ホリスティック医学・健康学“コラム”No.54

“肉食”が引き起こす地球規模の食料問題〈2〉――「食物の浪費」と「人間のエゴ」

2024/05/31

肉を多食する現代人の背景には、地球規模での“食物の浪費”という重大な問題が存在しています。現在、地球上で家畜の飼料(エサ)に回される1年分の穀物があれば、世界中の人々が、それを1日1.5カップずつ、1年間食べ続けることができるのです。

世界の穀類の生産量は年間28億トン(2023/24)ですが、そのうち、8億トン以上が飼料として消費されています。地球上で消費される穀類の約3分の1は、人間ではなく家畜が食べているのです。農林水産省の報告によれば、穀類によって牛を育てるためには(1kgの牛肉を得るためには)、その11倍の穀類(*トウモロコシ換算)が必要とされます。(*食肉1kgの生産に要する穀類の量は、ブロイラーで4kg、豚で6kgと言われています。)国連食糧農業機関(FAO)の報告では、2032年には、全穀物の41%が食用、37%が飼料用、残りが、バイオ燃料等が占めるようになると推定されています。肉の需要の拡大にともない、飼料用穀類の占める割合が、食用の割合に近づいているのです。

第三世界(アジア・アフリカ・中南米などの発展途上国)では、ごく限られた土地所有者によって農地の大部分が支配されています。そうした一握りの権力者は、大衆の食料を自分の農地でつくろうとはしません。国際市場で競争力を持ち得る農産物(バナナやコーヒー)をつくつて利益を得ようとします。また、生産された穀類の多くは家畜の飼料に向けられていきます。

もし、世界中の人々が肉食をやめることができれば、地球上の飢餓の問題は、たちどころに解決されることになります。しかし、現実は、大量の穀類が家畜のエサに回されるのを見ながら、貧困者はそれを食べることができずに飢え死にするという悲惨な事態を招いています。

肉食は、単に健康だけの問題ではなく、地球規模での“人間のエゴ”という問題でもあるのです。カネにものを言わせて自然の恵みである穀類を独占し、莫大な利益を手にしている人間がいます。しかもそうした先進諸国の人間は、穀類を無駄づかいして生産した肉を食べすぎて病気になっています。その一方で、生きるための最低レベルの食べ物もなく、飢え死にしていく大勢の人々がいるのです。

地球の環境問題を論じながら肉を食べるということは、大きな矛盾です。“肉食”という狂った欲望とエゴの渦の中に、全世界が巻き込まれてしまっているのです。


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