「303」

魂 は己がための朋友 を選ぶ−
しかる後−扉を鎖す
かの魂にとつては 畏れ多いこの世の大勢 は−
既に 存在 しない−

最早動かされぬ−高貴な馬車 に気付かうとも−待つてゐるのに−
この卑しい門扉 の前に−
揺るぎもしない−たとひ皇帝 が膝まづかうとも−
この門の外敷 に−

魂とはかういふものだ−私は溢れんばかりの世の人々から−
ただひとり を望まう−
しかる後−心配りの栓 を固く締めやう−
宝石へ と昇華する魂。

Emily Dickinson 作
Narihara Akira 訳

「Nantucket」

窓の外には花
薄紫と黄色の

白いカ−テンがふわりとさえぎる――
消毒薬の匂い――

遅い暮れ方の弱々しい光――
きんいろに輝くガラス盆の上に置かれているのは

ガラスの水差しとひっくり返ったコップ
その傍らに

鍵がひとつ、なんのためにあるのかわからない鍵――そして
今まで誰も寝たことのないような、清潔な、白いベッド

William Carlos Williams (1934)
Translated by Narihara Akira

「Why the desire for death.」

なぜ人は死を求めるか。

汚れのない白い壁か清潔な壁紙
間違って、ひっかき傷がひとつつく。
もう消せない。
だから、たくさんの線を上からひっぱって、
覆い隠して見えないようにしてしまおう。

だが、最初の傷は残る。
きんいろの血で描かれた、光輝く傷は。

つまりは完全なる生涯への希求。

from Jim Morrison 『Wilderness』
Translated by Narihara Akira

「THE CRYSTAL SHIP」

あなたの意識が水底に沈む前に
もう一度だけ口吻させて
無上の幸福の閃く一瞬
もう一度だけ口吻させて ねえ もう一度だけ

過ぎ行く日々は眩しすぎて その上痛みに満ちていて
あなたの降らす雨の中に優しく閉じ込めて欲しくなる
その口唇は一つの言葉をとりとめなく繰り返す
もう一度逢えるのよね きっと巡りあえるのね と

あなたの自由の棲む場所はどこ
表のざわめきは絶える事がないね
あなたの泣き叫ぶ理由は何?
僕をこの悪夢から解放してよ
こっちが泣きたいくらいなんだから

水晶の舟はもういっぱいだ
千の女の子と千のスリルで
あなたが何をしようともう自由だよ
そうして現世に戻る時には
一筆かいて知らせるからね

THE DOORS/Jim Morrison
Translated by Narihara Akira

「SONG OF SAND」

砂の嵐が歌う
今 この時代に流れる鋭くとがった調べを
終わりのないけだるい午後を切り裂き
土砂降りの雨を呼ぶ調べを

戦争はゲームじゃない
大人も子供も勝ち負けを思う
でもいったいどんなルールを使えば
祖国を朱に染めず
愚者だけを打ち負かすことができるというのか

砂の嵐が歌う
今 この時代に流れる鋭くとがった調べを
終わりのないけだるい午後を切り裂き
土砂降りの雨を呼ぶ調べを

Words & Music by Suzanne Vega(1992)
Translated by Narihara Akira

「TIRED OF SLEEPING」“眠り飽いて”

