板谷慶舟広当 藤原定家観桜図・藤原家隆観雁図 2幅  絹本著色 江戸時代 
     板谷慶舟広当(1729〜82)は、やまと絵系の絵師として歴代幕府御用を務めた住吉家4代(初めて幕府御用絵師となった住吉具慶からは3代目〉住吉広守門下の画家。安永2年(1773)幕府御用絵師となり、同6年(1777)広守が嗣子なく没すると、住吉姓を継ぎ師の地位を継承した。天明元年(1781)、住吉家を長子に継がせ、自らは板谷姓に復するとともに、翌2年幕府から改めて召し出されたことで、板谷家も住吉家と並ぶ幕府御用絵師の家となった。
 左幅(向かって右幅)には山から吹き降りる桜吹雪を、右幅(向かって左幅)にはやはり山から風に乗って飛来する雁の群れを、それぞれ貴人が眺める様子を描く。左幅は藤原定家の「さくら色の 庭のはる風 あともなし とはゝそ人の 雪とたにみん」、右幅は藤原家隆の「秋風の 袖にふきまく 峯の雲を つはさにかけて 雁もなくなり」といういずれも『新古今和歌集』に所収される和歌を題材にした作品と思われる。
 人物の俗臭のある顔貌表現は具慶以来の住吉派の伝統であるが、立体感を表現する隈取りの正確さ、緻密な毛描きや着衣の文様の描写などは、広当の高水準な描写力を伝える。
 
部分1  部分2  部分3  落款・印章    部分1  部分2  部分3  落款・印章 

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