TOPページへ
 ダアさんのバド?な駄文(ダブ)

  小さな花が道端に  言の葉  海・たそがれ  水槽  ポッカリと  押し葉    思うこと バド?な日々  教えて下さい
  分かれ道  笑顔  エース  修行僧  朝の電話  ゴミ  かえる石伝説  母からの電話  秘密の場所  いちご


 寮に暮らしたダブ
   26才まで暮らした寮生活はまあ楽しかった、けれど次第に心が乾いていった・・・

  あゝ嫌だ    私は私の生活を  私はもう何時間もまえから  私の心の奥底に 
  なまめかしい月の光をあびて屋根の上で泣いているのは猫なんかじゃない
  言葉を吐いたあとの虚しさを君に伝えることは出来ない
  日記から  四つ葉のクローバー  君は5月の風に乗って  高所恐怖症  日本海が見たくなってkinjiと自転車で出かけた

 17歳のダブ
 
  机の奥から茶色に変色した古びたノートが出てきた・・・
  公園  無題  まなこを閉じ  なぜ?という言葉  童話の心  後輩  君には君の幸せが  初恋?







「小さな花が道端に」


小さな花が道端に
咲いていたのは夢なのか

信号待ちの交差点
風を切る自転車
そぞろ歩いた街の中
いつだったのか
どこだったのか
ありきたりの景色の中
移す視線にふと目に留まり
戻す視線で見失っていた

小さな不思議に見返しても
二度と目には映らない
時の狭間の小さな花は
だから気にも留まらず消えていた

忘れてしまった花なのに
心の中によみがえり
いつしかじっと見つめている
いつだったのか
どこだったのか
思い出せない景色の中で
小さな花が咲いている

小さな花が道端に
咲いていたのは夢だったのか

                                 もくじへ








「言の葉」
・・・友人Kの言葉を継いで

言の葉を吐くたびに 私の心は 空っぽになっていく
父として 男として 何よりも ひとりの人間として
愛し 喜び 憤り… 心を大切に生きてきた

想いを口にするたびに 人を愛するそのたびに
私の中で何かが崩れ そして 失われていく
それでも思わず口にする 愛したいが為に

吐いてしまった言の葉は やがて古びた文字となる
込めた思いと別になり 虚しくフレーズだけが残る
そしてあなたは 何も変わらず 今日を生きる

さまよう心で 新しい言の葉を探してみる
悲しみや怒りが 乾いた文字となり 脳裏を駆け巡る

本当は 本当は あなたを愛していたいのに…

                                 もくじへ








「海・たそがれ」


夕暮れの海が見たくなり ひとり居る
どこまでも続く砂浜 遠くにかすむ釣りの人
波打ち際に群れるチドリ… 波と遊ぶ子らのよう
夏の名残り 若者たちの季節は去ってしまった

いつしか消えた釣り人 もう誰もいない
ふと不安を覚え声の限りに叫んでみる 何度も何度も
自分の声が外から聞こえる 不思議な感触
光を失って行く浜辺 ゆがんだ月が浮いている

波頭が白く浮かぶ 見渡す先はどこも無限
吹く風に心を預ける 波の音しか聞こえない
月光に横たわる骸 ひとつの舞台の終焉のよう
そして私を離れた意思が 私自身を俯瞰する

何もかも心も脱ぎ捨て波に立つ もう何も怖くない
寄せ来る波は永久の営み 今を過ぎ行き砕けて終える
このまま時に流されて 波打ち際に果てるのか…
沖へ向かって 漆黒の未来へ向かって歩き出す
一歩また一歩…

                                 もくじへ








「水槽」


青白く浮かび上がる世界に 心奪われる
いつしか外音さえ遠のく 小さな部屋
じっと息を潜め 水の世界に同化していく
水から生まれた祖先の 遠い記憶なのか
何故にこうまで 心惹かれる

切り取られた空間に 悲しみを見た
悠久の自然に生まれ 静かに死んでいく
太古から繰り返された 生きるものの摂理
まがいものの自然に 何が出来る
何のため 誰のために閉じ込める