ねえママ
夢もそうわるくないけど
やることはいっぱいあるし
眠るのはもういいの

ねえママ
あのおじいさん何かいってるわ
目ばかり大きく開いて口は少しだけ開けて
何をいおうとしてるのか聞こえないんだけど

ねえママ
私はいつ目をさますのかしら
やることはたくさんあるのよ
もう眠るのには飽きたの

ねえママ
子供達が銅貨で遊んでるわ
膝までお金に埋もれてる
教会の階段の土ぼこりの中で

ねえママ
あの人、服の裏地を引き裂いて
身体までずたずたにしてしまった人
つぎのあたった
でも清潔な魂を私達に見せたかったんだって

ねえママ
私いつ夢からさめるのかしら
やることがたくさんあるの
もう眠るのはたくさんなの

ねえママ
小鳥が鉄線にひっかかって逃げられなくなってる
身体をひねって踊るようにもがいてる
自分の小さな命のために一生懸命たたかってるわ

ねえママ
私いつ夢からさめるのかしら
やることがたくさんあるの
もう眠るのはたくさんなのよ

ねえママ
私いつ夢からさめるのかしら……

Lylics by Suzanne Vega
Translated by Narihara Akira

「Rusted Pipe」

口がきける時がきた。
やっと話せる。
錆びたパイプをとおる水
そんな感じね。

ブクブク、ボコボコ
シュウ、ザァッ
どっと溢れて流れ出す言葉
噴水のように

長い冬に閉じ込められて
ずっとしゃべらずにいたから
うめき声やため息しか
でないかもしれないけど。

でも大丈夫、聞こえるわ
心の奥底でせせらぎが流れる音
この流れが、凍りついてた物語を
みんな溶かしてくれるはず。

身動きできる時がきた。
やっと動ける。
錆びたパイプを流れる水
そんな感じで。

ドン、ウワッ
ズルッ、イタタタ
こわばった身体で這うように進む
病人みたいに

長い冬に閉じ込められて
ずっと動かずにいたから
急に歩こうったって
滑るわ転ぶわ。

でも大丈夫、聞こえるの
心の奥底をせせらぎが流れてる
この流れが、凍りついてた物語を
みんな溶かしてくれるはず。

Words & Music by Suzanne Vega & Anton Sanko
Translated by Narihara Akira

「PEOPLE」

自分以外の人を
必要とする人々は……

(コンサートでの語り)
《私達はみな同じですよね? 違いますか? お母さんが我が子をその腕に抱く時、その喜びは、その母親がどの国に住んでいても同じです。恋人達は、どんな政治体制のもとでも、恋人同士として愛を貫きます。私達は皆この小さな惑星の上に住んでいるのです。だからもし、私は生きのびたい、と思うなら、みんなが生き残れるよう考えなければいけません。どちらかや誰かが、という考えでいるなら、全ての人間が滅びてしまうでしょう。私達はよく知っておく必要があります、つまり、人間は自分以外の人間を必要とするということを……》

自分以外の人を必要とする人々は
この世で一番幸せな人達

私達は幼い子供達 他の子供を必要とする子供達
それなのに大人のふりをして、本当に必要なものを隠している
本当の子供達より幼くふるまう私達

恋をしている人達は特別な人達
世界で一番幸せな人達
たった一人の特別な人と幸せでいられる
魂の声が深いところで囁く
自分のもう半分を見つけてやっとひとつになれた、と
もう飢え乾くことはない、
互いを必要とする人間になれば、と

自分以外の人を必要とする人々は
この世で一番幸せな人達

たった一人の特別な人と幸せでいられる
もう飢え乾くことはない
互いを必要とする人間になれば

自分以外の人を必要とする人々は
この世で一番幸せな人達

Words & Music by B.Merrill & J.Styne
Sung by Barbra Streisand(1964/1986)
This Version from the album "One Voice"
Translated by Narihara Akira

「Natural Woman」

雨の音に目覚めても 本当の意味では目が覚めてなかった私
新しい一日は重荷 退屈な夢まぼろし
それがあなたに出会う前の 私のからっぽな人生
でも あなたの暖かい愛情が 私に魂を吹き込んでくれた
私を人間にしてくれた人 それはあなた

迷子案内所で途方に暮れてた あなたが迎えに来るまで
自分の傷がどんなものか 見当もついてなかった
でも あなたのキスが教えてくれた 何のために生きるのか
あなたと幸せに生きられるなら それ以上何もいらない
私を本当の人間にしてくれた人 それはあなた

私は成長した なりたいものになれた
あなたのそばにいることが こんなに力になるなんて

First-Sung by A.Franklin(1967)
Words & Music by G.Goffin & C.King
Translated by Narihara Akira

