Two Shots   −1st.stage−



<・・・コツン、コツン、コツコツコツ、コツン、コツコツ、コツン、・・・>

 眩しい日差しが差し込み、心地よい柔らかな風が、レースのカーテンを揺らして穏やかに流れ込んでくる一室―――

 『オーブ』オノゴロ島に造り直されたばかりの“屋敷”―――その2階の一室が執務室として使われているが、その部屋の主は「心ここにあらず」といった様子で、握り締めたペン先を机に打ち付けており、静かな部屋にはその音だけが木霊していた。


「・・・カガリ・・・退屈なの?」


何時の間にか部屋に来ていたキラが、この部屋の主―――カガリに声を掛けた。


「な、何言ってんだ! こう見えても私は忙しいんだぞ! ・・・これからの『オーブ』の事とか、『N・ジャマ―』の事とか、『地下エネルギー』の事とか・・・やる事だらけなんだから!」
「・・・でも、今“言ってた”じゃない・・・『あぁ、退屈だ。退屈だ・・・』って。・・・今の“モールス信号”でしょ?」
「あ・・・」


何時の間にか無意識にペン先を打ち付けていたらしい・・・。


『N・ジャマー』の影響下で、主だった通信がかき消されるようになった昨今、戦争中、一時的であったがこうした“旧式”の通信方法がとられたことがある。
軍事教練を受けたカガリも例外ではなく、地球での通信方法のノウハウは一通り受けていた。
“0”と“1”の―――単音と長音の組み合わせで単語を作る“モールス信号”―――最も敵に傍受されるリスクもあるが、非常時、味方とのコンタクトには充分役立つ。
当初これを教わりだした時、あまりの単調さに思わず覚えたのが―――今の『言葉』。
どうやら、癖になりかけているようだ。


「・・・って、何でお前が知ってるんだよ!?」
「いや、だって僕も少しの間だったけど、一応『軍人』だったし・・・基本的なことは教えてもらったから・・・」

必死に言い訳するキラだったが、なるほど、とカガリも思う。


キラは確かに一時的にも『地球連合軍』の軍人となった。
地球そのものに母体を持つ『連合軍』の一兵であるなら、地球に降りた時のことを考慮に入れ、これくらいの基本は教わっても当然だろう。

―――あの『戦争』が終わって、カガリは地球に、『オーブ』のあった『オノゴロ』に戻っていた。


確かに『大西洋連邦』の管轄下に置かれ、直ぐの開放は難しかったが、それでも必死になって今の『オーブ』を取り戻した。

・・・といっても、まだ父ウズミの力には、足元にも及ばない。
こうして一応『一国の代表』として、この部屋で執務は扱っているが―――教わることは山ほどある。
日々が勉強の中、ウンザリしていたところ・・・つい意識が飛んで、ペン先を打ち付けていたらしい。

『オーブ』に戻っていたキラも、両親―――といっても、正確には義理の―――叔母夫婦であるヤマト夫妻の元に戻り、たまに唯一の肉親であるカガリの様子を心配して見に来てくれる。
国と育ての親、それも彼女が尤も敬愛していた父ウズミを亡くし、仲の良かったアサギ・ジュリ・マユラ・・・親しかった友も亡くしたのだ。キラとしてもカガリのことは心配でならない。


「少し休んだら? それでなくてもカガリは無茶しすぎるんだから・・・」
「無茶なんかしてないさ! 現にこうして―――」
「ボーっ、としてたの?」
「―――なっ!!」

すまし顔で言うキラに余計な事を突っ込まれ、思わず顔を赤らめながら、カガリがキラに背を向け反撃に出る。

「そんな事言うと、とっておきの“話”があったのに・・・お前には絶対教えてやんないからなっ!!」
「何!? 何の話!?」


少し優越感を感じ、満足したカガリが嬉しそうに振り返りながらキラに微笑む。

「―――もう直ぐ、ラクスが来るぞ! この『オーブ』に!!」

   
*        *        *

「・・・それでは、よろしくお願い致しますね。」

椅子から立ち上がり、長いピンクの髪を優雅にたなびかせながら、ラクスが柔らかな微笑を向ける。


「判りました・・・しかし、賛成しかねます。私は・・・」
答えるのは、20代後半といったところの、長身で体格の良い、優面の男。

「まぁ、どうしてですの? カミュさん。」
口に片手をあて、さも“驚きましたわ”と言う表情のラクスに、その男―――ロアン・カミュは声を押さえながら答える。
「仮にも、今回の戦争責任においてのプラント側トップに通じる者ですよ!? よくもまぁ、大事な親善大使にそんな護衛をつけるなど・・・ジュール議員もよくお許しになったものです。」
「だからこそ、ですわ・・・あの方はわたくしの事もよくご存知ですから。」
「・・・『元婚約者』だからですか・・・? 幾らそんな関係が過去にあったとはいえ、よく安心して任せられるものです。仮にも―――」
「カミュさん」


