稲穂は実を付けると頭を垂れるが、
椿は花が満開になると背を丸めてお辞儀をする。
何と言う品種なのだろうか、
ある枝では真っ赤な花を付けているかと思うと、
別の枝では赤白の交ざった花を付けている。
花の色は違っても椿の花はどれも重たいようで、
満開になるとその重みで枝が垂れ下がる。
 
椿は花が原形を保ったまま地面に落ちるが、
その花が斬首にあった人間の首を思い出させるので、
江戸時代の武士には嫌われたそうである。
人間の首は地面に落ちたらそれまでであり、
桜の花びらもまた然り。
しかし椿の花はその誇りを失わず、
地面に落ちてもしばらくの間は鑑賞に堪えうる。
 
椿の花が地上で人間の目を引くようになると、
その重みから開放された枝は背筋を伸ばし、
来年の花を咲かせるための活動に入る。
 

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