「IT’S TOO LATE」

朝のベッドでまどろみながら ただ時を過ごしてく
何かが違ってしまった 絶対に間違いなく
二人のどちらかが変わったのか それとも
二人とも駄目になったのかしら

もう遅すぎる 手遅れなの
あんなに努力を重ねたのに
私の心の一番大事な部分が死んでしまった
それが隠すことも騙すこともできない真実

貴方と暮らすのは とても楽だった
明るいそよ風のような貴方と 何をなすべきか知っていた私
でも今 貴方は不幸のどん底 私は大馬鹿者

きっとまた お互い幸せになれる日がくるわね
でも もう一緒には暮らせない
貴方もそう思うでしょう
得たものはかけがえのないものだったし
確かに貴方を愛してたけど

もう遅すぎる 手遅れなの
あんなに努力を重ねたのに
私の心の一番大事な部分が死んでしまった
それが隠すことも騙すこともできない真実

Words & Music by Toni Stern & Carole King
Translated by Narihara Akira

「LAYLA」

何をしているんだ どうして俺を呼んでくれない
あなたの側にはもう誰もいないのに
ずっと長い間逃げ続けてきたのだろう
苦笑いではすまされないのだろう

レイラ 俺はあなたの前に膝まずく
レイラ 俺はあなたの寵を求める
レイラ もう胸の張り裂ける思いをさせないでくれ

あなたに安らぎを与えたいと思っていたんだ
あなたを汚そうなどと露ほども思わなかった
だが俺は愚か者で どうしてもあなたを忘れられない
この命など もうどうなってもいい

この状況で何をなすべきか考えよう
俺の気が違ってしまう前に
頼むから 俺には無理だなんて言わないでくれ
まず何かやらせてみてくれ 何をすればいい

レイラ 俺はあなたの前に膝まずく
レイラ 俺はあなたの寵を求める
レイラ 頼む この心の苦しみを癒してくれ

Words & Music by Eric Clapton & Jim Gordon
Translated by Narihara Akira

「HOW SOON IS NOW?」

私は末裔
犯罪的なほど小心者の末流
特別な存在でもなんでもない

あんたは黙ってて
君は間違っているなんて言わせないから
私は人間なの 愛が必要なだけなの
他の人たちとまったく同じなのよ

お相手を見つける店があるだろうって?
行って誰にも相手にされず
結局ひとりで店を出て
家に帰って「死にたい」って泣けっていうの?

すぐにいいことがあるよって?
気やすめ言わないで
あんまり長いこと待ちすぎて
希望なんて消えちゃった

私は末裔
犯罪的なほど臆病者の末流
人の目にもとまらない

あんたは黙ってて
君は間違っているなんて言わせないから
私は人間なの 愛が必要なだけなの
他のみんなと全くおんなじなのよ

Original Words & Music by Morissey & J.Marr
Sung by t.A.T.u.
Translated by Narihara Akira

「HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN」

おまえは女を愛したことがあるか
苦しみに悶えた事があるか
おまえは女を愛したことがあるか
苦しみに悶えた事があるか
結局おまえは知ってしまう
彼女が別の男の名字を持っている事を

だがおまえは彼女に惚れている
あまりにも重い恥ずべき罪
だがおまえは彼女に惚れている
あまりにも重い恥ずべき罪
結局おまえは知ってしまう
彼女が一番の親友のものだと

おまえは女を愛したことがあるか
結局彼女をほっておけないんだ
おまえは女を愛したことがあるか
結局彼女をほっておけないんだ
心の深いところにある何かが
親友の妻を押し倒す事だけはやめさせるだろうが

Lylics by Billy Myles
Translated by Narihara Akira

「RUBY TUESDAY」

どこから来たのか彼女は決して語らなかった
過去とは所詮 過ぎ去った日々
陽が照り輝く日も 真っ暗な闇に閉ざされた夜も
いつも彼女はさまよい続けていた

さようなら ルビィ・チューズデイ
誰も君の本当の姿を知り得なかった
君は毎日違う顔をしていたんだもの
だからまだ 君を失いたくなかった

自由ばかりを求めていた彼女
理由なんかきいても無駄さ
こんな風にしか生きられないのって言われるだけ
彼女はつまらない世俗に縛られないひとだったんだ
この真実の無い、無意味な人生ってやつに

