Flont Mission (Last.Mission)

 

 

 

(―――暑い―――)

 

カガリはようやく意識を取り戻した。

(…確かコープスに手渡された飲み物を飲んだ途端、意識が急に薄れて…それで…)

 

慎重に周りを伺う。何処かの屋上らしい。

(…ここは…?)

暑いと感じていたのは、どうも傍に大きな熱源―――溶鉱炉が目に入った。

つまり―――此処は―――

 

「気がつきましたか。カガリ・ユラ・アスハ。」

目の前には案の定―――コープス

 

「どういうつもりだ。私を此処に連れてきた理由は?」

ここは、あの視察に出向いた廃棄処理施設に違いない。だとしたら改めて此処に連れてきた理由は…

「これをお見せしたかったのですよ。」

 

熔鉱炉の下、廃棄工場と思われていた屋根から隙間をぬって見えたのは

「…“ストライク・ダガー”…」

それも只のストライク・ダガーじゃない。…もっと改造された新型の…

「これをご覧になりたかったのでしょう? アスハ代表。」

コープスの自信満々な声とは裏腹に、カガリは声を荒げた。

「お前! 何を考えているんだ! 新兵器の建造は『ユニウス条約』で禁止されているはずだ!」

「だからこそですよ。アスハ代表…」

コープスは視線を逸らしながらカガリに告げた。

「どうにもプラントは信用がおけない。…『ユニウス条約』といっておきながら、新兵器を増強しているとの情報が入っているのですよ。そのうえ極秘で“Xナンバー”まで開発していると言う…その情報がオーブから流出していると言う、もっぱらの噂がね!!」

「何だと!?」

 

コープスは一息つくと、カガリに向き直って言った。

「つまり、こちら側が『一切の武力放棄をする』といえば、プラント側も不信がるに決まっている。そこで中立であるあなたがNOと言ってくれれば、安心して軍備の情報の漏洩の一つでも出るかもしれない。…だが、あなたは見てしまった…我々の新たな軍備の増強を!」

 

コープスは胸元から銃を取り出すと、カガリに向けた。

手足が縛られていないとはいえ…この至近距離では逃げられない…!

 

―――と、その時

<パーンッ>

 

耳に響く銃声―――だが、カガリに痛みは感じなかった。

 

と…目の前のコープスの顔色が見る見る変わり、ドサリと崩れ落ちた。

背中からは、赤い血痕がみるみる広がっている。

その向こうの人影―――

 

そう、確か、コープスと行動を共にしていた

 

――――『ダイアン』

 

「…この男はおしゃべりが過ぎた…」

そう言ってダイアンはカガリに銃を向きなおすと、続けた。

「プラントの尻尾を掴めば外務次官に返り咲かせてやろうと思ったが…逆に中立のオーブに、自分の企みを教えるようでは、どの道外交には向かない…」

 

カガリは立ち上がり、後ず去った―――が、手すりに阻まれ、それ以上は逃げられない。

 

ダイアンが改めて銃を向きなおすと、カガリに告げた。

「パーティーではコープスが、アスハ代表を連れ出したことにしてくれている。ここでアスハ代表に…そうですね…熔鉱炉にでも落ちてもらえれば、行方不明の首謀者はコープス。そして証拠一つ残らず、“ダガー”の秘密も隠しとおす事が出来るのですが…。」

 

カガリはクスリと笑うと、胸元のハイビスカスをとり上げた。

「さて、それはどうかなっ!」

 

上空高く舞い上げたハイビスカスから目のくらむ閃光が迸り、ダイアンの視覚を奪った!

「うわぁっ!! 目――目がぁっ!!」

 

前もってアスランから渡されていた閃光弾。それを胸元のハイビスカスに隠していたのだ。

閃光がやむと、カガリは猛然とダイアンに飛び掛り、銃を奪い、突きつけた。

 

「形勢逆転だな…今までのこと、公に吐いて貰うからな!」

「…何を…そんなことを誰が―――」

 

ようやく目を見開いたコープスの眼に、身じろぎ一つしないカガリの背後から、青白い閃光が真っ直ぐ自分に飛び込んできた!