小さなこの部屋は それでも私を離さない
静かに息づく水の世界が いざない招く
空間を隔てる壁が やがて消え失せ
変わらぬ定めの私が 彼らと共にいる
切り取られた水槽の悲しみは 私の中に繋がる

                                 もくじへ








「ポッカリと」


目の前のコートが ポッカリと空いている
遠巻きにコートを埋めている選手たち
コートひとつの隔たりに 遥かな距離を感じる
怒られるのが嫌で 遠くに行ってしまいました
選手の言葉に 罵声を浴びせ続けた日々を思う
もっと優しく教えて下さい 遠慮がちに訴える

 新チームになって3ヶ月 何かすれ違う日々だった
 夏に昇り詰めた思いに その姿はあまりに稚拙
 毎年繰り返すリセットが いつしか億劫に
 降りて行くことを怠り 高い場所から見てしまう
 心が重なり合わない不機嫌 見通せる遥かな道のり
 これではいけない 思いながらもつい怒鳴っている

やっと見つけた糸口 ポッカリと空いたコート
君が大人になって、何かスポーツを教えているとしよう
 ひとり一人と話してみる 真っ直ぐな瞳が帰ってくる
 裸の心で見つめあう そんなことさえ無かったのか
いくら言っても出来なかったとしたら 君はどうする?
怒ります 強くなって欲しいからです
怒ることに 憎しみと愛情とどちらを感じる?
愛情です
誰もが 同じ言葉を口にする

怒鳴りつけることで 意識改革をさせているのだ
そんな勝手な自己弁護 重ねる年輪への倦怠感
それでも 彼らは付いて来てくれた
ありがとう信じてくれて 変わるべきはこの私だったのに

                                 もくじへ








「押し葉」


古いノートを めくっていたら
セピア色の クローバーがあった
四つ葉じゃなくて 五つ葉
こざかしかった自分らしくて 可笑しい
どこで摘んだか 忘れたけれど
恐いもの知らずのあの頃が ふと蘇る

いつしか 遠くを見ていた
けだるさに 心が流されそう
息苦しさに 視線を振りきり
そっと クローバーを戻す
ノートを閉じ 小さく息を吐くと
まぎれもない今の自分が そこにいた

                                 もくじへ








「海」


海が見たい
お前はいつも言っていた

タイムサービスの総菜を ぎりぎりまでねばって買ったよ
揃いのTシャツが欲しくって バーゲンを回ったよ
いつものそんなおしゃべりに フンフンとうなずく僕だった
いつしか二人暮らすようになった小さな部屋
道具が無いことさえが 幸せなのだと思えた

雨が降った休みの日 肩を抱いて二人黙っていた
ガラス窓を叩く風が なにかをささやいていく
いつまでも こうしていられたらいいのに
でも 何かが少しずつ変わっていった

遠くを見つめる目つきに ふと 不安を覚え
どうしたの? 無理に笑って聞いてみる
ううん なんでもないの・・・ 戻った視線でそう答えてくれた

お前と別れて 3度目の夏
果たせなかった約束の海辺で今 一人水平線を見つめている

海が見たい
お前はいつも そう言っていた

                                 もくじへ





 
「思うこと」


勝たせてあげたいは愛すること 愛する努力 愛される努力
楽しくなければ上手になれない 楽しいだけでは強くなれない
コートを離れてもなお すべてに心するものに 女神はほほえむ
ときに涙するひたむきさ その涙のなんと美しいことよ
大会に舞う子らのまぶしさはどうだ 喜びと少しの淋しさと

そして何よりも大切なこと かがやく瞳あふれる笑顔。

                                 もくじへ







「バド?な日々」
        

(表)
熱き血潮よ
見果てぬ夢よ
臨むコートに
高鳴る鼓動
無為な一日(ひとひ)を過ごすまい
楽すりゃ女神がそっぽ向く

(裏)
遊んで暮らそよ
短い人生
のんべんだらりん
楽しきゃサイコー!
夢想は捨てまひょ捨てましょよ
羅漢は羅漢 俺は俺

*アクロスティックになっています。

                                 もくじへ







「教えて下さい」


教えて下さい! 教えて下さい! 泣きながらすり寄ってくる。
もう30分も相手をしたんだよ。出来ないものはどうしようもないじゃないか。
あまりのヘタさに怒る気にもなれない。これで少しは分かっただろうに。
おまえだけを相手するわけにはいかないだろ。ほかのやつと代われよ。
教えて下さい! 教えて下さい! 涙で、ただただ繰り返す。
いいかげんにしろ! ムッとしてラケットを振り上げる。よけようともしない。
こいつを何とかしろ! 周りに怒鳴りちらす。とまどいが帰ってくる。