さようなら ルビィ・チューズデイ
誰も君を捕まえられなかった
君は毎日違う顔をしてたんだもの
だからもう一度 君に逢いたい

「もう無駄にするような時間はないわ
夢は駄目になる前に捨てちゃいなさい
正気を失って、夢もないんじゃ、死んでいるのとおなじことよ
人生ってあんまりよね?」

さようなら ルビィ・チューズデイ
誰も君に罠をかけることはできなかった
君は毎日すりぬけていった
だから 君を手にいれたかった

おわかれなんだね ルビィ・チューズデイ
誰も君をとらえることができなかった
君は毎日違う顔をしていたんだもの
だからまだ、君がいとしい

THE ROLLING STONES
Translated by Narihara Akira

「Porpoise Song」

ああ、空に浮かぶ時計が鼓動を刻んでいる
言い残した事が沢山あるのに
どの顔もどの声もだぶって区別がつかないから
きれいな映像も結べない
大人になりたい、じっくり耳を傾けたい、この瞳で見たい
空に向かって泣く
でもイルカが笑ってるんだ
もうお別れだよ、さよならなんだよ、と。

ゆらりゆらりとキリンの背に揺られている
笑っている間は、なべて世は事もなしだ
僕の自我がお城と王様と人生の大事の歌を歌う
感じてみたい、何が本当で本物なのか
生きているというそのものが偽りらしいけど
ほら、イルカが待ってるだろう
さようなら、もうお別れなんだ
お別れなんだよ……

Theme from “Head” (from the Original Soundtrack of the movie“Head”)
Words & Music by C.King & G.Goffin
Sung by M.Dolenz(The Monkees/1968)
Translated by Narihara Akira

「Keep On」

どうして始めたかを考えるのも大事だが
今更どうでもいい時だってある
いったん口に出したことだって取り消して構わないんだ
そうだろう?
結構うまくやれてるんだ、このまま続けていけばいい

意地をみせたいだけなのか 本当にしたいことなのか
それだけは心に止めておこう
一度始めたことだからって やめちゃいけないってことはない
単純な連中は 勝ったら相手の命を奪ってもいいとまで思うらしいが
ナンバーワンより素敵な歌(ナンバー)の方がずっといい

どうして始めたかを考えるのも大事だが
どうでもよくなることもある
いったん口にしたことだって取り消して構わないんだ
そうだろう?
せっかくうまくやれてるんだ、このまま続けていこう

虚ろにさまよう瞳を持つと 穏やかな生活をしていても
過去を無駄に懐かしがったり 目の前が見えなくなったりする
攻撃的な気持ちを持つと 心無い愚か者のすることを
つい自分も真似てしまいそうになる

どうして始めたかを考えるのも大事だが
今更どうでもいい時もある
いったん口にしたことだってやり直しがきくんだ
そうだろう?
結構うまくやってきたんだ、投げ出すこともないだろう

光の中の翳の部分を少しずつ変えてゆよう
自分の仕事がやれる時まで 用心しながら進んで行こう
夜を歩く君を明るい未来が招く日まで
君を引きずり下ろそうとする悪意の招きに魅かれないよう

どうして始めたかを考えるのも大事だが
今はどうでもいいじゃないか
いったん口にしたことだってやり直しがきくんだ
そうだろう?
結構上手にやってきたんだ、このまま続けていけばいいのさ、
できるなら

Words & Music by Michael Nesmith(1972)
Translated by Narihara Akira

「Wish You Were Here」

君には天国と地獄の区別もつかないんだ
曇ひとつない空と嵐の区別もつかない
緑豊かな大地とつめたい鉄の檻の区別も
暖かな微笑と感情を隠した仮面の区別も
君はそれで判ってるつもりなのか?

君の憧れの存在は亡霊にすりかえらえてしまったじゃないか
木々は焼き払われて無惨な灰と化し
涼しいそよ風は熱風にかわり
成長のかわりに味気ない安定を与えられて
君は戦場を歩むことよりも
鳥籠の中の主役でいるほうを選んだんじゃないか

どんなに、僕がどんなに願っているか
君にここにいて欲しい
僕等は小さな金魚鉢の中で溺れる迷える二つの魂だ
年を重ね同じ場所を走り続けて
そしてお互い何を見つけた?
変わらぬ不安、同じ恐怖だ
ここにいて欲しい――ここに君がいて欲しい。

Words & Music by Roger Waters & Dave Gilmour(PINK FLOYD/1975)
Translated by Narihara Akira
(注:ピンク・フロイド自身が邦題に「あなたがここにいてほしい」を指定していますが、あえて語順等を無視しています)

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last updated:2003.5.1
All poems translated by Narihara Akira
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