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吉野・天川村へ その2

2010.09.05 

普段はお寝坊さんなのに、なぜか旅先ではやたらに早く目を覚ましてしまうのが、私の癖。
部屋を出て廊下を歩くとギシギシと大きな音が鳴り、ちょっと焦った。
まだ6時前なのに、玄関の引き戸のカギは開けられていて、ひょっとして一晩中開けっ放しなのかしら?

外は昨夜の賑やかさとは対照的にシーンと静まり返ってましたが、ほかの宿では起きてらっしゃる泊り客の姿が見えました。

まずは、昨夜にちょっと通りかかった「龍泉寺」まで足を進めてみました。
西暦700年頃、役行者が八大龍王を祀ったのが始まりとされていて、行者さん達にとっては大峰山山上ヶ岳への出発点となっている大切なお寺です。
大峰山での修行も、ここがスタート地点となっていて、境内には水行の場としての小さな泉が設けられております。

それからもう一つ、二番目の行場もここにあるのですが、竹垣の向こうに小さな湧水の滴りが見えます。
テレビなどで滝行のシーンなどを見ることがあります。
ドバーッとすごい水量の滝に打たれるシーンを見るにつけ、とても辛そうに見えますが、そのような滝行は却って冷たさは感じにくいのだとか。
むしろ、チョロチョロとした水にあたる滝行の方が、水の冷たさが身体に沁みて、とても辛いものなんだそうです。

その滝の前を通り過ぎると、昼なお暗そうな山道に出ました。
ましてやこの時はまだ夜が明けたばかり。
イノシシなんかに出くわしたらどうしようかと、ちょっとドキドキ。

山里の涼冷な風が心地よく、汗もかかずに10分ばかり急な坂道を登っていくと「かりがね橋」と名付けられた吊り橋に出ました。
橋の両サイドにはしっかりとネットが張られ、高所恐怖症の私にでも渡れそうに思いましたが、10メートルばかり進んで敢え無くリタイア。
足元を見ると、板の隙間から下の景色がバッチリと見えてしまい、一歩進むたびに橋が揺れ、それに足元の板がたわむんです。



急に怖くなり心臓バクバクさせて、やっとの思いで引き返すと、もと来た道まで戻ってきてしまいました。

龍泉寺に近づくと、勤行の声が聞こえ始め、下まで降りると数人の方々が滝行の真っ最中。
お堂の柱の陰には・・・・
あら! 失礼。 
行が終わった方々の中には、濡れた褌を外してお召替え中の方もいらっしゃいましたー。(^^ゞ

街に戻るころに山の端から日が昇り始め、朝もやが朝の静けさをいっそう強調しているように感じました。



まっすぐ宿には戻らず、ちょっと寄り道して河原まで降りていくと、水中の岩陰に身を潜めている大魚が一匹。
多分、解禁中に釣り針から逃れることができたイワナかヤマメだと思われ。
よしっ、またここに来る機会があったなら、私がお前を釣り上げてやろうぞ!
とは思えど、川釣り未経験の私に、尺モノが釣れるんでしょうかねぇ。。。

大阪市内は猛烈に暑い日々か続いてましたが、ここではすでに秋の訪れをしめすオオイヌタデが満開の時を迎えておりました。



宿に戻ると、まずは朝湯に浸かって「元気」を注入。
山里のことゆえ朝食は素朴なものでしたが、私にとっては豪華絢爛な御馳走が並んでました。



帰阪前に、ちょっと寄り道的観光。
奈良の吉野郡はカルスト地形になっていて、大小の鍾乳洞がいくつもあり、洞川温泉郷にも二か所の鍾乳洞があります。
昨日に散歩した「ごろごろ水取水場」の近くには「五代松(ごよまつ)鍾乳洞」があるのですが、残念ながらその日の開場時間が終わっていて入場することができませんでした。
それで、帰阪前にもう一つの鍾乳洞である「面不動鍾乳洞」に立ち寄ることにしました。

宿の方の説明によると、モノレールに乗っていくのが一番良いとか。
宿の女将さんのご厚意で、車は宿の駐車場に預かって頂く事が出来たので、チェックアウトをして早々に鍾乳洞の見物に出かけてきました。

モノレールといえば、浜松町から羽田に向かうものとか、大阪市内から大阪空港へ行くものとか・・・・
そこまで大きなもので無いにしろ、せめて遊園地にあるようなものと思ってましたが、そのような施設が温泉街の中からは全然見えないんですよね。
でも、モノレール駅の場所を示す看板はシッカリとある。

それを頼りに歩いていくと・・・・
モノレール、ありました。

こんなのです。
レールの幅は多分5センチくらい。
和歌山なんかのミカン農家が使ってるのとほぼ同規模の、可愛いと言っちゃ可愛いけど、私みたいな重量級が乗って、さて、耐えられるのであろうか(滝汗)。

とりあえず乗ってみた。
急斜面を登るときは、めちゃくちゃ怖かったです。
約5分ほどで無事に鍾乳洞の入り口まで着いた時には、足がガクガクになってました。

そこから見下ろすと、洞川温泉郷の集落がとても小さく見えました。


鍾乳洞の中に入ると、めちゃくちゃ寒い。
洞内は一年中8度になっているそうで、まるで自然にできた冷蔵庫。



鍾乳洞が発見されたのは昭和8年と、比較的最近になってからですが、鍾乳洞そのものも山口県の秋芳洞や沖縄の玉泉洞ほどには石筍が発達しておらず、まだ新しい鍾乳洞のように感じました。
でも、ゆっくりと時間をかけて周りを見渡すと、中はなんとも神秘的。
ごく僅かに光の入るところには、エメラルドグリーンに苔むした石筍がとてもきれい。
むしろ、観光化された鍾乳洞のように派手な色のカラーライトなどが使われて無かったので、却って幽玄な雰囲気を感じることができました。

奥まったところには小さな祠が設けられていて、その前には千年以上は経つといわれているテンやカワウソ、ニホンザルの化石が置かれていました。
その場の雰囲気って、まるで映画で見た横溝正史「悪霊島」のワンシーン。
面白いような、薄気味悪いような、ちょっと複雑な心境になりました。





山を下りるときは徒歩。
途中の橋からは、きれいな清流を見ることができました。

「世は無常」とは言うけれど、ここを流れている清流はいつまで経っても清流であってほしいと思います。


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