■窒素ガス充填、本当に違う?

A.有意差が有るとは言えないでしょう。
最近巷で噂の”タイアへの窒素ガス充填”ですが、一般的に皆さんへは以下の様な情報が流れているのではないでしょうか?

1.乗り心地が良くなる。
2.内圧(空気圧とは呼べない)の経時低下が少ない。

などと言う人がいます。また逆にそんな効果は全然ないという人もいます。
上記の様な事を挙げる方々の理由としては・・・

1.窒素は空気と違い熱膨張が無い。だから内圧変化も無く安定している。

など、この様な事が言われていますが、ここで断言します・・・”その認識は誤りです。”
業者はその様な広告や記事などを避けなければならないでしょう。
「本当にぃ!?」と言う方の為に、まず物性として窒素と空気とで差が有るのかどうかをおさえておきましょう。
難しい話は物理学&熱力学などの領域に入ってしまうので解りやすく説明しましょう。

ガスの温度が上がれば、タイアの中という状況では内容積の変化はほとんど無視できますので、内圧はほぼリニアに変化する事になるでしょう。
したがって内圧の上昇によって乗り心地は硬くなります。もし窒素の比熱が空気よりも大幅に大きいのであれば、温度上昇は小さく、内圧の変化も少ないでしょう。
しかし・・・計算式は抜きにして、空気の”定容モル比熱(Cv)”と呼ばれる数値は20.796 kJ/(kmol*K)で有るのに対して、窒素のそれは20.791 kJ/(kmol*K)となり、その数値(比熱)の差はほとんど有りません。そして何より、空気の成分はおおまかに【窒素:78・酸素:21・アルゴン:1】で、窒素の割合が大半を占め、物性値も窒素と空気とでは大きく変わる事はないのです。もちろん学術的に見ても比熱は無限ではなく有限の値になるので「窒素には熱膨張が無い!」等と言う事は有り得ないのです。

今、タイアが突起を通過する状況を考え、タイアに対して一定の仕事を与えたとします。
この時、内部ガスは熱力学に従うとすると、比熱比が小さい方が内圧と内容積の変化が小さく有利です。
そしてその数値は・・・空気が1,402に対して、窒素は1,398になります。この様に差こそあれ、ソレは1%と言う世界ですので、お金を掛けて窒素を充填する程の有意差が有るとは言えないでしょう。




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