邪魔をするのなら俺は帰るぞ! 泣きながら追いかけてくる。
先回りして運動靴を抱きしめる。帰らないで下さい! 教えて下さい!
振り切ってサドルにまたがる。荷台にしがみつく。
涙で、何か言っている。何だよ! 振り向いて問いただす。
僕はいいから他の子に教えてやって下さい・・・何度目かに、そう聞き取れた。

 ゲーム練習で兆候を見つけ、基礎に戻った4番集めのオールショート。
 相手の意識をネットに置いてフォア奥へ押し込んでやる。案の定、繰り返すノータッチ。
 何度も何度も言って来たのに、フットワークが理解できていない。理解しようとしない。
 いくらあがいてもシャトルに届かない。誰もが難なくこなせる練習なのに。
 静かにシャトルを送り続ける。惨めさに顔がゆがんでくる。泣きながらの繰り返し。
 もういいだろう? 頃合いをみて、そう言ったのだった・・・

戻ったコートで練習を続ける。横目で見やると落ち着きを取り戻している。
コートに背を向け、相手をして欲しいやつは来いと言ってみる。
いつもなら飛んでくる選手達に躊躇がみえる。誰も動こうとしない。
気配に振り向くと、悪びれる様子もなく再びコートに立っている。
お願いします! 叫ぶ顔は険しさが消え、謙虚が浮かんでいる。

雰囲気がそうさせたのかも知れない。仕向けに乗っただけかも知れない。
だがそこに、コートに送り込もうとする仲間達の心が見えた。

                                 もくじへ







「分かれ道」


久しぶりに手にした本を読み返すと
あの頃と違った景色が見えてくる
自分しか見えず他人を傷つけてしまったあの頃
少しでもそれが見えていたら
あの無邪気な別れは無かったかも知れない

久しぶりに訪れた街を歩くと
あの頃と違った息遣いが聞こえてくる
傷つくことを恐れ耳を塞いでしまったあの頃
少しでもそれが聞こえていたら
この街から逃げ出すことは無かったかも知れない

こうして立ち止まり振り返えってみると
幾つもの分かれ道を辿ってきた自分に出会う
幾つものあの時もし別の道に進んでいたら
今の自分はいったい何処にいるのだろう

何気なく歩いているこの道も
あの角を向こうに曲がっていたら別にいる
僕は違った街を眺め違った人と出会っている
出会いとは何と気ままでふとしたものなのだろう

幾つもの分かれ道を辿ってきた僕と
幾つもの分かれ道を辿ってきた君が
今こうしてここにいる
そのことに僕は不思議を覚えてならない

                                 もくじへ








「笑顔」


中学生と
バドミントンを始めた頃は何も分からず、分からないから楽しかった。
小さな「わからない」の解決にさえ、通じ合える喜びがあった。
経験はそれなりのノウハウをもたらすが、新たな苦しみも生み出す。

希望に満ちた出会いは変わらない。いつだって選手の瞳は輝いている。
変わってしまったのは、季節を繰り返した私の心。選手の心と重なり合えない。
いつしか新鮮を失い、その歩みにもどかしさを感じてしまう。
「面倒くさいなあ」思わず口にしている。何で言う通りに出来ないんだ。

苛立ちを、些細なことで選手に向けてしまう。激しく罵倒し、追いつめてしまう。
追いつめて、揺さぶって、見つめさせているのだ。そんな勝手な自己弁護。
怒鳴ってしまうのは、己の不機嫌さゆえ、未熟さゆえなのに。

