住吉弘貫 源氏物語夕顔図 1幅  絹本著色 江戸時代 
  『源氏物語』「夕顔」帖冒頭の場面を描く。
 六条に住む自らの乳母大貮乳母の病を見舞いにを訪ねる光源氏、その隣家のみすぼらしい家の檜垣に夕顔が咲くのを見つけ、随身の者に取ってくるように命じた。随身が一枝手折るとその家の玄関に女童が現れ、随身に、花を乗せるようにと香をたきしめた白い扇を差し出した。家の半蔀にかかる御簾越しに、この家に住む女たちがその様子を見遣る。
 古来源氏絵ではよく描かれる場面であるが、多くは女童が差し出した扇に夕顔の花を乗せた瞬間を描いたものであるのに対し、その直前の扇を差し出す瞬間を描くものは少ない。なお、随身は左半身を正面に描くだけであり、夕顔の花を手折った前か後かは、画面からは判断できない。
 住吉弘貫(1793〜1862)は、江戸幕府のやまと絵系の御用絵師として活躍した住吉家の7代目。初め広定、弘定、その後弘貫と名を改めた。 本図には、住吉広定の落款があり、弘貫の作品の中でも比較的早い時期のものと思われる。
部分1   部分2   部分3   部分4   落款・印章

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