住吉広行 源氏物語紅葉賀図 1幅  絹本著色 江戸時代

 住吉広行(1755〜1811)は、江戸幕府御用絵師を歴代勤めた住吉家の5代目。実父は、住吉家に学んだ画家でやはり幕府に仕えた板谷慶舟広当で、住吉家4代の住吉広守の養子となった。住吉派の歴代画家同様、伝統的なやまと絵の領域において幕府の御用絵師としての画事をこなし、寛政度の内裏造営においては、紫宸殿の「賢聖障子絵」制作に従事した。その一方、寛政の改革を実施した老中松平定信の命で、柴野栗山とともに、山城、大和の古社寺所蔵の宝物を調査し、その成果を『寺社宝物展閲目録』にまとめた。
 『源氏物語』「紅葉賀」帖における朱雀院五十賀の際の光源氏・頭中将による「青海波」の舞の場面。「紅葉賀」の代表的な場面で、この場面を描いた作例は多いが、本図では、光源氏が舞の最中、風で冠につけた紅葉の葉が飛ばされたのを見た左大将が、代わりに菊の枝を差し出している。この場面を、左大将が菊を差し出す形で描くのは、住吉如慶以来の住吉派の作品に、しばしばみられるものである。
 人物の容貌、着衣の文様などにおける細筆を駆使した緻密な描写をご確認いただきたい。

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