岸駒 龍山落帽図  1幅  絹本著色 江戸時代


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 岸駒(1749〜1838)は、越中または加賀金沢出身の画家。京に出て有栖川宮に仕え、沈南蘋や円山応挙の写生画風などを学び一家を成した。震えるような荒々しい描線と劇的な諸モチーフの表現を特徴とし、特に虎の描写に優れたことで知られている。
 多くの門弟を輩出し、江戸後期から明治期の京都における有力な画派のひとつであった岸派の祖となった。
 「龍山落帽」とは、中国の晋の時代、龍山で開かれた重陽の酒宴に招かれた孟嘉が風で帽子を飛ばされたにも関わらず、平然と酒を飲み続けたという故事。中国では、人前で帽子をとることは極めて恥ずかしいこととされていたため、この席を囲んだ者たちは、孟嘉を嘲る詩を作ったが、孟嘉は機知をもってこれに返した。

 帽子が脱げた孟嘉を周りの者たちがじろじろと見、卓に背を向けて彼を嘲る詩を作る者も描かれるが、孟嘉は平然と盃を傾ける。
 飛び去った帽子を追いかける童子。煽られるように彼方に飛び去っていく帽子が風の強さを示している。
 本図は摂津池田の旧家で、江戸時代以来蔵幅家として知られた稲束家の旧蔵品。昭和9年の同家売立目録に本図は掲載されている。

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