鉛の弾丸
埼玉県で、国体のクレー射撃を中止するようなニュースが流れていた。
クレー射撃に使われる銃は小さな鉛の弾を多数発射するが、
この鉛が土中に残り、水質汚染の恐れがあるためである。
鉛の弾丸でふと思い出したのが、「LUNA」の一場面である。
ブライアンが発射したピストルの弾を月読が空中で捕らえ、
「鉛か」とつぶやく場面である。
この台詞は100%間違いと言う訳ではないが、実際には若干異なっている。
鉛が銃の弾丸として用いられる原因の一つは比重が大きなことであり、
もう一つは融点が低く、加工し易いことである。
火縄銃の時代から使われてきた鉛であるが、
銃の性能向上に伴ってその軟らかさが威力を落とす要因となって来た。
鉄板等の障害物に当たった場合、貫通することが出来ないのである。
そこで現在の小銃弾・拳銃弾では図に示すように、鉛の周囲を銅で覆っている。
従って弾丸を捕捉した月読が目にするのは鉛ではなく、銅と言うことになるのである。
まあ、「銅に覆われた鉛か」、と言う台詞が様になるとも思えないが。
また、鉛がむき出しの弾丸が当たった場合、軟らかい鉛が変形して傷口は大きくなり、
体内の弾丸が取り出し難くなる。
故に現在では人道的見地(?)から鉛だけの弾丸は禁止され、
銅等による被覆が義務付けられている。
下の図はクレー射撃に使われる散弾銃の弾だが、小さな鉛の球はむき出しのままである。
この鉛の球は水質汚染と共に、野鳥にとって大きな障害となっている。
エサと間違えて飲み込み、鉛中毒によって死亡する例が続出しているようである。
放置された釣り糸と共に、野鳥を脅かす疫病神のような存在であると言えよう。
毒性の強い鉛を鉄に変えた弾もあるようだが、普及するには至っていないようである。
一般的に言って、弾丸の威力は比重の大きな材料を使った方が増す。
米軍は中東方面の戦争で劣化ウラン弾を使っているが、ウランの比重は鉛の約1.7倍である。
タングステンもほぼ同程度の比重であるが、
核廃棄物とも言える劣化ウランに比べると遥に高価格となる。
劣化ウランとは核分裂を起こさないウラン238のことであるが、
僅かながらも放射線を出すので体内に入ると危険である。
日本でも沖縄で米軍がウラン弾を使用して訓練したことがあるが、
政府の対応は無策その物であった。
水銀やカドミウム公害に加えて、
これからは鉛やウランによる公害にも注意を払っていく必要がありそうだ。
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