五.


寺から屋敷に戻った政宗は、屋敷に出入りしているあやかしたちを集めると言いだした。手がかりを探すためらしいので、幸村に否はない。政宗の屋敷に集うあやかしたちは皆悪い者たちにはみえないので心配することもない。だが、なぜ。
(それがしの部屋なのだ!!)
声を大にして言いたかった。今、幸村の部屋は大変なことになっていた。黒いもやもやしたものが漂っていたり、固まっていたり。物に魂が宿ったとかいうつくも神たちが大挙して訪れ、部屋の主である幸村の居場所がないほどである。つ次から次へとやってくるあやかしたちを呆然と見つめていると、隣にいた政宗が辺りを見回して小さく頷いたのが視界の端に映った。


「大体そろったな」
口を開いた政宗の肩や膝の上にもあやかしたちは乗っかっている。それを気にする様子もなく政宗は幸村のほうを振り返った。
なんだろうか。
意味もなくドキドキしていると、政宗が再び口を開いた。
「一葉、はじめていいか?」
「?」
どこに一葉がいるのだろうか。花挿しの一葉の姿を探してきょろきょろしてみるが見当たらない。だが、政宗はまっすぐ幸村のほうを向いている。おかしい。幸村は政宗にならって自分の背後を振り返った。
「ぷ」
政宗吹きだした。なにも笑うことはないだろう、とむっとして睨もうとしたとき、いきなり頭の上で何かが動いた。
「ぬっ、何事?!」
頭上に何かいるらしい。必死で上を見ようともがいて見るが、何か硬い素材のものがへばりついていて見ることも取ることもできない。なんとかして取ろうと暴れていると、耐えきれないというような政宗の笑い声が響き渡った。政宗は大爆笑しながら、幸村の頭に手を伸ばしてくる。
「一葉、アンタ。そんなに、幸村の頭の上が気にいったか?」
「?!」
政宗が笑いながら、一葉を幸村の頭からおろした。一葉は、心外だというように体を震わせている。
「Ah,あまりに仲間が多く集まっているから潰されやしないかと心配で、仕方がないから一番頑丈そうな人間の頭にいたって?」
頭いいな。と、一葉を抱きかかえる政宗であるが、幸村は納得がいかない。自分は、棚か。むっとしていると、政宗がまた笑った。
「落ち着けよ、一葉にとっちゃ死活問題だ。少しでもヒビがはいっちまったら死んじまうんだからな」
「あ・・・」
確かに。一葉は陶磁器だから簡単に割れてしまう。思わず黙り込んでしまった幸村に政宗は優しく笑い掛けた。
「そういうことだ。・・・さて。本題に入るか」
政宗は、視線を幸村からあやかしたちへと向けた。




「皆も知っている通り、一葉の友人が一人。いなくなった。その行方を捜している。それで、お前ら。最近なにか変ったことが周辺にないか探って来てもらいたい。どんな些細なことでもいい。そうだな…もしみつけてきたら、ここにいる真田幸村がお前たちに菓子を食わせてくれるぞ」
「なぬぅっ!」
それは横暴だ。叫び声をあげた幸村をあやかしたちはあっさりと無視した。大喜びしたように跳ねまり、幸村の周りとくるくると回る。言葉を聞くことができない幸村だったが、なんとなく彼らはすごく楽しみにしているように見えて抗議の言葉を飲みこんだ。
「最善を尽くすでござるよ・・・」
砂糖はとても高価なものであるから、確約はできないけれどなんとかしよう。そういうと、あやかしたちは我先へと部屋を出てゆく。最後に自らは動けないつくも神たちと一葉、政宗と幸村だけが残った。つくも神たちは、仲間からの情報をまとめる役につくようで、動けるあやかしたちがいなくなったと政宗が彼らをまとめて抱えて部屋を出ていった。最後に残されたのは、一葉と幸村である。
「……」
「……」
一葉は、何かを言いたいらしいが幸村にはもちろんわからない。仕方がないので、幸村は一葉を頭の上に乗せてみた。

「……」
「!」
「う、動くでないっ。ちょ、本当に落ちてしまうぞ!」
「!!!!!!?????」




何故か暴れる一葉を必死で頭の上に手をやって抑えようとしていると、政宗が戻って来て再び爆笑した。一葉は、こんな不安定な棚から降りると言っていると、実に不本意な一言を告げられて幸村は再度むっとした。棚ではない。幸村の頭である。そんなことを告げるのもも大人げなかったので黙っていると、政宗派一葉を何故か幸村の部屋の飾り棚に乗せてやった。政宗は、一葉に話しかけられたようである。ちょっと驚いて目を見開いたあと、ニヤリと笑った。その笑顔のまま振り向く。
「Hey,幸村。Come」
「噛む……?」
何を言われたのかわからないまま幸村は政宗に腕をつかまれて自室へと引っ張って行かれた。



-------------------------------------
ようやくダテサナの香りが・・・(汗)
2011.7.7.更新