■続・窒素ガス充填、本当に違う?

A.物性ではなく、水分を含まないガスを充填するということに意味があるのかもしれません。
タイアを組み付ける時に、ビード部分を濡らしている場合があります。最近はワックスを使うのが主ではありますが、まだまだこういったお店も有ります。
これは組み付け時にタイアを痛めない為の配慮なのです。ここで取り上げるのは・・・

1.タイア内にある水滴
2.何故、経時低下が少ないのか?

についてです。
タイア内に有る液体の水と水蒸気とは気液平衡状態にあります。冷間時に水滴であった水は内部ガス温度の上昇により蒸発し、気体のモル数が増します。
水滴はモル数が大きいので、僅かであっても内圧が上昇し、硬い乗り心地になります。
モル数の意味に付いては一番下に記述しています。

そうすると、窒素充填の意義はその物性ではなく、水分を含まないガスを充填するということに意味があるのかもしれませんね。
何故そう言えるのか?というと、ある学者がこの様な実験をしました。

1.エアコンプレッサから空気を入れたタイア
2.ボンベ入りの窒素を入れたタイア
3.ボンベ入りの純空気を入れたタイア

この3種類を試したのですが、実際2と3とでは「全く有意差が認められなかった」と言っていました。
つまり、タイアの中に水分が有るといえども、冷間時に水滴ではなく水蒸気のみならば、全く問題は無いので通常のエアコンプレッサで作る圧縮空気でも大丈夫です。
ただ単純に空気を入れるというのではなく、水滴を排除する為に3〜4回ばかり空気を抜いては入れる事を繰り返せば、窒素充填と同等の乗り心地が得られる事になります。
もちろんタンク内にも水分は存在しますが、タイア内と同じく液体と水蒸気とは気液平衡状態にあり、飽和水蒸気圧は温度の関数で、全圧が変わっても変化しません。
全圧を10気圧とすれば、その空気内に含まれる水蒸気量は大体10分の1になっているので、そのタンク上部(通常はタンク上部から充填されます)から充填すれば、含有水蒸気量が10分の1になった空気がタイアに入る事になるのです。なので、何回か繰り返すと純空気に近い空気を充填する事が出来る訳です。

そして最後に、内圧の経時低下について・・・
何故窒素は空気に比べて経時低下がすくないのか?その理由は分子直径(分子の大きさ)の違いによるものです。
一般人の私達には想像を超えた単位ですが、酸素:3.64オングストロームに対して、窒素:3.78オングストロームと窒素分子の方が若干大きい事が伺えると思います。
また、ある会社の実験によると、ゴムに対する透過性(透過速度)は、窒素は空気の1/3でした。それ故に、幾分かタイア圧の経時低下が窒素の方が少ないのはうなずけますね。
しかし考えて見て下さい。それにしても空気を充填しておいても抜けて行くのは酸素の方が多い事になるのですから、長い目で見れば空気を入れ続けても、中身は順次窒素単体へと近づいて行く事になるでしょう。
まぁこれは、ほんの少しの事ですから、大げさですけどね(笑)

※因みに”モル数”とは簡単に言えば、物質量の単位です。
原子の数は、実際人間が計る事が難しい(出来ない?)ので、ある原子量を比較的正確に測定できる大きさの質量の物質量を単位とした物です。




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