よい方向に変わってくれる。信じてはいるが、
万が一でも選手が拒み、信頼が去ってしまえば・・・
きっと楽になれる。そう考えたりもする。本当は恐れているのに。

 傷つけてしまったことで、大切を確認し
 苦しめてしまった負い目を手がかりに、新たな絆を探っていく・・・
 信じてくれる純粋につけこんで、追いつめてしまい
 どう転ぶか分からない結末に、行く末を賭けてしまう・・・
 そんなことをいつまでも繰り返している。

いつも笑顔を絶やさずに、共に歩んでいく・・・
それは出来ないことなのか。
分からないことが、まだ山ほどあるではないか・・・

                                 もくじへ







「エース」


お前が帰らないのなら俺が帰る!
何度も繰り返す些細なミスに怒りが弾ける

 お前の様なドジは帰ってしまえ!
 いくら怒鳴ってもコートを離れない
 こんなヘボなエースがどこにいる
 何をすれば上手くなると言うんだ

先回りして椅子に置いた上着を抱きしめる
返せよ俺のだ!
ダメです!帰らないで下さい!
ふざけるな!お前とはやってられないんだよ!
お願いです!教えて下さい!
片隅の緊張が凍りついた体育館を支配する

こいつがこんな行動をするのか
思わず顔を見つめる
きれいな目をしている
口にしてしまった怒りがたじろぐ
本当に必死だったのだろう怒りの変調に安堵を見せる
安堵が必死をゆるませ瞳をうるませる
流れる涙の温かさが凍った空気を融かしていく

もどれ
小さくつぶやく
ハイッ!
何事も無かったかのように練習が動き出す

真っ直ぐな心が未熟な私を救ってくれる

                                 もくじへ








「修行僧」


自由に振る舞っている選手がいる
普段を持ち込んでいる選手がいる
それが今の世の趨勢だというのなら
私達の試みは滅んでしまう過去なのか

正義の意味を教えてやれない世の中だから
だから信じることに立ち向かう勇士でありたい
愛することさえ忘れてしまった世の中だから
だから抱き合い励まし合える仲間でありたい
生きるよすがを見失ってしまった世の中だから
だから汗をいとわず笑顔で生きる心を持ちたい

混沌を切り取った私達の営みは
人知の及ぶ小さな宇宙
遊び 叫び 泣き 笑い
どうか人として大きく育って欲しい

そして選手は小さな修行僧
自由な振る舞いは
普段の持ち込みは
ここでは似合わない

                                 もくじへ







「朝の電話」


昨夜(きのう)から40度の熱が出て…
携帯電話の向こうにしおれたパジャマ顔が見える

 来ても来なくてもどうでもいいやって思われたら嬉しい?
 首を横に振る
 来るか来ないか分からないというのも寂しいものだよ

 まだお母さんに電話して貰ってるんだ
 休む時でも声だけは聞きたいな
 子供だから自分で電話を掛けられないんだろ

そう仕向けてはいるのだけれど
なにもそんな時まで自分でダイヤルしなくても…
と思う

早く治ってね
携帯電話のボタンを押す
ダンボ耳だった選手たちが寄って来る

電話をしてくる心
仲間を気づかう心
そんな心たちが嬉しい

                                 もくじへ







「ゴミ」


最近ゴミを捨てられなくなっちゃった
選手達の輪からそんな声が漏れてくる

使わせて貰っている体育館の鍵を開けるのは私の役目
学校の許しで夜の練習に備え軽い腹ごしらえ
食べ終わった包装紙を握りしめ私を待っている

そう言えば
ふらりと立ち寄った青森駅で
ガムの紙を捨てた若者のあまりの自然さに驚いた
そんな話しをしたことがあったっけ
そう言えば
リフレッシュ休暇の韓国で
キムチの美味さよりもゴミが無い街角に感心した
そんな話しをしたことがあったっけ

