子供の頃の話であるが、我が家の南西の隅、
T字路になっている道の南側に大きな椿の木があった。
子供の頃なのでより一層大きく感じられたのかもしれないが、
幹の直径は3尺近くあったかと思われ、
樹齢は優に100年を越えていたことは間違いない。
太い幹には小枝が一本も無く、
4〜5mの頂には鳥の巣のように枝が茂っていた。
途中に枝が無いので登りにくかったはずだが、
子供達は難なく登って樹上を砦のようにして遊んでいた。
水鉄砲や銀玉鉄砲を使って撃ち合うのである。
今だったら危険であると言う理由で、
このような遊びはたちまち禁止されてしまうことであろう。
 
この木に所有者がいたのかどうかは知らない。
故郷を離れ、年に数度は帰省していたが、
この木が何時切られてしまったのかは記憶に無い。
その30mほど南方にあった欅の巨木も、
いつの間にか姿を消していた。
今、庭には各種の椿が咲いている。
そして椿を見ると思い出すのは、今は無き巨木のことである。

 俳句トップへ  花畑トップへ