もうひとつ先の治療へ 「針灸治療」と「分子栄養学」
はじめに
私が上海で中医学による針灸治療に出会って既に15年が経ち、千秋針灸院を開業してからでも、気がつけば間もなく10年に
なろうとしています。生涯研鑽は続けなければなりませんが、ようやく治療家として、一人前といえるところまで来られました。
これまで純粋に中医学による針灸治療に絞って追及し、特に眼科領域の難病治療に対しては、通常の針灸治療院としては
考えられない位、多くの患者さんを治療させていただき、統計的な症例報告が可能なほどの実績を残すことができました。
鍼治療は副作用なく血液循環を改善し、体の各部の様々な機能を高め、病気からの回復や健康を維持する上で、理想的な
治療法の一つです。私の報告している眼科領域の統計症例報告も、そのことを裏付けるものです。
しかし残念ながら鍼治療でも、全ての患者さんや病気を完全に治癒させたり、そこまでいかなくても、まだ全ての方へ確実な
改善を約束できるものではありません。私自身は今後も針灸の技術や効果的な治療法の追及を続けていきますが、既に眼科
領域の難病だけでも、延べ1万人以上の患者さんを治療させていただき、大きな効果と共に概ね限界も知っているつもりです。
私が中和鍼灸(医療)専門学校の学生時代のことですが、卒業研究の際、他の班が、鍼をする前後で末梢(指先)の血液に
どのような影響があるかを顕微鏡で比較するということをやりました。私は被験者役になり、まず指先から血を採り、背中に鍼を
した後、再度指から血を採って顕微鏡で比較しました。鍼をする前の顕微鏡写真は、赤血球がドーナツを重ねたように重なり
合っています。この状態では酸素や栄養は、あまり上手く運べない状態です。そして鍼をした後には、重なり合った赤血球は
見事にバラバラになりました。これなら赤血球は酸素や栄養を効率良く運ぶことができます。以前に流行った「血液サラサラ」の
状態ですね。
この実験では背中にたった1本の鍼だけの結果ですが、指先の血液の状態は驚くほど変化しました。このように鍼は、非常に
優れた末梢までの循環改善効果があります。このことは一般に鍼治療をすると薬が効きやすくなることでも証明されます。
また当院の実績では、パーキンソン病の患者さんに鍼治療を行うと、服用しているドーパミンの持続時間が、1.5〜2倍近くまで
長くなります。眼圧を下げる点眼薬を使用している患者さんは、針治療を加えると、眼圧は更に低下することが分かっています。
針灸治療はこうしたことも含め、患者さんが実感する以上に体に対する様々な改善効果があり、一般に考えられている以上の
多様な病気や症状に、治癒力を発揮することができます。
では治る人と、治らない人がなぜあるのか。どこで分かれていくのか。ということは、私の10年余りの治療家としての経験から
ある程度予測はつきます。基本的な体質、病気の種類や軽重の違い、生活や職場といった環境の違い、そして健康や治療に
対しての姿勢の違いなど、誰もが同じ条件ではありません。しかし、治る人の割合を増やしたいと考えるなら、様々な条件の
違いをカバーするような、また安全でしかもそれほど患者さんの負担にならないような、効果的なサポートが必要になると思い
ます。患者さんは、みな異なるという前提の上で、できるだけ多くの改善や治癒を目指していきたいものです。
なおタイトルの、「もうひとつ先の治療へ」という言葉の意味は、従来の「針灸治療」に、これからお話しする「分子栄養学」からの
アプローチを取り入れ、これまで以上に治療効果を高めることと共に、現代医学では不十分な「未病治」=病気を未然に防ぎ、
健康づくりを支援するために、科学的な手法で実現したいという思いを込めています。
「分子栄養学」との出会い
今年で41才になる私は、完全寛解はしているものの持病のクローン病の事もあり、将来の健康状態に一抹の不安があります。
今年から週一回ですが、プールへ通うようになり、栄養面でも少しずつサプリメントなどに興味を持っていたところです。
そんな時に薬剤師の方から紹介していただいた本が、『医学常識はウソだらけ』 三石巌著 祥伝社黄金文庫 でした。
