二十四孝図 二曲屏風 紙本金地著色 桃山時代
中国の孝行譚を集成した二十四孝のうち2人の孝子の行状を描く。
 画面向かって右上には蔡順。蔡順が桑の実を熟したものと熟していないものに分け、熟したものを母に奉じようとしていたところ、盗賊に捕まった。蔡順が何をしていたかを問うた盗賊は、その孝心に免じ蔡順を解き放ち、逆に食べ物を与えた。
 一方、画面向かって左側には老莱子を描く。老莱子は、70歳を過ぎても年老いた両親の前では幼児のようにふざけて遊ぶような振る舞いを続け、両親に自らの、そして両親自身の老齢を悟られないようにしたという。
 上質な金箔を押した金雲、金地に、発色の良い緑青、群青、朱、金泥などを彩る典型的な桃山時代の金壁障屏画の作品であり、人物、樹木、岩などの表現は、当時の狩野派の様式を示す。ただ、画面の左右の図柄は繋がらず、所々に襖の引戸の跡が見えることから、襖絵の一部を二曲屏風に装丁し直したものであることは明らかである。人物の彩色に剥落が多いなど、当初の姿を留めない部分が散見される。
 狩野派の二十四孝図は、室町時代末期の狩野元信周辺の作品が存在し、古くから数多く描かれた画題であることが知られている。桃山時代には、狩野永徳の作と目される「二十四孝図」(南禅寺本坊障壁画)、などが知られている。本図の人物の鼻梁を大きく描く容貌や、抑揚のあるW字を繰り返す表現、踊る老莱子の図様などは、この南禅寺本の作風に類するところもあるが、南禅寺本に較べ人物の肢体が短躯であること、表情に親しみのある諧謔性が認められること、樹木や岩の表現が異なることなどから永徳の様式を学んだ桃山時代狩野派の作品であると思われる。
 人物の着衣などの彩色が剥落した部分には、色注(彩色すべき色を注記した文字)が多数見え、狩野派の共同制作の実態を知るための手掛かりとしても貴重視される。
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