住吉弘貫 井手左大臣図 1幅 絹本著色 江戸時代 *画像・テキスト等の複製引用は固くお断りします。 |
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住吉弘貫(1793〜1862)は、江戸幕府のやまと絵系の御用絵師として活躍した住吉家の7代目。初め広定、弘定、その後弘貫と名を改めた。 本図には、住吉広定の落款があり、弘貫の作品の中でも比較的早い時期のものと思われる。 |
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井手左大臣とは、奈良時代の朝廷において権勢をふるった橘諸兄のこと。諸兄は、南山城の井手に広大な別荘を持ち、そこに流れる玉川の岸辺に山吹をびっしりと植えさせた。 | |
平安時代末期の歌人藤原俊成は、「駒とめて なほ水かはむ 山吹の はなの露そふ 井手の玉川」(『新古今和歌集』)という和歌を詠み、井手の玉川は、六玉川(全国の六ヶ所の玉川)のひとつとなった。 江戸時代には、騎馬の俊成が山吹の花咲く井手の玉川で、馬に水を飼わせる情景を描いた絵画作品が数多く制作された。 |
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山吹の花は、胡粉盛り上げの上に黄色を塗るものが多いが、満開を過ぎた花は、胡粉盛り上げにせず、黄色のみで大きく描く。小さな葉のひとつひとつに濃緑、淡緑の顔料を用いる細やかな表現をとる。岩肌を彩る良質な緑青の発色が美しい。 |