もうひとつ先の治療へ 「針灸治療」と「分子栄養学」
私の体験から
ビタミンは足りているのでしょうか
様々なビタミンの一つに、ビタミンB2があります。一般に成人男性の一日の必要量は1.2mg、女性で1.0mgとされています。
ビタミンB2は、代謝や呼吸、赤血球の形成、抗体産生、成長に不可欠なビタミンで、頭髪や皮膚、爪をはじめ、健康状態の
維持に大きく関わり、眼科領域では白内障、ドライアイ、充血、眼精疲労などの予防や治療に役立つ基本の栄養素です。
水溶性であるビタミンB2を摂取した場合、体で使われなかったビタミンB2は、尿などに排出されます。この時、黄色く着色
しますので、体にとって余分な場合はすぐに分かることになります。私の場合は食事に加えてサプリメントで補っているため、
概ね一日に20mg〜25mgと推定できるのですが、これは成人男性の一日の必要量の約15〜20倍程になると思います。
こうして自分の尿を眺めて見ると、当然ですが、きれいな黄色に着色しています。ところが毎日観察してみると、ほとんど着色
していない場合があります。こういう時は振り返ってみると、前日の仕事が忙しかった場合や、プールで歩いたことが思い
当たります。つまり体を使った時には、必要量の約15〜20倍のビタミンB2を摂取していても、必要十分な需要があったか、
あるいは足りなかったということになると考えられます。
「分子栄養学」ではビタミンB2に限らず、水溶性ビタミンの必要量は、個人の遺伝的な体質や生活環境の違いで100倍、
脂溶性ビタミンでも10倍の違いがあると説明されています。それでは足りない場合はどうなるのてしょうか。必要量がある
程度の期間満たされない場合、欠乏症として表面化しますが、一時的な場合は、僅かな機能低下や抗酸化作用が十分に
発揮できなかったという形で現れます。これは例えば疲労感とか、なんとなく体の調子が良くない等という程度です。
しかしこれが長く続いていくと、やがては病気の発症や進行という形で現われてきます。
今回ビタミンB2を例に出したのは、尿が黄色く着色することから、説明し易いためです。他のタンパク質、ビタミンなども
私たちが必要量としている量を摂れているかどうかは、体質の違いや生活環境の違いにより、個々の栄養素として足りて
いるものや、足らないものがあると考えられます。そしてこのことが、短期的には疲労感や体の不調、長期的には成人病を
はじめとした慢性疾患の発症や進行に関わってきます。かつては食糧が不足して、欠乏症が問題になりましたが、現在は
炭水化物に代表される過剰な栄養素と、不足しがちな栄養素が同時に存在して、様々な慢性疾患に関わっています。
「分子栄養学」では、特にタンパク質やビタミン類で、個々の遺伝的な体質や生活環境の違いを超えて、全ての栄養素が
少なくとも必要なだけ満たされる量を摂取することが基本になります。このことは、体の不調から慢性疾患の発症までを
防止していくことに繋がり、実際、三石巌先生は95歳で亡くなるまで、毎年スキーを楽しむほど健康であったそうです。
また「分子栄養学」の栄養療法を取り入れ、自分自身の健康管理に活用されている医師も、少なからずあるようです。
日本の健康保険では、栄養療法による治療や予防医学は認められないので、積極的に患者さんに勧めることが、されて
いないのは残念な話です。
視力を上げるために必要なもの
千秋針灸院には、NIDEK社のSC-2000という液晶視力表があります。眼科針灸専門といっても、自慢できる(?)測定器は
これだけです。他の測定は全てアナログ・・・という話はどうでもよいのですが、この視力表で私の視力を測定してみました。
正確な結果を出す為に、体調による変動を受け難くするため、日や時間を変えて3回測定し、平均値を取ることにしました。
最近まで私は、眼科の患者さんへの説明の必要もあって、毎日ルテイン10mg、ビタミンCを約350mg、サプリメントとして
摂取していました。飲み始めて1ヶ月経った時の視力(3回の平均値)は概ね1.2というところでした。その後、今度は1ヶ月
サプリメントを飲まないで視力を測ったところ、1.0〜1.2へと半段階ほど落ちていました。僅かに調子が良くない感じでした。
そして最近、様々な栄養素が含まれたマルチビタミンに切り替えたのですが、もしかするとプラシーボ効果(?)もあってか、
