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同性愛との違いについて


 一般の人は、女性化している男に対しては、こいつはオカマだろうとか、ホモだろうとか、男が好きだからそういう格好をしているんだろうとか、そういった先入観を持っている人が多いのではないかと思います。しかし、これは正しくはないのです。

 たしかに男性から愛されたいと思っている人たちはいますし、男性とセックスしている人たちもいます。しかし、この人たちにとって一番大切なことは、あくまでも自分が女性化することなのです。この症状が「自己女性化愛好症」と呼ばれているように、自分が女性化することが最大の目的なのです。ですから、自分が女として受け入れられ、女として扱われることが必要なのです。そして、女のように愛されて、女のように抱かれて、女のように挿入されたいのです。同性愛の人たちみたいに、男の格好をして男とセックスするなどということは、絶対にあり得ない話なのです。あくまでも、自分の女性化が前提となっているのです。

 セックスの相手は、男性ばかりではありません。女性化して、女性と愛し合いたい、女性同士でレスビアンしたい、と思う人たちもいるのです。こういう人たちの中には「純女食い」と呼ばれている人たちもいて、女装して本物の女性たちとセックスするのです。この人たちは、もっぱら女性だけを相手にしていて、男性をまったく受け付けないタイプの人もいれば、男性ともセックスできるバイセクシュアルな人もいます。女装して純粋な女性だけを相手にしている人は、生物学的には異性愛者でありますが、外見的には女性同士ですので、そういういう視点から見れば、女性の同性愛者のようでもあります。

 女性化願望を持っている人たちの中には、女装した者同士で性的な関係を持っている人たちもいます。なかには女装者だけで乱交パーティーを開催する人たちもいるようです。この人たちは、生物学的には男同士でありますので、たしかに男性同性愛であるとも言えますが、外見的には女性同士のレスビアンであります。この人たちは、男の格好をして男同士でセックスするなどということは絶対にないのです。あくまでも自分が女性化することが目的なのです。そして、女性化願望を持った、気心の合う者同士で関係を持っているのです。

 なかには、まったくの異性愛者として生活している人もいます。妻がいて子供がいて、本人もごく普通の男性のように生活しているのです。しかし、妻との性行為におよんだときに、自分が女性であるという空想を使わないと、十分な興奮が得られなかったりするのです。このようなケースでは、生物学的には異性愛者でありますが、精神面を見てみますと、自己女性化愛好症である、ということになります。

 他人との関係をまったく持たずに、自分だけの世界で女性化願望をいだいて、自分の女性化を実行している人たちもいます。他人との関係を持ちたくない、あるいはさまざまな理由で他人との関係を持つことができない人たちです。こういう人たちはもっぱら鏡の前で女装してみたり、下着だけ女装して外出してみたり、あるいは密かにホルモン剤を服用して、女性化した自分の身体を楽しんだりしています。こういう人たちは、異性愛でも同性愛でもありません。あえて言うならば自体愛とでも言いましょうか、性欲が自分の中だけで完結した世界であります。自己女性化愛好症の人たちは、女性化した自分を好むという性質上、多かれ少なかれ、このような要素が見られます。

 このように、さまざま人たちがいますが、みんな「女性的なもの」が好きなのです。女性的なものが好きだからこそ、自分も女性になりたいと思うのです。この人たちは、異性愛や同性愛にまたがって存在していますが、純粋な異性愛とも違いますし、純粋な同性愛とも違うのです。そこで新しい概念として、自分が女性化することによって性的な興奮を得る人たち、すなわち「自己女性化愛好症」という概念が生まれたのです。ですから、女性化願望を持っているからといって、それがイコール同性愛だということにならないのです。この人たちは、あくまでも自分が女性化することを好む「自己女性化愛好症」なのです。

 では、性同一性障害との関係はどうなのでしょうか。身体は男なのに心は女であるという人たちです。このような人たちに対しては、精神的な苦痛を解決するための手段として、手術やホルモン療法などによって、身体を心の性に適合させる、いわゆる性転換手術と呼ばれているような治療が行われたりします。この人たちの中にも、自己女性化愛好症の人はいますし、実際に性転換手術も行われています。しかし、……。

 なんと言いましょうか、自己女性化愛好症という考え方がまだ新しいものであるため、さまざまな議論があるようです。もし性転換したいという願望が、性欲に基づくものであるとしたら、これはきわめて不純な動機であると受け止められてしまうからです。ですから性欲からではなくて、純粋に心の性と身体の性が異なっていて困っている人たちの中には、自己女性化愛好症という概念が自分たちを侮辱するものだとして、激しく抗議する人もいます。その一方で、自己女性化愛好症の人たちは、性転換のカウンセリングの時に、性欲が背景にあることをひたすら隠し通すことが多いようです。この問題については、いろいろとデリケートな問題が絡んできますので、今後の研究が待たれます。

 では次に、女性化するとき見られるいくつかのパターンについて書きます。

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