話し続ける男に、ラクスははっきりと告げる。
「貴方が彼の何をご存知なのですか? 確かに今回の戦争において、あなた方の住まう地球そのものを滅ぼそうとした方の肉親です。でも、それとこれとは別。彼の意思はそれに沿ってはおりません。」

ハッキリと答えるラクスに、ロアンも言葉を濁す。

「・・・判りました。・・・只、我々も地球からこうして貴女の身の安全を保障する為に参ったのです。その事についてはお忘れなきよう。」
「えぇ、判っております。ですから今後とも宜しくお願い致しますね。」

先程の厳しい視線と、うって変わった穏やかな微笑み―――流石、万人を魅了する『プラントの歌姫』だけのことはある・・・。

「その笑顔があれば、十分今後の地球との間に友好な関係が築けますよ。・・・期待しますよ。クライン嬢。」
「“ラクス”で構いませんわよ。カミュさん。」
「では、私の事も“ロアン”で結構ですよ。ラクスさま。」

そうとだけ言い残して、地球からラクスの護衛に来たという、ロアン・カミュは部屋を後にした。

「・・・いいんですか? ・・・なんか信用できかねますが・・・」
「心配なさらなくても大丈夫ですわ。ダコスタさん。」

ラクスの身を案じて、隣の部屋に控えていたマーチン・ダコスタが声を掛けるが、ラクスは心配のそぶりも見せずに答える。

「こうして、地球の、ナチュラルの方々と共に行動する・・・まず、わたくし達が信頼の為、歩み寄りの一歩を踏み出さなければ、皆さんに道を示す事など出来ないでしょう?」
「そうですが・・・やっぱり、俺も一緒に行った方が・・・」
「ご心配には及びません。それに―――」

ラクスは心配顔のダコスタに、柔らかな笑顔で答える。

「ちゃんと、『彼』がついていてくださいますから。」
「はぁ・・・」

まだ、心配の種が尽きないといったようなダコスタを置いて、ラクスは部屋を出ると、『彼』の待つ部屋へと向かった。


(・・・もし、わたくしがお断りしても、『彼』はきっと来るに違いありませんわ。今回の訪問先が訪問先ですから・・・それに、『大事なお役目』もありますし・・・)


クスクスと笑いながら、とある部屋の前に立つと、ラクスは軽いノックをしてドアを開ける―――

「お待たせしました。」


その声にソファーから立ち上がった、『彼』―――『赤』の軍服に身を包んだ、濃紺の髪に翡翠色の瞳の少年――

その姿に、ラクスは安心したように声をかける。

「さぁ、参りましょう・・・地球へ・・・『オーブ』へ。」


                         ・・・to be “next stage”.


=====================================

 >まお様から戴きました、「とある『お題―――○○○○』」に関するお話を作ってみております。
  ・・・って、プロットきってる間に思った「すんごい長っ!!」
  本一冊分になりそうな位、長編になってしまいそうですので、分割してお渡ししたいと思いますが・・・
  いいですか!? まお様!?
  多分、こんな調子で5〜6話くらい行っちゃいそうですが(汗
  少しずつお贈りしたいと思いますので・・・要らなかったら蹴り捨てて下さい!!
                               
  あ、○○○○の中に何が入るか・・・は最後になれば判りますが(笑)、先に知りたい方は、まお様に
お聴きください。(←そんな人はいない・・・絶対!)
                                         >Nami


-------------------------------------------------------------------------
すご〜〜〜い!!!本格的な○○○○な小説ですねっ!!
まだ○○○○の部分は出てきてないですが、とても楽しみです。
バイオハザー○ベロ○カな感じのアスランが拝める!!
ちなみにやはり○○○○するときは腕を交差ですよね!(でもあれにははっきりいって意味はないと思うのですが・・)
さて、読んでる方も○○○○のところが何だかわかりましたかな?
キノが好きな私は××××と表現してもいいですv
ところで・・『モールス信号』って・・知りませんでした!ほほぅ、そのようなものが・・。

まお




←seedに戻る