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檄!!! 長崎しぐれ坂 第19場


 大劇場公演をご覧になった方は既にご存知のことと思いますが、 この公演は檀ちゃんの退団公演であるにもかかわらず、 芝居の最後の場面に檀ちゃんは登場していません。 終章のみならず全体を通して檀ちゃんの出番は少ないと思いますが、 これではトップ娘役不在の作品であると言っても過言ではないと思います。
 檀ちゃんの退団が発表された時、 脚本の植田氏は退団公演に相応しい作品にすると言っていましたが、 私にはどう見てもそのように思えません。 私は中頃に1度観ただけなので、 あるいはその後楽日に向けて多少の変化はあったかもしれませんが、 基本的な構成は変わっていないことと思います。
 大幅に脚本を変えることは出来ないでしょうから、 途中での出番が少ないのは止むを得ないかと思います。 しかし終章である第19場に登場出来ないのでは、 植田氏の発言は全くの偽りであったと言わざるを得ません。 そこで第19場の改善案を作成し、今月初めに植田氏宛に送付致しました。 下にその全文を載せておきますが、決して無理な設定ではないし、 大道具等を新たに製作することなく檀ちゃんを登場させることが出来ます。
 この作品の原作である「江戸無宿」は観たことがありませんが、 決して原作を軽んじるような変更ではないと思います。 むしろ伊佐次がおしまの幻影を見ることによって二人の関係も強調されるし、 死に行く伊佐次に卯之助が嘘をついて最後を見届けるのも、 二人の友情が強調されることになるかと思います。
 
 劇団としても、観客の要望を一々聞き入れることが出来ないことは承知しております。 しかしながら多くの観客が共通して要望することであれば、 その意見も取り入れられるのではないかと思っています。
 私が2度目に観た宝塚の作品は雪組の「雪之丞変化」東京公演でしたが、 この作品の最後の場面は映画で観たものよりも感動的なものでした。 しかし後にNHKのBS放送で観た大劇場公演では、 ずっと簡素なものになっていました。 主役である一路真輝さん演ずる雪之丞の歌がずっと短いものだったのです。 一路さんは歌唱力に定評のある人ですから、 恐らく大劇場公演に満足出来なかったファンの抗議が殺到し、 東京公演では一路さんの歌う場面が長くなったのではないかと思っています。
 当時に比べると現在は大劇場公演から東京公演までの期間が短くなっていますが、 下に示すような変更であれば十分に実現可能かと思います。 登場するのは主役である3人だけなのですから、 照明や音楽・舞台装置等の裏方さんの協力が得られれば問題は無いはずです。 檀ちゃんの登場によって轟さんと湖月さんの演技も増えることになってしまいますが、 お二人ともきっと協力して下さることと思っています。
 
 決して個人的なわがままを通そうと言うのではありませんし、 檀ちゃんの登場場面を増やすことだけが目的ではありません。 最後におしまが登場することによって作品の質も向上すると思っておりますので、 もしこのあらすじを読んで賛同される方がおられましたら、 是非とも宝塚歌劇団、あるいは植田氏宛に手紙を出して下さい。 私一人の要望書だけでは劇団を動かせなくても、 大勢の方の賛同が得られれば脚本が変わる可能性はあると思いますので、 宜しくお願い致します。
 たとえ東京公演の初日には間に合わなかったとしても、 実現すれば楽日のビデオ映像として残ることになります。 檀ちゃんの最後の舞台ですから、やはり最後の場面には登場して欲しいものです・・・
 
 なおこの記事、あるいはHPの存在は紹介しても差し支えありません。


 「長崎しぐれ坂」第19場
 
 銃で撃たれた伊佐次と卯之助を乗せた小舟が沖合へと進んで行く。
 
 既に意識が朦朧としている伊佐次がふと見上げると、 おしまの幻影が現れて手招きして伊佐次を呼んでいる。 伊佐次の頭の中ではおしまは既に江戸に着いており、 自分を待っているのだと思い込んでいる。 伊佐次はおしまの名を呼びながら手を伸ばすが、 意識のはっきりしている卯之助にはおしまの姿が見えない。
 
 卯之助は苦しい息の下で懸命に手を伸ばす伊佐次を抱き起こしし、 おしまは堺に帰ったことを改めて告げる。 しかし伊佐次の目に映っているおしまの姿は消えることも無く、 よく江戸に帰ってきてくれたと涙ながらに言いながら、 おしまも伊佐次に対して手を差し伸べてくる。 二人は懸命に手を伸ばすがなかなか届かない。
 
 卯之助はなおも現実を伊佐次に知らせてしっかりしろと励ますが、 伊佐次は逆に何故おしまが見えないのかと卯之助を問い詰める。 やがて卯之助も伊佐次がおしまの幻影を見ていると言うことに気付き、 同時に伊佐次に死が迫っていることを悟る。
 
 実際にはおしまの姿は見えない卯之助ではあるが、 おしまに気が付いた振りをして伊佐次の手を取り、 もう少しで手が届くぞと励ましながら伊佐次の手を伸ばしてやる。 卯之助の助けを借りてようやく伊佐次はおしまに触れることが出来、 おしまは江戸に着いたから安心するようにと伊佐次に告げる。
 
 おしまの言葉を聞いた伊佐次は江戸に着いたことを喜び、 安堵のため息をついてそのまま息絶える。 伊佐次の死に卯之助は泣きながらその体を抱きしめ、 おしまの幻影はゆっくりと消えていって幕が下りてくる。

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