なぜか視界がクリアーに見える気がしていました。そこで2週間程してから視力を測ると、1.5〜2.0で、ルテインとビタミンCを
飲んでいた時よりも、更に1段階以上良くなっていました。プラシーボでは無かったということです。
私の飲んでいたマルチビタミンのサプリメントは、アメリカからの輸入品で、各ビタミンの含有量がかなり多いため、1日の
目安とされる量を、半分以下に減らしています。このためビタミンCは約500mgですが、ルテインは2.5mg程しかありません。
ルテインは以前に比べて4分の1に減らすことになりましたが、他のビタミンや亜鉛、クロム、セレン等といったミネラルなど、
体や眼の働きに必要な様々な栄養が入っているため、結果として眼の機能が高まり、視力が向上したと考えられます。
眼科疾患では一般に伝えられているような、ルテインやアントシアニンは摂取した方が良いのですが、眼の働きを必要な
栄養面から分析すると、ビタミンとミネラルだけでも、A、B1、B2、B6、B12、C、E、H、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、
ユビキノン、鉄、銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム、クロム、モリブデン、ヨードが必要で、特にビタミンA(網膜や硝子体)、
ビタミンC(硝子体、水晶体、活性酸素除去)、コリン(神経伝達)、亜鉛(酵素の活性に関わり、眼球内に存在)、クロム
(角膜)は特に重要となります。ルテイン等のβカロテンは、ビタミンAの前駆体として、紫外線から網膜を守る働きをします
が、眼が正常に働き、また病気から治癒していくためには、もっと多彩な栄養素を必要としているということが分かります。
また気付いた方があるかもしれませんが、私は「分子栄養学」やアメリカで推奨されるサプリメントの量を、半分程度まで
減らしています。その理由として、現在41歳の私は、もしかすると50年近く、栄養療法を続けていくことになります。今後
50年の間に、どのような情報や常識が出てくるのかは見当もつきません。50年前には活性酸素の存在さえ、知られては
いませんでした。こうして考えてみると、現在の様々な常識は、必ずしも将来も常識であるとは限りません。ビタミン類の
長期に渡る大量摂取が比較的安全と考えられているのは、2009年現在の常識に過ぎないかもしれないからです。
厚生労働省が5年毎に改定する「日本人の栄養摂取基準」には許容上限摂取量が掲載されていますが、長期間サプリ
メントの形で摂取する場合には、私は許容上限摂取量の半分程度までが安全と考えています。そして普段の食事から
もう少し摂取するように気を使うべきと思います。ただし控え目にする必要を感じるのは、「分子栄養学」やアメリカでの
推奨量に対してであり、一般の日本のメーカー製造によるマルチビタミン等は容量も少なく、推奨量では必要量を満たさ
ない場合が多いようです。製品毎に異なりますが、国内メーカー製造品では概ね推奨の2倍は必要になると思います。
私の栄養療法の出発点であるはずの「分子栄養学」に対し、やや批判的に書いた部分もありますが、病気からの回復を
目指す場合には、より大量の栄養量が必要かもしれません。しかし私には針灸治療という、実績のある治療法を既に
身に付けています。針灸治療は末梢までの血流を改善し、必要な酸素や栄養を確実に供給したり、老廃物を速やかに
排出する助けをします。針灸治療と栄養療法の併用は、非常に大きな可能性を持つと思いますので、「より安全に」、
「より効果的に」、「より経済的に」、もうひとつ先の治療を目指していきたいと考えています。
私は家族やスタッフの支えもあり、更に今年から「分子栄養学」を基本とした栄養療法や軽い運動も取り入れ、少しずつ
体調も比較的良い日が増えてきました。必要な栄養条件を整えるということは、回復力を高め、病気を遠ざけることに
つながります。様々な病気や症状で苦しまれている患者さんにとって、栄養面での回復に必要な条件を整えることは、
とても大切なことです。体調が悪ければ、気持も後ろ向きになってしまいます。栄養条件の充実は体の健康だけでなく、
心の健康までも左右することを、私はクローン病との闘いから経験的に、また「分子栄養学」から科学的に知りました。
これから少しづつお伝えしていくつもりです。