セーラー服ザンちゃん
2 お兄ちゃん
ぱしんっ、ぱしんっ。ミレーは、泣きじゃくるザンを押さえながら、小さなお尻を叩く。『悪い子は、厳しくお尻を叩いてあげなきゃね。』ミレーは、微笑みながらそう思う。
「今いくつ?」
「36ぅっ。」
「違うわ。38よ。間違いは、10回追加ね。」
「ごめんなさあい。でも、多く間違ってないよお…。」
「あら、ザンは、お母さんの決めた事に逆らうの?」
「あーん。もう絶対、お酒を飲もうとなんてしないから、意地悪言わないでー。」
「仕方ないわね。いいわ、今回だけよ。でも、次間違えたら、10回追加よ。」
「はい。お母さん、ありがとう。」
ぱしんっ、ぱしんっ。ミレーはまた叩き始めた。
100叩きが終わる。あれから、一回も間違わなかった。ザンは、ミレーの膝から下ろされて、お尻を押さえて泣きじゃくる。ミレーは、ザンが持ってきた鞭をひゅんっひゅんっと振った。ザンは、その音に身を竦めて、母を見上げた。
「次は、これで15回ね。」
「もう、やあっ。」
「あら、そんな事言うの?じゃあ、また最初から、お仕置きをやり直しましょうか?」
「えっ!?…あーんっ、お母さん、ごめんなさあい。」
ザンは、母の膝にすがりついた。「我が侭言わないから、許してぇ。」
「さっきから、言いたい放題だと思うけど?」
ザンは、うつむく。ミレーは、その様子を見て、笑いたいのを堪えながら言う。「どうしたら許してもらえるかしらね。」
「…………。…お母さんが喜ぶ事する。」
「それじゃあ、もっとお尻を叩かなきゃね。…どうしてそんな顔をするの?だって、わたしの喜ぶ事をしてくれるんでしょ?わたしの嬉しい事は、ザンのお尻を叩いていい子にする事だもの。」
「…はい…。」
「いやあね、ザンったら。冗談に決まっているでしょ。そりゃあ、お母さんは、ザンの可愛いお尻をぶつのが好きだけど、いくらなんでもそれはないわ。…そうね、明日のお仕置きは、外でするっていうのはどう?」
「外…。」
「そうよ。ザンが、お母さんにお尻をぶたれて泣いている所を皆に見てもらうの。それが嫌なら、お仕置きは最初からよ。スカートの上から、10回は叩いたわよね?あ、15回だったかしら?」
「分かった…。お母さん。」
「いいお返事ね。いい子は好きよ。…そうと決まったら仕上げをしちゃいましょう。さあ、立って。」
「はい。」
ザンは、立つとテーブルに手をついた。ミレーは、スカートを捲くって、娘の真っ赤なお尻を出した。
「15回よ。」
ミレーは、ザンの背を軽く押さえて、鞭を振るう。ひゅんっと空を切る音がして、その音に身を竦めたザンのお尻に鞭が当たった。バチーンッと大きな音がする。ザンが悲鳴を上げる。
「ザンったら、まだたった1回目よ。そんな殺されそうな悲鳴上げちゃって。」
「う。」
「声にならないのね。そんなに痛かった?次は、もっと痛いのに。」
ザンが、お尻を庇おうとして、はっとして、慌てて手を下ろした。
「庇ったら、増やしてあげたのに。」
ミレーは、残念そうに言った後、鞭を振り上げた。また、鞭が空を切る音がする。その後の痛み。ザンは、歯を食いしばって耐えた。
「あら、今度は我慢できたの。ちょっと弱かったかしらね。」
ミレーは、そう言って今度は勢い良く鞭を振り下ろした。ザンがうめく。「さ、どんどんいきましょうね。」
バチーンッ、バチーンッ。ミレーは同じ所を打たないように鞭を振り下ろしていった。
「立てる?遅くなっちゃったけど、夕飯のお買い物に行かなきゃ。」
鞭のお仕置きが済み、ミレーは、ザンを抱いて立たせた。夕飯の買い物は、二人で行く事にしている。
「大丈夫、まま。…あっ。ごめんなさい、お母さん。」
ザンは、震える。『また、お尻ぶたれる…。』
