十一月四日、ATTACフィンランド創立者の一人のミカエル・ブック氏来日を受けて同氏の講演会が京都市内で開催された。主催したのはATTAC関西とATTAC京都。八日のATTACジャパン(首都圏による)東京講演とあわせて、ブック氏の今回の来日を日本におけるトービン税を要求するキャンペーンの起点にしようと日本のATTAC運動として位置付けた。
この日の集会はATTAC関西とATTAC京都のメンバーに加えて、経済学をテーマとする研究者や学生の参加も少なくなかった。一方で、市民運動関係からの参加は少なく、社会運動全体へトービン税問題が浸透しきっていないという現状が参加者の構成に反映されていたといえる。開会までに会場はほぼ満員となった。
最初に、ATTAC京都で活動している経済学専攻の大学院生がトービン税の基本的な考え方について解説してから、ブック氏の講演に入った。ブック氏の講演内容については要旨が別掲されるとのことなので省く。
公共サービス・福祉が整備されたフィンランドでは、税金とは社会的な配分のためのものであるという認識が大衆的であり、これに対して企業が減税を主張するという構図であること、したがって「もっと税金を」というスローガンが庶民の共感を得るということに、会場からは驚きの声があがった。
講演後に質疑が行なわれた。「通貨取引のうち大きな割合を占める企業内取引に対してトービン税の課税は可能か」、「『もっと税金を』というスローガンについて説明してほしい」との質問がだされた。ブック氏は、「通貨取引に関しては銀行に記録が残るので、企業内取引であっても課税は可能」「緑の党は選挙スローガンとして『GATSのない町に』をかかげた。GATSはすべての公共サービスを私営化するということを意味するが、そうしたならば教育・医療に予算を使う必要がないので税金を下げることが出来るようになる。フィンランドの諸政党は今では、そのようなことをしてまで税金をさげなくてもよいと述べている。もちろん企業の利潤に対する税金と個人の収入に対する税金の比率というのは問題にされなければならない。例えばシラクの提案の中では企業所得税の国際的な均一化ということが言われている。これは租税回避の防止ということだ」と答えた。
立命館大学の藤岡惇さんからは「『平和の経済学』という講義を担当している。炭素税などのいろいろなアイデアがあるがなかなか実現していない。キーとなるのはグローバルな課税として考えることだと思う。加えて、税収が地域のために使われるということが重要。ATTACには注目している」との発言があった。
アピールとして、途上国の累積債務帳消し運動を進めている「ジュビリー関西」のメンバーから、「トービン税の税収は南北間の不公正の是正のために使われる。したがって債務キャンセルとトービン税は表裏一体。ベネズエラのトービン税法案やアルゼンチンの債務キャンセルの動きなどに注目しており、十二月の京都社会フォーラムではラテンアメリカに焦点を当てた企画を行なう」との表明があった。
最後にATTAC京都代表の平川秀幸さん(京都女子大)が「トービン税は『夢物語』のように言われるが、実はすでに半分手にしている『夢』――福祉と公共サービス、税金による富の再分配――であり、現行の所得税さえ百年前には夢物語とされていた。トービン税はすぐそこにあるものだ」と締めくくった。
(ATTAC京都事務局 小森政孝)