掲載誌:週刊「新社会」2004年12月21日(改題第422号)
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もうひとつの世界を摸索 京都社会フォーラム
多分野の運動の交流が発展
12月11〜12日の2日間、「京都社会フォーラム」が京都市内の大学を会場に開催された。初日に全体集会、2日目にテーマ別の分科会が行なわれ、約350人が参加した。
弱肉強食の新自由主義のグローバリズムに対抗して「もうひとつの世界」を摸索する世界社会フォーラムが2001年から毎年開かれており、その京都地域版といえる。反戦平和運動をはじめ、環境問題や労働運動、野宿者支援運動など大小様々なグループが集まって実行委員会を作り、半年以上の準備を重ねてきた。実行委員によれば「既存の政党の枠組みにとらわれない」集まりになったことが特徴だという。
初日の全体会では、始めに三人のゲストが基調報告。山家(やんべ)悠紀夫さん(暮らしと経済研究室)が、一連の小泉構造改革の結果大企業が優先されて地域経済が破壊されている指摘。地域重視の経済の重要性を訴えた。中林浩さん(平安女学院大学)は都市景観問題を扱う立場から、失われていく京都の景観について社会運動関係者の関心を、と促した。 三番目に吾郷健二さん(西南学院大学)はラテンアメリカにおいて新自由主義の経済モデルが深刻な結果をもたらしたこと、それに対して民衆の運動の中からたくさんのユニークな取り組みが生まれていることを紹介した。
全体会の後半は、京都で社会運動にかかわる人々によるリレートーク。憲法・教育基本法や自衛隊のイラク派兵、沖縄・辺野古の基地建設反対運動などの反戦平和の問題や、難民、人身売買、野宿者支援運動などグローバリゼーションの時代に深刻化する人権問題、温暖化、遺伝子組み換え作物問題など、地球規模の問題となった環境と生命の危機について次々と発言が行なわれた。
2日目の分科会では公共サービスの民営化が大きなテーマとなった。労働者の権利や公共サービスの意義を無視した郵政民営化の動きに対して、労働運動と市民運動で協力を強めていくことが話し合われ、国鉄分割民営化と採用差別の問題を扱う上映会も実施された。
食の安全や環境の問題が、経済のグローバル化の中で輸入食品に押されて国内農業がますます淘汰されていくことと、それが海外での環境破壊的な大規模生産という問題と密接に結びついていることに焦点があてられた。BSE問題や、温暖化による山林でのナラ枯れの進行などの現状が話し合われた
入管制度による難民迫害の問題を扱う「RAFIQ」は、入管局の収容施設を再現し、参加者にその人権侵害の状況をじかに体験してもらっていた。
「民主商工会」は零細業者の創意工夫と連携によって地域経済を活性化させていこうという取り組みの展示やワークショップを行なった。
深刻化する若年層の雇用の問題を話し合うワークショップも開かれた。学生・青年を中心に企画され、地域の労働運動に携わるユニオン運動の活動家が協力した。
このほか多彩なブースが出され、反戦平和運動、災害救援ボランティア、野宿者支援運動の展示、憲法署名運動などから出展された。また、スローフード・カフェが地域の素材を活かした料理を提供し、参加者らを楽しませた。
それぞれの問題に取り組むグループが持ち寄って手作りで行なわれており、その分京都の社会運動の多様性を印象付けるものとなっていた。
若いメンバーが活発にうごいていたのが印象的だった。スタッフの一人は「初めての試みでもあり、運営上なれない部分もあって迷惑をかけたが、たくさんの団体の参加が得られてよかった。今後、フォーラムに参加した人々の間で、運動全体の発展のための協力がすすんでいけば」と話していた。