役が付いて給油が行われます。
消火器を構えるのは次のドライバー、給油するのは今まで走行していたドライバーです。
順番が逆ですが、この写真は恐らく3番目のドライバーの黒いツナギの方だと思います。
この頃、天候は悪化の一途を辿り、ご覧の通りタイトコーナーでは随所でテールスライド・・・というよりブレイク状態。前に出ないマシンに苛立ちながらも、果敢に攻めて行きます。確実に、しかしアグレッシブに全員が一丸となって戦っています。
スプリントレースには無い雰囲気ですね。
さて、これからドライブすることになる私は、コース&マシンコンディションなどのアドバイスを受けます。どうやらコースコンディションは思ったよりも良かったようなのですが、如何せん4番目の方がドライブしているこの時も天候は悪化の一途です。
少しでも情報があるのは心強いです。
「とにかく良いとは言っても、コンディションは酷い」とのことです。
時間も3時間を迎える頃になると次に控えた私の番に備えて準備に入ります。
レーシングギアを装備しながら、集中力を高めて行きます。不覚にもこの写真を撮られたこと自体、私自身全く気付いていませんでした。
そうこうしているうちに時間がきていよいよドライバーチェンジです。
一人は皆の為に。皆は一人の為に・・・。
まさにそういった感じです。仲間が私にこのままで行くか、セットを変えるか確認します。私は考えた末、リアのみ減衰力を変更してくれるように頼みます。
私が2人のサポートで乗り込んでいる間に、もう1人がリアダンパーの減衰力を変更します。それぞれが今、自分達がするべき仕事をこなして行きます。
果たして皆のコメントのみでセッティングを変更したことが、吉とでるか凶とでるか。皆のアドバイスを信じてセッティングを変更。
この写真も撮られていたことに全く気付いていません。
ステアリングを握り、セッティングの変更を待ちます。状況は厳しいものですが、自分の為に、そして皆の為に・・・あとは目の前のマシンをひたすら抜き続けるだけです。
皆が私を気遣って言葉を掛けてくれます。
とても嬉しく、緊張感があり、温かく・・・。人にとってはただのサンデーレースでしかありません。しかし今の私は、人・時間・マシン・その他全ての事が大切。
色々な思いが自分の中にこみ上げてきていました。
しかしここからは一人の戦い。余計な感情をかなぐり捨て、ただ皆の期待を裏切らない様に臨戦態勢に入ります。
さぁ、出陣です!
泣いても笑っても、これが本番です。
ピットロードへと進み、コースへと向かいます。
出て行った途端に接近戦が繰り広げられます。ラップタイムが3秒違くても、要所要所を押さえて最大限レースを演じます。
抑えきれないマシンも居ますが、そのなかでもとにかく前にいるマシンを抜くことだけに専念します。
ドライビングを確認をしながら、ペースを上げて行きます。順位が低いためにサーキットのサイトでは取り上げられていませんが、要所で観戦者も楽しめたのではと思います。
今回カメラマンを務めてくださったnabeさん、お疲れ様でした。
他の方とラインの違う走り方で、写真撮影で苦労なされていたようです。
私自身とくに意識しているわけではないのですが、どうしてもコンディションがそうさせるもので・・・(笑)
そんな苦労のなかでもキッチリ画像を残してくれたこと、心から感謝申し上げます。
また、同じく画像提供して下さったEP91のOさん。雨の中、わざわざ観に来て頂いてありがとうございました。
今、私達の第一歩がここに初めて印されました。
結果こそ低迷してしまいましたが、状況を考えると最高の成果を得られたと思います。レインコンディションでのマシンの挙動、耐久レースで必要になる事、全て初めての経験です。
走り終えた私を温かく迎えてくれた皆さん。本当にありがとうございました。長年のブランクは埋め難く、なかなか思うような結果にはなりませんでしたが、皆さんと一丸となって戦えた事は私にとって、そしてチーム全体にとっても非常に有意義なものになりました。
いつの日かこのカーNo.1を実現させられるようなチームになりたいと思います。
少ない予算で、限られた時間で、皆の環境の合間をぬって何処まで出来るか。温かい目で見守って下さい。






レースを終えて、表彰式、そしてレースの片付けを終え、工場に戻った私達は、言葉も無くただレースの余韻を噛み締めていました。そんな私達の中から誰からともなく次戦にたいする話が出てきたのは自然でした。「次は茂木だ!」その言葉は私達全員の心に強く響き渡りました。今回のレースを終えて、やっと一つになれたのだと思います。やはり私達はレーサー。走ることでお互いを認め合い確かめ合い、生きて行くのだと思います。その次元は多種多様ではありますが、そんな皆が一つになって楽しめる。そんなチームになれたらと思います。
全てを終えた私達は、いつでも会えるにも関わらず、別れるのが名残惜しく、皆が無口にただただ余韻が心の中に響いています。
レースで頂いた商品を皆で分けて、帰路についた私は仲間の車と途中まで一緒に帰り、やがて自宅に到着。

その晩、私は賞品でもらったカップラーメンを食べて、また明日から始まる日常へと備え、次戦の為に仕事仕事の日々が始まります。
世界で一番旨いカップラーメンが、私の心と疲れた体を優しく温めてくれるのを噛み締めながら・・・。



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