2002年8月1日(木)朝日新聞(大阪本社)朝刊第1面トップ記事
住基ネット利用事務、対象93の4割
官庁・自治体稼動1年以内/コスト高敬遠
「住民基本台帳ネットワーク」(住基ネット)で手続きが簡略化されるという93事務のうち、5日の稼動から1年以内に動き出すのは4割の38事務にとどまることが朝日新聞社の調査でわかった。事務を直接扱う各省庁や自治体は、多額の設備投資が必要なうえ、個人情報の保護に不安の声が出ているとして、利用に慎重な姿勢を見せていた。(27面に関係記事)
改正住民基本台帳法は①恩給や共済年金の支給②雇用、労災保険の給付③建設業の許可④パスポートの記載事項の訂正──など93の事務で、国や地方自治体、公務員共済組合などが住基ネットの情報を利用できると定めている。総務省は、5日以降、これらの事務手続きで「住民が住民票の写しを取る必要がなくなる」などと説明している。」
調査は、法律で住基ネットの利用者とされる中央省庁や地方自治体、団体の一部に利用の見通しを聴いた。その結果、住基ネットの始動1年以内に利用見込みがあるのは、計38事務にすぎなかった。このうち9事務は、国や地方自治体の元職員への年金支給などで、一般市民と関係が薄い。
厚生労働省は93事務のうち20の事務の利用者になっている。しかし、実際に使うのは「戦傷病者戦没者遺族等援護法」の年金支給だけ。雇用保険の申請でも使用可能だが、ハローワークなど全国約600カ所の窓口に専用の端末を置かなければならず、担当者は「受給申請の本人確認は免許証などで十分。費用対効果を考えるとメリットが少ない」。建設業の許可など14事務で利用できる国土交通省もしばらく使う予定がない。同省建設業課の担当者は「国民の間に住基ネットへのアレルギーがあるので、配慮している」と言う。
稼動する38事務のうち26事務は、パスポートの記載事項訂正や建設業の許可などで、地方自治体が独自の判断で導入できるとされている。しかし、専用端末の整備費がかかることから導入をためらう自治体も多い。
財政難の大阪府は住基ネットの担当課に2台を置くだけで、当分は事務に活用する予定はない。「セキュリティーが確保されるのか見極めたい」という。京都府の担当者は「電子政府の将来像が見えないなかで、住民票の省略に多額の金をかけることにどれだけの意味があるのか」と話した。
徐々に開始/安全な面も
総務省市町村課の話
徐々に始まっていく方が安全な面もある。セキュリティーの確保をしながら、順次、利用が拡充できるよう努めていきたい。
住基ネットを1年以内に使う事務
<注:( )は事務数>
【国関係の事務】
- 恩給法、執行官法、国会議員互助年金法、地方公務員等共済年金法、国家公務員共済年金法、国家公務員共済組合法、私立学校教職員共済法などによる年金支給(7)
- 地方公務員災害補償法による公務上の災害・通勤災害の補償、福祉事業の実施(3)
- 電波法による無線局の免許(1)
- 戦傷病者戦没者遺族等援助法による年金支給(1)
【地方自治体関係の事務】
- 消防法による危険物取扱者免状、消防設備士免状の交付、消防組織法による非常勤消防団員にかかる損害補償、退職報償金の支給(4)
- 旅券法による一般旅券の渡航先の追加など(3)
- 職業能力開発促進法による職業訓練指導員の免許、同試験の実施、技能検定に関する業務(3)
- 児童扶養手当法による児童扶養手当の支給(1)
- 特別児童扶養手当等の支給に関する法律などによる特別児童扶養手当などの支給(4)
- 建設業の許可(1)
- 浄化槽工事業の登録(1)
- 宅地建物取引業の免許、宅地建物取引主任者資格の登録(2)
- 旅行業法による旅行業者代理業などの登録(1)
- 通訳案内業の免許(1)
- 建築士法による2級建築士、木造建築士の免許、建築士事務所の登録など(4)
- 公害健康被害の補償等に関する法律による指定疾病にかかる認定(1)
Copyright(C) 2005 やぶれっ!住基ネット市民行動
初版:2005年02月20日、最終更新日:2005年11月05日
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