銃器デザイン


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米空軍パイロット用サバイバルガン(IMP aircrew survival weapon)として計画されたBushmaster Armpistolです。
これは、パイロットの射撃スキルで100ヤード先の敵を倒せること、飛行機のシートと共にパラシュート降下できるサイズ等の条件がありました。
しかし、この計画はベトナム戦争終結と共に雲散霧消してしまいました。
コルト社により.221カートリッジで設計が進んでいたIMP-221SMGですが(写真右)、戦後マック・グエン(Mack Gwinn)氏により.223Remで市販されました(写真中)。
因に現在のBUSHMASTER社は資本家がGwinn Firearmsを買収して作った会社で、この銃の設計とは無関係です。
下のP90と同じブルバップレイアウトですが、マガジンが邪魔なのでグリップ部分が左右に45度づつ回転します。
面白いデザインなのでABS樹脂でレプリカを作りました。   '11 11/25



ベルギーのFN P90です。1996年のペルー日本大使館占拠事件でペルー特殊部隊が使用して有名です。
サブマシンガンと違い、拳銃弾ではない軽量高速弾を使用し、100mの距離でもケブラーの防弾チョッキや現用米軍ヘルメットを楽々貫通するそうです。
その割に、壁や床に当たり跳弾になると急激にエネルギーを失い、室内戦での危険が少ない弾丸です。
対テロ特殊部隊等に配備されメディア露出が少ないので、我々にはあまり馴染みがない銃です。
1987年に完成、全長500mmしかないのに充分な銃身長230mmのブルバップレイアウトで、
バレル上方に前後方向に水平に装着する樹脂製マガジンは50発の容量があり、伏せて撃つ場合も邪魔になりません。
照準線が短いブルバップですがコリメーターサイト(ダットサイト)採用により弱点を克服しています。
室内戦に有利なコンパクト設計は人間工学的に優れたグッドデザインです。 '09 12/28


SHOTSHOW 2008で話題になった折り畳みサブマシンガンのMagpul社製FMG-9です。Folding Machine Gunね!
80年代に同じコンセプトのAres FMGをユージンストーナー(M16でお馴染み)が開発し、
同時期にBoatman M21というラジオに見せかけたものも作られました。
これは映画Robocopに登場しています。
90年代にはロシアのKBP社がPP-90という良く似たものを開発、バリエーション展開もしています。
Magpul社製は素材がポリマーになり、ピカティニーレールを採用した形状もスマートで、工業デザイン的に興味深いものになりました。

Magpul FMG-9

で、ABS樹脂製レプリカを作りました。

'09 11/03


サイト兼キャリングハンドルを作りました。ライトも装着。  '09 12/18



Savage .45ACPです。右の図は.32ACP複列マガジン10連発です。
米陸軍は米比戦争(1899年-1913年)の経験から、それまでの制式拳銃であるコルト38口径リボルバーから45口径拳銃へのトライアルを開始しました。
最終的に残った2丁が後のM1911となるブローニング設計のコルトと、このサベージでした。
結果は、この時まで60年間も米陸軍の制式拳銃を提供してきたコルトの「出来レース」で、 最後まで改良を加えなければ勝利しなかったコルトに対して、サベージの完成度の高さが窺えます。
回転バレル、ストライカー撃発方式8連発で、ネジを1本も使わないユニークな設計でした。この後同社は拳銃生産をやめてライフル専業になります。
'08 9/12



Bergmann Bayardです。
1910年、ヨーロッパ各国の軍用ピストルがリボルバーからセミオートに移行するのに対応し、
デンマーク軍はドイツ人テオドール・ベルグマンが設計しベルギーでライセンス生産されていたベルグマン・ベアードM1910を採用しました(9x23mmカートリッジを使用)。
1914年に第一次世界大戦が始まり、ベルギーはドイツに占領されデンマークへの供給も停止されました。
1918年に大戦が終結すると国産化の契約を結び、1921年、M1910/21として制式選定されました。
デンマーク以外ではスペイン軍、ギリシャ軍も採用しました。この時代はパラベラム(ルガー)、ブローニング、モーゼル(C96)などの手強いライバルがひしめいていました。
外観はモーゼル(C96)に似ていますが機構的にはかなりの違いがあります。100年後の現在、セミオートピストルはブローニング方式が主流になりました。 '08 8/06