 

「ひっ!」

 

閃光はそのまま熔鉱炉を貫くと、溶け出した溶解液が、そのまま“ダガー”の工場区へ流れ出していく

 

「わ、私の“ストライク・ダガー”がぁー!」

悲鳴を挙げるダイアンの横で、銃を構えたままカガリが言った。

「天罰だ! 此処で白状しろ! ちゃんとこの事を公にすると―――」

 

「この御輿ふぜいの、こ娘がぁーーーっ」

 

飛び掛ろうとしたダイアンに哀れな視線を向けるとカガリは銃を下ろした。

代わりに―――

 

『ゴォォォォーーーー』

 

紅の天使―――“ストライク・ルージュ”がカガリの直ぐ背後から、ビームライフルをダイアンに向けていた。

 

「ひィィィ〜…」

すっかり腰を抜かしたダイアンを尻目に、いつもの聞きなれた声が届く。

 

「カガリ、大丈夫か!?」

「あぁ、全然大丈夫だ。」

「大丈夫じゃないだろ! そんなに擦り傷作って…」

「…ったく…アスランは心配性だなぁ…」

 

目の前のやり取りを呆然と見ていたダイアン―――つまり、あの閃光はこのMSに居場所を教える為に、わざと―――

 

気がついたダイアンにカガリは告げた。

 

「そんな訳だから、ダイアン。後の事は全部喋ってもらうからな。警察がくるまでそこ動くんじゃないぞ! って言ったって、もう熔鉱炉で階段溶けちゃってるから下りられないか。」

 

 

そう告げると、カガリはアスランの待つ、“ストライク・ルージュ”のコクピットに飛び込んだ。

 

 

*        *        *

 

 

間もなく一部の政府組織が『ユニウス条約』違反で非合法に新兵器をつくり上げていた事が、公にされた。

それに関わった官僚―――ダイアンをはじめ、コープスらは失脚。

連邦政府に一時の安息がもたらされた―――・・・かに見えた。

 

 

 

*        *        *

 

 

 

南国特有の明るい日差しの入り込む部屋に、濃紺の髪を揺らし、少年が一人、この部屋の主に呼ばれて入ってきた。

 

「気になったんだ…。」

「…何か言われたのか…?」

カガリはアスランに向き直ると、経緯を話した。

「コープスが言ってたんだ…プラントに“Xナンバー”を極秘作成している可能性―――それも、オーブから技術流用された事実があるらしい…って。」

「…それは…まだ憶測だろ?」

「そうかもしれん…。だけど―――」

 

カガリは立ち上がると、窓の外―――空を眺めていった。

「だから…行って確かめたいんだ。本当に、プラントも平和への助力をしているのか。…オーブの技術を悪用していないのか…自分の目で。」

「カガリ…」

こうなったカガリを止められないことは、もう充分に判っている

 

だから――――

 

「わかった。」

アスランは頷いた。

「珍しく素直だな?」

キョトンとするカガリに、アスランは真っ直ぐ見やっていった。

「だから俺も行く。」

「アスラン!? だって、プラントは―――」

「あれから2年だ。多少知り合う人間がいても、偽名を使って身なりも変えれば俺とばれることは少ないだろう。それに―――

「―――? それに・・・?」

「今度は、ドレス姿で格闘しないように、見張っててやらないといけないしな。」

茶目っ気のある翡翠の瞳が覗き込む。

「〜〜〜〜っ/// なに言ってんだ! 馬鹿っ!!」

 

思わずあげた手をアスランがいとも簡単に取り上げると、そのまま温もりを確かめるように抱きしめる。

「あ、アスラン…」

「一緒に行こう。…約束したろう…俺は―――」

 

 

「「『君を護る』」」

 

 

2つの声が重なる。と2人は可笑しそうに笑いあった。

 

 

こうして、アスランはカガリと極秘でプラントに向かう決意をした。

 

この先に、いかなる運命が待っているかは――――

 

                         …to See SEED DESTINY

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DESTINY前にカガリがプラントに極秘訪問すると言うので、何となくその理由みたいなのを

 考えてみたんですが・・・甘くもないし、アクションもそんなに無くって・・・期待してた人

 いたらごめんなさい(汗

 (ちょっとスランプで…)

 DESTINY始まったら、実際この2人はどう動くのか、まだまだ先は読めませんが、また、萌えを糧に、お話作っていければいいなぁ・・・と思っております。

                                >Nami