大岡春卜 石蕗(つわぶき)に兎図  1幅  絹本著色 江戸時代


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       大岡春卜(1680〜1763)は、江戸時代中期の大坂で活躍した画家。狩野派の画法を習得し、古今の名画を掲載する数多くの画本類を出版したことで知られる。特に『明朝紫硯』は、明代の著名な画譜である『芥子園画伝』の内容を合羽摺で模した彩色画本として知られる。
 また、大坂やその周辺で数多くの画作を行い、この地域には、その遺品も多い。大坂を代表する蒐集家、文人、博物学者として知られる木村蒹葭堂の最初の画の師といわれる。
 享保3年(1729)法橋、同20年法眼に叙せられた。

 なお、本図には「法眼春卜一翁筆(朱文方印「乙卯法眼」)(白文方印「藤愛菫印」)」の落款印章があり、春卜法眼叙任後の作であることがわかる。
 石蕗の蔭から飛び出してきた白い兎に茶色の兎がのけ反って転ぶ様子を描く。
 白兎は体の周囲に淡墨を塗る外隈で表し、要所に薄く白の隈取を施して立体感を表現する。躍動感ある肢体の描写が印象的。
茶色の兎は、のけ反るように横転する姿がユーモラスである。「鳥獣人物戯画(甲巻)」の蛙に投げ飛ばされる兎を想い起こさせる。
石蕗の花や葉は微妙に色調を変えながら花弁の筋や葉脈を描く。緻密とはいえないが、『明朝紫硯』などの制作で学んだ明の花鳥画の表現を取り入れたものか。

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