Steyr M1911です。1911年〜1919年製造。M1911というと米軍のM1911が有名ですが、これは同じ時代にオーストリアで設計された大型自動拳銃です。オーストリア・ハンガリー軍、チリ陸軍、ババリア王国(ドイツ)軍、チェコ陸軍、トルコ軍、ルーマニア警察などが使用しました。9mm Steyrカートリッジを使用。
カートリッジの装填はグリップ下からのマガジン式ではなく、スライド上部からのクリップ装填です。
バレルにはライフリングによる弾丸の回転から反作用が加わりますが、これを利用したロータリーバレルによるディレイドブローバックであることがこの銃の面白いところです。バレルの回転でスライドとのロックを解除する方式です。
商業主義は微塵も感じない、無骨とも言えるこの時代のデザインは魅力いっぱいです。 '06 12/17




ジウジアーロデザインのBeretta 90twoです。どうもベレッタ自身が今まで(ジウジアーロ採用以前)の造形の美しさに気付いていないようですね。この新型は、グリップの交換システム以外はM92FSの外装替えで、機能に繋がらない表面装飾に終始しています。変えようがないものを無理矢理厚化粧しているように見えます。機能を造形するのが工業デザインであることを巨匠が知らない筈がありません。'06 11/09




Beretta CX4 Stormです。ジウジアーロデザインが続くベレッタですが、最大のマーケットであるアメリカ向けの(つもりの)デザインは、実は保守的な人が多い銃器愛好家には受けが悪いようです。軍や警察での実績で評価が左右される一般市場では、デザイナーのネームバリューやころころ変わるラジカセのような意味のない造形では購買には繋がりません。
M4カービン(右写真の上)のようにべトナム戦(M16)からの改良を重ねた歴史が評価される市場で、畑違いの勘違いデザインは、日本企業のような器用な社内咀嚼をしないと商売には結びつけられません。'05 8/15




Beretta PX4 Stormです。いろいろ弱点のあったM92シリーズに見切りをつけたベレッタ社は、軍警察用に新製品を発表しました。(米軍制式採用になったのが不思議な)ロッキングブロックによるトラブルを避け、M8000シリーズ同様のバレル回転ロッキング方式を採用しました。
売れなかったM9000Sと同じ巨匠ジウジアーロを採用したデザインは、新方式でベレッタの特徴であるオープントップスライドが使えないので、斜めにカットする大胆さを見せています。こういうハッタリは自動車デザイン(特にラテン)の手法ですが、左右対称にできない銃器では右側の造形が思い通りにならず、エジェクションポート付近はM8000シリーズに似ています。
ポリマーのフレームもM9000Sほど余計なラインは少なく、アンダーレールマウントやサイズ変更できるグリップなどで軍警察の採用を狙っています。巨匠の「奇を衒う」デザインは相変わらずですが、多少は反省しているみたいですね。
軍や警察で復活し始めている45口径(0,45インチ)です。写真3枚目は右からM9000S,M8045,M92FSC(コンパクト)です。'05 5/10




Beretta M9000Sです。いよいよこの業界も有名デザイナー起用です。実用性のみで評価されるこの業界でも、「美しさ」「機能美」という評価軸は存在しますが、「デザイナー」を売り物にする時代になってきたということでしょうか。カーデザイナーであるジウジアーロは、確かに天才的なデザイナーですが、自動車以外のデザインでは決して抜きん出ているとは思いません。このピストルも、意味の無い曲線を多用し、気持ちの悪いスタイリングだと思います。試用レポートによると、セーフティーレバーの使い勝手が最悪とのことです。
一般に、有名デザイナーに依頼すると高額なデザイン料が必要ですから、予算に対する成果として、出てきた案を没にはできません。また「先生」のデザインなので社内の「素人」が意見を言えません。「先生」は自分が依頼された以上、自分の存在をアピールする為に個性を思いっきり出します。その結果、ヘンテコなデザインでも商品になってしまうことが多いのです。自動車、カメラ、家電でもよくあるんです。
右の写真の上は米軍制式拳銃Beretta M92F(米軍名M9)で、同社伝統の造形ですが、この違いを市場はどう見るのでしょうか。SF映画「マイノリティーリポート」では未来的雰囲気を出してはいるんですけどね。'04 6/16