「それは、明日のお仕置きに足しましょうね。今日は、ザンが可哀相だからもうぶたないわ。」
「はい。」
ミレーはザンの返事にうなずくと、財布と買い物袋を取りに行く。ザンは玄関で靴を穿き、外に出た。お尻が酷く痛い。お尻をぶつままは怖いと思う。でも、ままは基本的に優しいので、ザンは好きだ。
「さ、行きましょ。」
ミレーが玄関から出て来て、ザンに言った。
「はい、お母さん。」
ザンは、ミレーと腕を組んで歩き出した。
「これ、袋に仕舞ってね。」
ミレーは、会計を済ませた物をザンに渡す。ザンがミレーの買い物袋と、スーパーのビニール袋へどんどん買った物を入れていく。ザンにやらせた方が上手に入れてくれるので、ミレーはいつも娘にやらせていた。
「終わったよ、お母さん。こっちの方がちょっと重たくなっちゃったから、ままはそっちを持ってね。」
「…そうね、“お母さん”は、軽い方を持たせてもらうわ。」
「…あっ、ごめんなさい。」
「明日のお仕置きが楽しみね。」
「あーん。もう、言わないよおっ。」
ザンは、ミレーの後をついて行く。ままはちょっと意地悪だとザンは思う。ザンはミレーの手を取った。
「ねー、お母さん。4日後くらいにお兄ちゃんの所へ行ってもいい?ぱぱとは、お話しないから。」
うちへ帰ってきてご飯の支度をしながら、ザンはミレーに聞いた。ミレーは、元夫の木村とはなるべく接触をしたくないようで、ザンが会いに行くのも嫌がる。
「駄目よ。」
「お兄ちゃんとお話したいのおっ。」
「日曜日じゃないの。木村に会うなんて許さないわ。」
「お母さんがお尻ぶたないなら、明日でもいい。」
「木村に会わないなら、お仕置きしないわ。明日行きなさい。」
「はい。」
次の日。ドルダーのお部屋。
「今日ね、ぱぱのおうちに遊びに行く事にしたから、ドルダーも行こう。お化けのお兄ちゃんに会わせてあげる。」
「ああ…。」
「お兄ちゃんも、ドルダーに会いたいって言うと思うよ。」
「そうだね…。」
ドルダーは内心会いたくなかったが、嬉しそうに言うザンに嫌だとも言えず、仕方なく家を出た。
「でけーうち…。ザン、君が金持ちのお嬢様だったなんて、今初めて知ったよ。」
「わたしもねえ、ちょっと前まで知らなかったよ。」
「あー、そうだっけ。君の両親は、君が赤ちゃんの時に離婚したんだったね。」
「うん。でもね、わたしね、いつかままとぱぱと一緒に暮らせるようにするつもりなの。それで、ままのこともままって言えるようにするの!」
「叶うといいね。」
「うんっ。」
ザンは明るく返事をすると、ドルダーの手を引いて屋敷の中へ入って行く。
「おにいちゃああん。あのねー、わたしの彼氏を連れて来たよ。」
ザンは兄の部屋へ勢い良く入って行く。強く引っ張られたドルダーは、転びそうになった。
「!」
ドルダーは顔を上げて、大きなベッドの中で枕を背もたれにして座っているザンの兄を見て、目を見開く。
「初めまして。君がドルダー・キートン君だね。ザンから、いつも話を聞かせてもらっていたよ。ザンのお尻を叩くんだってね。」
ザンの兄秋雪は優しく微笑んでそう言った。18歳くらいに見えた。ベッドの中にいるが、病弱そうにも、だらしなさそうにも、見えなかった。
「はい…。」
ドルダーは返事をしながら、俺は今、まともな表情をしているだろうかと考えていた。お化けといったザンの言葉は間違っていなかった。
「ドルダー君。ザンがどう言ったか知らないけど、僕が気味悪く見えるのなら、無理してここにいなくてもいいよ。」
「えーーーっ。」
ザンが声をあげる。「やだよおっ。今日は、お兄ちゃんとドルダーが仲良くなる日なのっ。」
「いえ、ちょっと吃驚しただけです。ザン、心配しなくていいから。」
