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感動


3月12日


 訓練もここまで来ると、なかなかテクニカルな内容になってくる。

 朝から近所の道路で、歩道を塞いでる車を回避する練習をした。
 歩道の幅いっぱいにわざと停めてある車の前で、この子は、車の脇に通れる隙間がないかじっと見つめ、やがて車道に面した段差を向いて立ち止まる。もう一度車の脇を通るように促してみると、さらにじーっと見ている。実はそこには、犬だけなら通れ、人間を誘導すればぶつかってしまうくらいの微妙な隙間が意図的に作ってあるのだ。知らんふりして
 「ゴー「
と言ったら、そっと前足を出したが、やっぱり無理、進めないよといった感じで後ずさりし、再び歩道の縁へ。なんてすばらしい、落ち着いた判断力だろう!
 午後のデパートでのエスカレータでも似たようなことがあった。自分に向かって上ってきたエスカレータに、たまたまたどり着いたティンクル。そこで正しい方向の乗り口を示してやればことは簡単だけど、これをいい訓練のチャンスととらえて、あえて近づかせる指導員。通行人が「そっちは危ないですよ「と言ってくれるのへ、大丈夫、訓練ですと答えて、こっちに向かってくるエスカレータを示して
 「ゴー」
 ティンクルは注意深く近づいて、じっと見つめてから一歩二歩と後退し始めた。あなたが何と言おうと、これには乗れないよ!と、顔を上げて私を見つめながらバックしていく。偉い!!こうやってどんどん賢くなってくんだ。 やがて正しい向きのエスカレータを見つけて嬉しそう。健気さに、心が熱くなった。
 大きく足下の広い車なら、犬は伏せた位置で方向転換もできるし、自分が先に降りてから犬を呼べばいい。でも乗用車やタクシーではそうはいかない、乗り込んだ順に降りるしかないわけで、乗るときは私が先だから、後から来た犬に先に降りてもらうしかない。
 前の訓練のときはこれがなかったため、忠実なノエルは、どんなに狭い空間でも無理矢理回ってドアのほうを向き、しかも、あなたが降りるまで私は出るわけにいきませんとばかり、じっと座り続けていたのだった。しかたないからハーネスをにぎって「ゴー」なんて誘導体制で飛び出すみたいなことをやってきた。それだってノエルが小さいからできたことで、この子はどうするのかなと思っていた。
 そのやり方は実にスマートで、これならハーネスがあちこちバンバンあたったり、犬の足がシートに乗り上げる心配をしたりしなくてすむ。乗って伏せた位置のまま体を起させ、そのまま後ずさりで降りさせる。これだけ書けば簡単な動作みたいだけど、これがなかなか犬に教えるのはたいへんなんだよね。訓練に当たる日とたちも、少しでも私たちが快適に行動できるように、いろんな工夫をしてくださっているんだなぁ。
 本当に今日は感動いっぱいの1日だった。


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