何も言ってはいないのに
この感受性の美しさはどうだろう
練習を用意する姿が少しだけ大きく見えた

                                 もくじへ







「“かえる石”伝説」


ボクの庭にはその昔
池がいくつもいくつもあってね
蛙たちがボクの庭に暮らすようになったよ

冬眠に触わってしまい驚いたこともあるよ
春になると起きてきていくつもいくつも卵を産んだんだ
愛をささやく声もボクは知ってるよ
コココ…

けれども
時がボクの庭から住みかを奪ってしまったよ
池は埋められ花畑になってしまった

それでも
春になると現れてもう無い水に向かうのさ
でも愛をささやく声は聞かれない
(コココ…)

それでね
飛び込めなかった蛙がいつまでも水を待ち続けて
いつしかこの石になってしまったと言うことだよ

悲しい悲しい“かえる石”伝説さ

                                 もくじへ







「母からの電話」


元気-ぃ?
酩酊を起こされ耳にした受話器から
いつもの母の声が飛び込んでくる

阿見に移って30年
めったにかけない電話を
居合わせた母が手にしたそんな時
老いた母に特に用事がある訳もなく
年に1度も帰らないそんな私を気づかって
代わってくれた電話口

元気-ぃ?
ウン!元気だよ!
母と私のたったそれだけの会話

元気-ぃ?
いつの間にか自分のフレーズになっていて
ふと気がつくとそこかしこで口にしている
そんな自分に母を感じる

朝 聞くと電話など無かったと言う
おかしいな確かに話したんだけど
昨夜はちょっと飲み過ぎたかな

そう言えば
母が死んでもう半年になろうとしている

                                 もくじへ







「秘密の場所」


ボクの町に小さな飛行場があるよ
脇をすり抜け
下りた坂道の向こうに
ボク達の秘密の場所があるんだよ

水を飛び越え
草をくぐり抜け
緑の中にポカリとあいた
川のほとりが
ボク達の秘密の場所なんだ

ある朝ボクはウサギさんに会ったよ
茶色いコートを着て眼鏡をかけた
気むずかしそうなおじいさんだったよ
ボクが近づくと
時計を取り出してつぶやいたんだ
しまった!すっかり寝過ごした
女王さまに叱られる…
そしてまるでボクを無視して行ってしまったよ

でもボクはもうその場所へは行かない
山が削られ大きな道が出来たんだ
車がビュンビュン走り抜け
森の仲間もみんな
どこかへ行ってしまった
大好きだったあの場所も
平らにされてしまって
すっかり乾いてしまった…

                                 もくじへ







「いちご」


うちの庭でとれました
笑顔と共にいちごを差し出す
ヘエーめずらしいネー
なごみとともに心を受け取る

スーパーで買ったいちごと違ってこいつにゃミルクは合いませんぞ
こうしてヘタをひとつにし指でつまんでパクリとほおばる
子供の頃にうちの庭にもいちごが熟れていて
カンケリなんかしていると食べてるあいだに見つかったりしちゃって

小つぶでほこりっぽくて酸味に欠けて
あの時とおんなじ味がする
うまいものがいつでも食べられる
本当に幸せなことなのかと考えてしまう

                                 もくじへ







「あゝ嫌だ」


あゝ嫌だ嫌だ
けだるい幸せに首まですっぽりつかっている
俺は真夏の昼下がりが大嫌いなのに…
頼むからそんな眼で見ないでくれ
俺が今 一番必要なのは
俺が今 本当に欲しいのは

敵意に満ちたまなざし
軽蔑にゆがんだ笑いだ
                                 もくじへ








「瞳」


逃げるようにして飛び乗った夜行列車
ふと降り立った小さな街

灰色にくすんだ駅前広場
バスを待つ老人のあくび
子を連れた女の笑い声
がなりたてる駅前放送(スピーカー)