『ちょっと吃驚?嘘を言うなよ。こんな化け物を見て、冷静でいられるわけがねえだろ。』ドルダーは、ザンに答えながら、そう思う。ザンの兄は…。彼は、その半身が深い緑色のスライムの様に見えた。どう見ても、ドルダーが推測し、ザンがそうだと答えた火傷には見えなかった。
「僕はね、車にはねられた5歳までは普通の人間だったんだよ。死んだ筈だったのに、何故かこの体で生き返っていた。」
「ぱぱがねー、お兄ちゃんを外に出しちゃ駄目って言うんだよ。前にこっそり遊びに行ったら、二人で一緒にお尻を叩かれたんだよねー。」
「僕は、絶対に叱られるって言ったんだけど、ザンは、大丈夫だよって言うし、13年ぶりに外へ行きたかったしね。でも、楽しかったよ。」
「お兄ちゃんって凄い特技があるんだよ。」
ザンは、居辛そうにしているドルダーへ言った。「足を使わないで歩くの。地面に体が半分になるの。」
「それ、どういう意味だい?」
「お兄ちゃん、ドルダーが見たいって。やって、やって。」
「いいよ。」
秋雪はベッドから出て立つ。ずるずるずる…。体が床に沈んでいく様に見えた。
「わあい、凄い凄い。」
ザンは飛び跳ねている。「ほら、凄いでしょ?」
ザンの言葉に秋雪が照れながら言う。
「正確には、溶けたみたいになっているだけだけどね。このまま進めるよ。」
「凄いよねーっ。」
「う・うん…。」
ドルダーは、気持ちが悪くなってきた。「…ザン、悪いけど、俺帰るよ。」
「え?何で?」
「ちょっと、急用を思い出しちゃってさ。姉貴に頼まれてたんだよ。ぱるの餌。」
ぱるは、ドルダーの家で飼っているチンチラの名前だ。ザンは猫が好きで、ドルダーの家に行くとぱるを抱っこしたがる。だが、ぱるは家族以外には懐かないので、彼女はいつも振られている。
「そんなの帰る時でもいいでしょ?もっとお兄ちゃんと仲良くなってよ。」
「その他にも色々頼まれてんだ。姉貴は人使いが悪いからさ。」
ザンがさらに引き止めようとして色々言ったが、ドルダーは、そそくさと帰ってしまった。
「もう泣くの止めなよ。仕方ないよ。あの時だって、…ほら、二人で遊びに行った時だって、僕等を見た人達が騒ぎ出して、落ち着いて遊べなかったじゃないか。」
秋雪はベッドに戻って、泣きじゃくるザンを慰めていた。ドルダーを責めようとは思わない。自分は化け物なのだから。ただ、可愛い妹が傷つくのは悲しい。
「だってだって…。ドルダーなら、分かってくれると思ったんだもん。ドルダーの馬鹿あっ。うえーん。」
「泣かないで。僕は何とも思っていないんだから。それに、他所の人達と違ってドルダー君は、普通にしようと努力をしてくれたよ。ただ、一辺に色々見せてしまったのが悪かったんだよ。少しずつにすれば良かったんだ。」
「もうドルダーなんか知らないもん。わたしには、ままとお兄ちゃんとぱぱが居てくれればいい。」
「そんなことを言っちゃ駄目だよ。ドルダー君だって、慣れれば普通に話してくれるよ。」
「いいもんっ、ドルダーはもう彼氏じゃないっ。」
「ザン…。」
ザンは秋雪に優しく背中を撫でられた。「僕、ザンがそんなに心の狭い子だと思わなかったよ。嫌いになりそうだ。」
ザンはびくっとして、秋雪の顔を見た。兄は、厳しい顔をしていた。
「心が狭いのはドルダーでしょ。わたしじゃないよっ。何でそんな意地悪言うの?」
「ドルダー君は、出来る限り普通に接してくれたよ。酷い言葉も言わなかった。それなのに、ザンはそんな彼氏を許せないなんて言ってる。悪いのは、ザンだよ。」
「違うもんっ。」
「違わないよ。ザン、お兄ちゃんにお尻を叩かれたいのかい?」
「お尻ぶつの?」
