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 退団発表に接して

 1月6日に檀ちゃんの退団発表がありましたが、 この件に関しての私の現在の気持ちを綴ってみたいと思います。 一部のファンの方にとっては不満な点もあるかと思いますが、 あくまでも私の個人的な見解としてお読み下さい。
 
 宝塚歌劇団におけるトップ(現在では呼び方が変りましたが)就任は、 同時に退団への秒読みが始まった、とも言われます。 トップとしての在団期間に規定があるとは思えませんが、 適当な間隔でトップが交代することにより新陳代謝が行われ、 その結果歌劇団が長年にわたって人気を保つことが出来たことについては、 紛れも無い事実であると言って良いかと思います。 勿論これは主として男役トップに関してのことですが、 娘役の場合にも同様に考えて良いかと思われます。
 檀ちゃんが月組トップに就任した時にも、 何年かしたら退団してしまうと言う懸念はありましたが、 これは過去の例を見ても当然の思いであったと言えるでしょう。 思いもかけぬトップ就任は嬉しいと同時に、 宝塚での舞台を観られるのも後数年、 と言う覚悟を迫られるものでもありました。 しかし運命の悪戯とでも言いましょうか、 新専科制度と言う新しい試みが始まったことにより、 檀ちゃんは真琴さんと共に宝塚を去ることなく、 その後も宝塚の舞台に立つことができるようになりました。
 新専科制度は男役の場合にもその存在意義が曖昧なものでしたが、 娘役トップから転入した檀ちゃんの場合は異例なものであり、 更に複雑な立場にならざるを得なかったと思われます。 恐らく檀ちゃんとしても最も不安な時期ではなかったかと思いますが、 初の外部出演となった芸術座へ向かう檀ちゃんの姿には、 そんな檀ちゃんの心の中が見えたような気がします。 私の場合にももっと激励の手紙を書くべきだったと反省もしておりますが、 檀ちゃんは持前の精神力で専科時代を乗り切ると共に、 より一層逞しくなって星組トップ娘役として返り咲くこととなりました。
 
 既に多くの方がご存知のように、 音楽学校時代の檀ちゃんの成績は最下位であり、 月組に配属されてからもその状態が続いたようです。 多くの方が宝塚対策で何らかの稽古事をしていたのに対し、 檀ちゃんの場合には普通の状態で受験しているのですから、 追いつくまでに時間がかかったのは当然のことと言って良いでしょう。 こうした檀ちゃんの成績を持ち出して批判する人が多々見られますが、 勿論そのような批判は的外れであり、取るに足らないものです。
 宝塚の場合、入団時の成績に応じて役が回されるようなので、 当然檀ちゃんが大きな役に付くことは無く、 私も当時の檀ちゃんの姿を知ることは出来ません。 今にして思えば、『銀ちゃんの恋』東京公演の玉美、 『チェーザレ・ボルジア』新人公演のカテリーナは是非見ておきたかったのですが・・・
 舞台上の檀ちゃんを意識して見るようになったのは、 雪組での『浅茅ケ宿』新人公演を観てからとなります。 この公演で檀ちゃんは初の新公ヒロインを演じたわけですが、 途中で落雷・停電による一時中断がありました。 丁度檀ちゃん演じる眞女児が歌い始める時でしたが、 停電のために音楽が流れてきませんでした。 予想外の状況に檀ちゃんも途惑ったのではないかと思いますが、 うろたえることも無くその場はそのまま踊り続け、 その直後に中断の案内と共に幕が下りてきました。 故障が直ってからの再開後も落ち着いて舞台を務め、 中断にも動じない姿勢が後のトップ娘役就任の推進役となったのではないかと思います。 やはりトップに求められるのは単なる歌やダンスの技術だけでなく、 非常時に対処できる冷静さが重要なのではないかと思います。 あるいは落雷による停電が無かったならば、 この時点における檀ちゃんのトップ就任は無かったかもしれません。
 私としてもこの公演の観劇は大きなものであり、 もしこの公演を観ていなかったら他の多くの人達と同様、 檀ちゃんのトップ就任を訝しく思っていたことでしょう。 公演日が近付いてから入手した立見席なので大きな整理番号となり、 前の人の肩越しに観るような状態でしたが、 無理をしてでも行って良かった新人公演でした。 もしもこの公演を観ていなかったとしたら、 あるいは檀ちゃんを応援することも無かったかもしれません。
 
 月組トップ娘役就任の際には一部のファンからの反対があり、 ネット上でも多くの中傷記事が書き込まれたと聞いています。 私は当時はまだインターネットに接続していなかったので詳細は知りませんが、 娘役に対する中傷はそれ以前にも結構あったように聞いており、 それが遠因となって早期に退団してしまった娘役さんもいたとも聞いています。 幸い檀ちゃんはそれらの中傷にもめげずに月組時代を勤め上げました。 星組での再度のトップ娘役就任に当たってもやはり多くの中傷がありましたが、 舞台での好演でそれらを跳ね返して現在に至りました。
 思い返してみれば、 檀ちゃんほど変化に富んだ道を歩んだ生徒はいないかと思います。 トップ娘役になるまでの道程は誰よりも険しく、 トップになってからも誰もが経験したことの無い道を歩むことになりました。 檀ちゃんとしては苦労の連続であったのではないかと想像しますが、 檀ちゃんが新しく切り開いた数々の道は、 これからの多くの生徒を導く道として活躍するのではないでしょうか。 たとえ檀ちゃんが宝塚の舞台から去ったとしても、 檀ちゃんが歩んできた道は宝塚に永遠に残るものと信じています。
 何だか既に卒業してしまったかのような書き方をしてしまいましたが、 残された2つの公演、もう観られないと思っていた2月のアムネリス、 そして最後の大劇場及び東宝公演には大いに期待しています。
 CSの新春メッセージは今日10日になってようやく見られたのですが、 実は5日に歌劇誌1月号のポートレートを見てちょっと違和感を感じました。 他のトップ娘役が娘役らしい晴着を着ているのに対し、 檀ちゃんだけ大人の雰囲気を持った着物だったからです。 この写真を見て『もしや』と思ったのですが、 案の定翌日には退団発表がなされてしまいました。 檀ちゃんが意識してこの着物にしたのかどうかは知りませんが・・・
 
 最後の公演は芸者役とのことですが、 檀ちゃんの本格的な日本物は『浅茅ケ宿』以来と言うことになりますね。 最初の中国公演でのショーや『蝶・恋』も日本物には違いありませんが、 本格的と呼ぶには幾分毛色の違った作品であると思います。
 宝塚のトップ娘役は 比較的若い人が選ばれるせいか、 綺麗ではあっても大人の色気には欠けている人が多いように思われます。 そんな中で檀ちゃんは色気の出せる貴重な存在でもありますから、 最後の舞台で檀ちゃんならではの芸者さんを演じて欲しいと思っています。 その前のアムネリスでも単に威厳のある王女としてではなく、 今回は色気も漂わせる女性として演じて欲しい気もしております。
 いずれにしても卒業するのは決まったことですから、 卒業までの7ヶ月余りの日々は健康に留意し、 元気な姿で舞台に立って欲しいと思っています。

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