耳新しい車掌の言葉
あくびを止めない老人
外の景色にはしゃぐ子供
懐かしいタールのにおい

陽に焼けた顔
さして混んでいない車内
静かに微笑む少女
遠い夏の日の思い出

少女にさそわれ降りた街
名産らしい干し魚を売る店
いつしか消えた少女
ほこりっぽい繁華街

小さな喫茶店
古ぼけたソファー
3年前の流行歌(はやりうた)
この街の印象

街はずれの小さな城址(しろあと)
緑に沈んだ堀の水
弁当を広げる子供達
遠すぎる思い出

視線を感じ振り返る街角
夕暮れの雑踏そぞろ歩く人
見知らぬ街の見知らぬ虚空(そら)
見たのは逃れて来たはずのあの瞳

逃げるようにして飛び乗った夜行列車
再び降り立ったボクの街

                                 もくじへ







「私は私の生活を」



目覚まし時計の声に眠い眼をこする
満足に焼けていないトーストをかじり
なまぬるい牛乳を流し込む
昨日と同じバスに乗り
いつもの人と話の続きをする

たまにはカツ丼を奮発し
パチンコでとったハイライトをうまそうに吸う
バレーボールも飽きたからたまにはバドミントンでもしようか

あの女(ひと)とお茶を飲み
なまめかしい月光(ひかり)の中で恋をさゝやき
10時になったら家まで送りキスして別れる
それから
冷たいひとりぽっちの部屋でレッドを飲(や)り
万年布団にごろりと寝ころびあの女(ひと)の夢をみる

私は私のこんな生活をたまらなく嫌悪する

                                 もくじへ







「私はもう何時間も前から」


閉ざされたこの小さな部屋には陽の光さえも遠慮がち
コップのビールはもうとっくに気泡(あわ)をはくのを止め
こはく色の死に顔を見せている
奔放だった煙草の煙も残り少ない生命(いのち)を天井に吸い取られていく
人々のざわめきもこの部屋を訪れはしない

小さなこの部屋はまるで私の存在を無視し
じわじわと凍っていく

私は己のぬくもりにしがみついて
もう何時間も前からじっと息をひそめている

                                 もくじへ








「私の心の奥底に」


私の心の奥底に
いつの日からか冷たく光る
鋭いナイフがあるのです

傷つくことを恐れ私は
人の言葉ややり方に
いつも笑顔でいたのです

疲れることを恐れ私は
人の言葉ややり方を
見て見ぬ振りでいたのです

暗く冷たい一人の部屋で
涙も枯れたさまよう街で
私はそれを見たのです

私の心の奥底に
いつの日からか冷たく光る
鋭いナイフがあるのです

                                 もくじへ







「なまめかしい月の光をあびて屋根の上で泣いているのは猫なんかじゃない」


今でもけだるい風が目のない死体を運んでくるし
まっ赤な空からは人々の血が雨のように降り注ぐ
僕の言葉もすっかり凍ってしまい音になりはしない
だから目を開けて
屋根の上で泣いているやつの正体を見とどけようと思うのだけれど
空は赤いし死体はゴロゴロしているし
ちっとも眠くはないのにお休みなんていいやがる
なまめかしい月の光をあびて屋根の上で泣いているのは猫なんかじゃない

今でもよどんだ流れが目のない死体を浮かべているし
まっ赤な海には人々の血が潮のようにうずまいている
僕の体もすっかり凍ってしまい動くことさえできはしない
だから目を開けて
屋根の上で泣いているやつの息の根を止めてしまおうと思うのだけれど
海は赤いし死体はプカプカしているし
ちっとも眠くはないのにお休みなんていいやがる
なまめかしい月の光をあびて屋根の上で泣いているのは猫なんかじゃない
猫なんかじゃない!

                                 もくじへ







「言葉を吐いたあとの虚しさを君に伝えることは出来ない」


突然の僕の叫びに驚き達が振り返り
片隅の異端に眉をひそめる
引きつった笑いが満ちるのに時間は要らない

違うんだ!
何かが違うんだ!
僕はそう言いたかった
酔った視線もたわいない談笑もその人を素通りしている
ポツリ酒宴の喧噪に取り残され一人静かに微笑んでいる
これではまるで昨日までと同じじゃないか
誰も分かっちゃいないんだ

取り立てて話をしたことがある訳では無いけれど
時に笑いのタネになる真面目人間だったけれど
今夜は中心にいる主役でなければならない
去ることが本意では無いようだけれど
優しさが好きで秘かに慕っていた人だったから
今夜は心にしみる別れでなければならない