抗加齢医学会から送られてくる雑誌で、栄養に興味は持ち始めていたのですが、タンパク質やビタミンの役割、生命活動は、
病気を作り出すものや健康を支えるものも、基本的に化学反応であること、活性酸素が健康や病気に大きく関わっていること等、
部分的に知ってはいたのですが、とても新鮮に映りました。また、サプリメント等は患者さんによく質問されることもあり、自分
自身でも栄養をしっかり研究してみようと思うようになりました。三石巌先生は『分子栄養学』の創始者であり、既に故人ですが、
80歳代後半に書かれたという本とは思えないほど論理的、科学的であり、現在でも新鮮な内容を保ち続けています。
私が治療家として薄々感じていたことですが、どんなに優れた針灸治療でも、それだけではどうしても不可能なこと・・・。
それは病気からの回復に、栄養面での必要条件を揃えることだと思います。針灸治療は前述のように機能や効率を高めますが
治癒力を十分に発揮させるには、体の材料である栄養が不可欠です。十分な栄養が揃った上で、針灸治療で機能や効率が
高まれば、医薬品や手術に頼る必要を大幅に減らすことが可能になると考えられます。私がこう言えるのは針灸治療だけでも
千秋針灸院では治療効果と共に、多くの場合に眼科領域での薬を減らしたり、手術を回避できてきた実績があるからです。
また本来、『分子栄養学』に基づいた栄養療法は、一般の栄養学で知られる必要な栄養量に比較して、かなり多量の摂取が
必要とされます。しかし安全とされるビタミン類でも、種類によっては長期間の大量摂取に若干のリスクを伴う場合や、未知の
問題が出てくる可能性もあります。先に針灸治療が医薬品の効果を高めるという話を書きましたが、針灸治療と栄養療法を
併用することで、栄養の利用効率が上がり、より安全と考えられる比較的少ない栄養量でも、効果の発現が期待できます。
私は、この病気に○○が効くなどというレベルではなく、針灸治療と並行して病気からの回復をサポートできるような、安全で
確かな栄養療法を、多くの患者さんを始め、自分の健康の為にも追及していきたいと考えるようになりました。まだ勉強は
始めたばかりですが、故三石巌先生の「分子栄養学」を出発点として、眼科領域を中心に健康を獲得するための栄養療法を、
針灸の基礎である中医学と、最新の抗加齢医学から修正を加えながら、これまでの医療のもうひとつ先を目指して、少しずつ
作り上げていこうと思います。
抗加齢医学や眼科学は新しい知見が続々と出ている分野です。確かな内容になるよう努力しますが、新しい情報での修正が
必要になる場合も考えられ、絶対的なものではないことは、お断りしておきます。また現在のところ、当院にてサプリメント等を
扱う予定はありません。当院は針灸の専門的な技術を提供する治療院であり、栄養補助食品等の販売で利益を得るつもりが
無いからです。このことは考え得る最良の栄養療法の情報を提供するために、最低限必要な条件と思います。特定の業界や
業者との癒着がありませんから。
様々な理由により当院の針灸治療単独では不十分な場合、また眼を含めた様々な難病治療への補助療法として関心のある
患者さんに、納得していただけるのであれば、お勧めするという形ですが、当院や提携治療院を含めて、まだ針灸治療を
行なっていない方も、特に眼科疾患の患者さんは参考にしていただる内容にしていきたいと思います。このページは少しづつ
作成していきますので、よろしくお願いいたします。 2009.10.8
なお、現在入手可能な『分子栄養学』の入門書として、以下の三石巌先生の書籍があります。
『医学常識はウソだらけ』 祥伝社黄金文庫 ...入門書として大変分かりやすく、お勧めの本です。
『健康自主管理のための栄養学』 阿倍出版 ...以下の5冊は、入門書で興味を持たれた方向けの、少し専門的な内容です。
『健康自主管理と食品の常識』 阿倍出版
『老化と寿命 「とし」をとらない秘訣とその実践』 阿倍出版
『ガンは予防できる 活性酸素と、ガン予防の新段階』 阿倍出版
『成人病は予防できる その理論と実際』 阿倍出版
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