『女の子なら、間に合ってます』


忘年会も、たけなわの頃。
「繭子さんて、なんで独身なんですか」
「いや、単に御縁がなかっただけで」
「僕が責任もって素敵な男性を探しますよ。どういう人がタイプですか」
「特にないです。おまかせしますよ」
「僕を信じても良いんですか」
「ちゃんとした家庭を築いてる人は信用できますから。桑田さん、愛妻家ですし」
「僕が愛妻家?」
「いつも東京新聞を読んでるでしょう。結婚前に奥さんが読んでたっていうから購読したのに、彼女が読まないから持ってきてるって。やめちゃっていいのに、いい旦那さんだなあと」
「いや、僕は別に」
お開きの後も、まだ彼は呟いていた。
「僕、探しますからね。本気ですから」
どうでもいいから、奥さんを大事にしてくださいよとは、もちろん言わなかった。
悪い人では、ないのだけどね。





(2017.1脱稿、【静岡文学マルシェ】第一回、ポストカードギャザリング用書き下ろし
オリジナルタイトルは「ふったおとことふられたおんな」。お題は白河紫苑様より。
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Narihara Akira
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