そこかしこで勝手達が盛り上がり
最後に一言ご挨拶…
そんなひび割れた別れをいつまで繰り返そうというのだ

いたたまれずに飛び出した僕はただただ悲しかった
浮かぶ街灯がやけに優しく僕には泣くことしか出来なかった
何故に心引かれる人から僕のもとを去って行くのだろう
幾つもの切ない別れが引き出され脳裏に浮かんでくる

友に促され戻った部屋は小さなざわめき達であふれていた
だが離れてしまった僕の心には遠い世界にしか映らない

言葉を吐いたあとの虚しさを君に伝えることは出来ない

                                 もくじへ







「日記から」


(○月○日)
書きたいことのイメージは沢山あるのだけれど言葉となって出てこない。
混沌の中から溢れ出した言葉の切れ端を並び立てて相手を翻弄するという方法を
ぼくは好んで用いるのだけれど、この頃はその混沌がとてつもなくおおきな怪物と
なってしまいぼくの生命にさえ影響を及ぼそうとしている。
頭の中を正さねば、でなければ精神的な廃人への道をたどってしまう。
イメージをひとつひとつの言葉の積み重ねという作業をもって具象化する訓練を
今のぼくは最も必要としている。
天才でもマジシャンでもないただの凡人であることを今こそ思い知らねばならない。
泥にまみれろ、汗をかけ、悟るにはまだ苦労が足りぬ、わかったかYutakaめ!!

(○月○日)
種々のことに考えを巡らすゆとりが若干欠けているようです。
ボクには休養が必要なのかも知れません。
“自然の流れというものは、ちょっと油断するとこつこつと築き上げてきたものを
いとも簡単に押し流してしまう”このことがこうまでボクを追いつめるのだ。
逃げ出したい、逃げ出せない、逃げ出したくない。

                                 もくじへ







「四つ葉のクローバー」


クローバーの
ちいさな葉っぱをプチンとちぎり
そっと唇でぬらし
葉と葉の間にそえて
四つ葉のクローバーだよ!
とボクはいう

君はなんだか大げさに驚いて
とても簡単に騙されてくれる
ふたりとも幸せになれるねって
喜んでくれる

ボクはそんな君がたまらなく好きなんだ

                                 もくじへ






「君は5月の風に乗って」


君は5月の風に手をさしのべて
花たちと飛んでいってしまった
君の瞳は輝き赤いルージュは微笑みかけた

君は5月の青空(そら)に翼をひろげ
小鳥(とり)たちと飛んでいってしまった
君の唇はきらめき赤いルージュはうたいかけた

君は5月の星空(そら)に瞬きながら
星たちと飛んでいってしまった
君の頬に涙がひかり白い星くずとなって流れていった

だから僕も空を飛ぼうと
5月の風に乗ってしまおうと思ったのだけれど
いつまで待っても羽根なんか生えやしない
いつまで待っても空なんか飛べやしない

君は5月の風に乗って
もう僕の手のとどかないところへ
花たちと飛んでいってしまった

                                 もくじへ







「高所恐怖症」


ぼくはある時kojiさんとサイクリングに出かけたのです。
風はすこし冷たかったけれど桜の花のきれいな時でした。
竜ヶ崎を目指したはずが不思議な予感に誘われて
正直というところから横道にそれてしまったのです。
空は明るかったし何処までも続くジャリ道がとても魅力的に見えたのです。
とある山道から通りへ出るときのこと
勢いのついた自転車にぼくはブレーキをかけることができなかったのです。
あっというまに道ばたに迫ってしまったのに
止めることを思いつかなかったのです。
何の疑いもなく空間に乗り出していたのです。
頭から落ちて自分を取り戻したぼくは
その時明らかに空を飛ぼうとしていたのでした。
フワッと体が浮いた時ぼくは本当に羽ばたいてしまったのです。
いつか見た外国映画の若者のように空を飛べると思ってしまったのです。

ぼくは高いところへ行くと自分を失ってしまいそうになる。
空間に魅入られてしまう。
ぼくをかろうじて止まらせるのは
あの映画の若者の無惨な死に様
更には遠く
川崎サイカヤデパート屋上からの飛び降り自殺の印象…