「僕が普通と違うせいで、ザンとドルダー君の仲が悪くなるのは嫌なんだよ。今まで通りドルダー君と仲良く出来るなら、お仕置きはしないよ。」
「…。」
「出来ないの?」
「…。…仲良くする。」
「いい子だね。ドルダー君のことは、ゆっくりでいいんだよ。急がなきゃ、仲良くなれるよ。」
秋雪は、妹の頬に優しくキスをして、微笑んだ。
「お帰りなさい、ザン。」
ミレーは、帰ってきたザンを抱き締めて、お帰りのキスをした。
「ただいま、お母さん。」
ザンは、明るく答えた。明日ドルダーに会って、きちんと出来るか分からない。でも、多分大丈夫だと思う。
ザンは、ミレーに背を向けると、パンツを下ろして、お尻を見せた。
「今日は、ドルダーにお尻を叩かれたの?」
「叩かれてない。お兄ちゃんにちょっと怒られちゃっただけ。」
「そう…。今日はいい子だったのね。じゃあ今日のお仕置きは、ままといった罰だけね。じゃ、お外に行きましょう。」
「はい、お母さん。」
ミレーは、外に置いてある椅子に座る。ザンは、恥ずかしげにお尻を出すと、ミレーの膝の上に乗った。
「ままと言ったのは、2回だったわね。1回につき10回で、20回よ、ザン。」
「はい、お母さん。」
「それと、昨日は、お仕置きの時に我が侭を言ったから、15回足すわね。35回のお尻叩きにするわ。ザン、少ないから、数を数えなさい。間違ったり、言わなかったりしたら、正しい数が言えるまで、数に入らないお尻叩きになるわよ。」
「はい。」
「じゃ、始めましょうね。」
ぱんっ、ぱんっ。ミレーは、いつもの様にお尻を叩き始める。今の所ザンは、痛みよりも恥ずかしさが強いみたいだ。
「お母さんっ、やっぱりおうちじゃ駄目?」
「我が侭1回につき、10回増やしましょうね。」
「ごめんなさいっ、増やさないでっ。」
「これで、55回になったわ。それより、数はどうしたの?余計な事を言わないで、数を数えないと、いつまでもお仕置きが終わらないわよ。」
「あーん。えっと、5。」
ザンは、慌てて数え始めた。ザンのお尻を叩くのが好きなままは、すぐに叩く数を増やしてしまう。実際は、18回くらいなのに、まだ5だ。しかも、55回に増えてしまった。
ぱんっぱんっぱんっ。「6、7、8。」
「何回まで増えるか楽しみね。」
ミレーは、微笑む。ミレーは、お仕置きの時に一番笑うのかもしれない。通行人が、こちらを見ているのに気付く。涙を零し始めたザンは、もう恥ずかしさなんてないだろう。
「ねえ、ザン。ほら、皆あなたを見ているわよ。もう中学生にもなっているのに、うんと小さな子みたいにお尻を叩かれているって。恥ずかしいわよねえ。」
ザンは、数を数えるのに忙しくて答えるどころではなかったし、恥ずかしさを感じる余裕もなかった。
夕食後。ザンは、自分の部屋でお尻を撫でていた。食事後も行儀が悪いとお尻を叩かれた。ミレーと居ると、些細なこともお仕置きになってしまう。
「お尻痛い…。」
泣き止むまでは、座っていないといけないので、もう涙は出てこない。ザンは、窓から外を眺めた。
「ザン、お風呂に入りましょ。」
ミレーが部屋に入ってきた。「昨日の鞭の傷が、少ししみるかもしれないけど、たぶん大丈夫よ。」
「我慢する。出来なかったら、またお尻ぺんぺんでしょ?」
「そうよ。ザン、悪い子になっても、ママがお尻をぶっていい子にしてあげるわ。」
「あーーーーっ!ままって言ったあっ!!ずるいよおっ。」
「あら、ごめんなさい。」
「ずるい、ずるいっ。わたしがままって言ったら、10回だよおっ。」
「わたしは、“ママ”って言ったからいいのよ。」
「片仮名ならいいの?」
「わたしはね。でもザンは駄目。」
「ずるういっ。」
ザンとミレーは、笑いながら、お風呂へ向かった。やっぱり、ままは大好きだ。