あなたにお願い
もし高いところにたたずんで
飛ぼうとしているぼくを見つけたら
どうか現実の世界に連れ戻してください。

                                 もくじへ







「日本海が見たくなってkinjiと自転車で出かけた」


(土砂降りの中の行軍)

土砂降りの中の行軍
定期便(くるま)がしぶきをあげて追い抜いていく
水を着たサイクラア
通行人(ひと)も定期便(くるま)も周辺(あたり)の景色までもが
二人をあざけり 白い目を向け
冷たい雨が加勢する

ガンバレヨーー
ずぶねれの同志の すれ違いざまの一言
その一言の 何とはげみになったことよ

(日本海を見た)

日本海を見た
弥彦の山頂から見る日本海は
静かで 蒼かった
太平洋から続いている
そんな事実(こと)がウソに思えた

                                 もくじへ







「公園」


馬鹿にするんじゃねえよ!
込み上げてきた怒りが 爆発寸前
何に怒っているのか 自分でも解らない
目の前にあるのは おだやかな情景
人々のほほえみに いつしか苛立っていた

ふと迷い込んだ 知らない公園
水辺を歩く老夫婦 鳩に餌する親子
遠くで子供がはしゃいでいる
やわらかな日差し 描いたような日常
ありきたりの風景が 俺を疎外する

こらえ切れず殴った コンクリの壁
片隅のはずれ者に 気付く人さえいない
誰もが幸せそうで たまらなく嫌だった
暖かい春の日 幸せ色の景色の中
流れる血の赤さだけが 俺の居場所だった

                                 もくじへ







「無題」


無限と無限の間のわずかな一閃が
人生であると言う
けれど・・・
人は無限を知ることができる

                                 もくじへ










「まなこを閉じ」


まなこを閉じ
じっと見つめると
無限の闇の中
ふと浮き上がり
ふと消えていく

気体とも
液体とも
固体ともつかないそれは
私の悩みが見えるのです

                                 もくじへ









「なぜ?という言葉」


確かに私はこの言葉を忘れた
ものを見つめる新しい目を失った
今の私にはこの言葉がない
あるのはただ 妥協のみだ

                                 もくじへ









「童話のこころ」


わたしはこの国の旅行者
童話の国の旅行者
心の中にかすかに残っていた道をたどってきた

わたしはこの国の旅行者
童話の国の旅行者
この国の住民はこどもの心
ひとは誰もこの国に生まれ
この国で遊ぶ
ひとは誰もこの国をすて
大人になっていく

この国を懐かしみ訪れたいと思う時
大人の心にこの国への道はない

                                 もくじへ








「後輩」

後輩に 漠に似たやつがいる
夢を喰うと言う あの動物にだ
実物を見たことは 無いけれど
その姿を 見るたびに
私の夢を 喰いそうに感じて
なんだか 可笑しい

後姿に そっと呼びかけよう
バクちゃん…
本当に夢が喰われそうで やめた

                                 もくじへ







「君には君の幸せが」…退学していく友へ


僕は君を行かせまいと思っていた
何があっても踏み止まらせようと思っていた

君が僕達にそれを知らせに来たとき
けれど僕は何も言えなかった
君の顔にいつもの笑顔がよみがえっていた
だから僕は何も言えなかった

君は君の決めた道を
信じた道を歩いて行けばいい
君を止められなかった僕は
だから少しも後悔していない

                                 もくじへ







「初恋?」


初恋は?って聞かれたら
小学校2年の頃と答えます
もちろん恋なんてもんじゃありません

 彼女と一緒がとても楽しかった
 転校してしまってちょっぴり淋しかった
 ただそれだけです
 いつだったかぼくの家(*)に来たときに
 恥ずかしくて部屋に入れなかった
 それだけのことです
 姉さんと出かけた時に住んでいるという街をジッと見つめた…
 思い出すだけで心がフワリとしてくる
 ただそれだけのことなんです

初恋は?って聞かれたら
やっぱり小学校2年の頃と答えます
もしかしてこれが初恋ってものなのか知らん?

 (*)6才違いの姉同士が友達だったのです。

                                 もくじへ